たぶん魔王は倒せない。
初投稿です。
暇つぶしにでも見ていただけたら幸いです。
…それは、とある世界の物語。
ーーキィィィンッッ!!!
【帰らずの森】。人々からそう呼ばれ恐れられている森に激しく鉄がぶつかり合う様な音が響く。
それは、森の奥の古城から。そこは魔王が住むと言われている城だった……
薄暗い部屋の中に俺達はいた…。
元は王が座っていたと思われる玉座に気だるげに腰掛ける男に向かって俺は剣を振り下ろす。すると、空を斬った斬撃が光となり男に翔んでいく。男は慌てる様子も見せず、片手に持った小さなナイフでいとも簡単にはじき返す。男はそのままナイフを俺に向かって投げるとナイフは膨大な魔力を纏い、俺の右腕に直撃する。剣が宙を舞い、地面に突き刺さる。鎧は砕け、頭部からは血が流れ目の前が赤く染まる。
『なぁんだ。もう終わり?勇者って案外呆気ないなぁ…』
黒い髪をかき揚げた男ー魔王は嘲笑うような瞳で俺を見る。
「っまだだ…!まだ終わってない!俺は負けるわけには行かないんだ!!」
突き刺さった剣を抜き、ゆっくりと構える。剣が淡く輝くと共に足元に光の魔法陣が展開される。
『へぇ…まだやるんだぁ……なかなかしぶといねぇ…』
そう言ってマントを翻し手を空に出す魔王の足元に巨大な魔法陣が展開される。
『死んじゃえ。』その言葉を合図に飛んでくる大量の火の玉を剣でなぎ払いつつ、魔王に向かって走る。
火の玉が足や頬をかする。火の玉にかすった傷は毒のせいでヒリヒリと痛い。
それでも力を振り絞り、魔王の首めがけて剣を振り下ろす。
が、
「ッッ…!!!」
『…残念だねぇ。その程度じゃあ、僕は殺せない。』
会心の一撃は魔王首に寸前の所でナイフによって止められていた。
『じゃあね、勇者くん。』
その瞬間、小さなナイフは魔力を纏った大剣へと変化し、俺の体は一瞬で吹き飛ばされた。
……もう、体が動かない。毒が本格的に回り始めた左足はピクリとも動かす、腕も頭も傷だらけだ。
それでも…
俺は戦わなければいけない…。守らなければいけない…。この世界を…。みんなを…!!!
だから…!!頼む…頼むから……!!!
〈う〜…ウィックッッ!!へぇ〜。魔王ってヒィックッッ!結構いい男なんだねぇ〜ヒィックッッ!〉
《おいおい。マリア。お前飲みすぎなんだよ…
あっ!テメッ!!俺の分の金〇飲みやがったな!?》
〈いいだろ別に〜ウィックッッ!!まだギルドの保管庫に〇麦あるだろーg…うぼrogikta…〉
〔エース……またマリア吐いちゃった……〕
《あー…またかよ…ここは俺が片付けるからお前はマリアの方をどうにかしろ。》
〔……うん。すいません。魔王さん。トイレどこですか。〕
……頼む…頼むから……!!!!!
「頼むから戦えお前らぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!」
…これは、とある世界のちょっと、不憫な勇者と色々と問題を抱えた仲間達の話である…。
読んでいただきありがとうございます。
定期的に投稿するつもりなので、引き続き読んでいただけたら嬉しいです。