背景
サクッと終わらせますw
俺のお父さんはタクシー運転手になりたてだ。
しかも民営じゃない、個人タクシー
先日どこかから中古のタクシーを買ってきたようだった。
僕とお母さんは子どものようにはしゃぐお父さんを見て笑っていた。
だけど僕が笑っていたのはお父さんの姿じゃない、
そのタクシーにはたくさんの赤い文字が描かれていたからだった。
そして、当時7歳だった僕にそんな異常などわかるはずもないのだ。
幽霊とは
死んだ者が成仏できず姿をあらわしたもの
死者の霊が現れたもの
『ーー昨日、〇〇さんが被害者である△△さんを殺害した事件について〇〇さんは容疑を否認していましたが、霊痕鑑識により〇〇さんが犯人だと断定されました。ーー』
霊痕
幽霊が残す痕跡とされているもの
見える者と見えない者がいる
生命体以外の物質に書かれているもの
赤い文字であるもの
「怖いねぇ、近くに霊痕あったりせんやろうかね?」
「無い無い、あったら怖いやんか冗談でもやめてや」
日本では死んだら『仏様』だ、仏様が嘘をつくはずはない、死体現場に霊痕があればそこに書いてある名前の人物が犯人だとほぼ確定的に断言される。
幽霊は嘘をつく事はなくともお茶目なのだろうか?時々変な絵や自分の名前らしき名前が書かれていることもある。
だが、無関係な人物の名前は一切書かない、それがどれほど迷惑になるのか幽霊には分かっているからだと学者は言う。
霊痕を消す方法は主に3つある、一つは雑貨屋などで販売されている『清布』で拭き取ること。
盆などに降りてきた先祖の霊が落書きのような絵を残した場合に使う。
次に『清水』で洗い流すこと、清布は汚れがつくと霊痕を消すことが難しくなるため清水を使う場合が増える。
最後に、仏門のお坊さんを読んで今日を唱えてもらうことだ。
これをすることでその部屋にある霊痕をすべて消すことができる。
現在の日本には霊痕が見える人というのは1000人ほどしか居ない、共通点は見つかっておらず、見える人はその殆どが各県に設置される『霊痕鑑識署』への配属が推奨されている。
僕は霊痕が見える、そのことをハッキリと知ったのは13歳の頃だった。
あの頃、お父さんのタクシー営業も軌道に乗ってきたのか、仕事が増えていた頃だったと思う。
ある日、仕事から帰ってきたお父さんがお母さんに夕食の時にこんな話をしていた
「美智子、今日ちぃと変なお客がおってな」
「どんなお客さんやったの?」
「電話受けてから迎えに行ったんよ、何処やったかな………電車通り沿いでグランド通りの電停を通り過ぎて少しくらいの場所に行ったんよ、そんでそのお客が車に乗るんやけど、そしたらなんか大声上げて逃げだしたんよ。」
「あんたなんかしたん?」
「しとらんしとらん、車見たけんどどこにも変なとこないし、今までであんな反応するお客見たことないけんな、俺の顔が変とかじゃないやろ?」
たしかに不思議な話だった、その話の直後に流れたニュース、霊痕鑑識が決定打となり犯人が確定したというニュースが流れた
「ねぇ、お母さん、霊痕って何なの?」
何気なく聞いた親子間の会話
「霊痕は死んだ人が生きてる人に残すメッセージみたいなものやと思う」
この時に知った
「お母さんは見たことあるん?」
僕には
「お母さんは見たことないんよ、見える人と見えない人がおってね」
霊痕が見える
「特別な人にしか見えないんよ」
幼い頃の記憶がハッキリと残っていればこんな事件は起きなかっただろう。
この時に確信した、お父さんのタクシーに書かれているのは霊痕なんだと。
霊痕は警察の調査に使われるほど危ないものだ、そんなものがお父さんのタクシーにたくさん書かれている。
お父さんはお客さんを殺して金を奪ってるのではないか、もしくは好きで殺しているのかもしれない。
お母さんに言わないといけない!
使命感に囚われお母さんの元に行こうとするが、言ったあとのことを考えて足が止まった。
お父さんが捕まったらどうなる?お母さんは職に就いてないからお金が無くなる、僕は学校で殺人鬼の息子といじめられる、お父さんはあれだけ霊魂が残るくらいなので多分殺したのは1人や2人じゃないはず、最悪死刑になる?
嫌だ、それは嫌だ!
こうして胸のうちに秘めたままにすることにした。
誰にも話してはいけない、誰にもバレてはいけない、僕も隠すことに協力する、この三つを実行し続けた。
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