王都の混乱……ちょっとほっこり?
竜族の邪竜化は抑えられていたにも関わらず、なぜ救援要請なぞが出ているのか……と、考えても分からないけれど、これだけは確実だ。
だって、ビアン国の予知の神子姫が教えてくれた。
『北の竜族が反乱を起こして、エルトーデ王国に攻めてくる。その救援要請がビアン国に来る』と。
反乱の有無に関わらず、救援要請は出た。予知の通りになった。
クラウス君が真っ青な顔になっている。
「クラウス様、王都へ戻りましょう!」
マイコちゃんが言うも、クラウス君は青ざめたまま微動だにしない。
「おい、どうした! 何があった!」
「ギュンターから風の知らせで、現国王の一兄様が重体、父様と母様も倒れたまま目が覚めないと……」
「今は誰が指揮をとっているんだ!?」
「……姉だ。二番目の」
「「「……おぅふ」」」
状況は明らかだった。
以前、聖女を狙った事件の首謀者は灰色のローブの魔法使いだった。
そして操られていたとはいえ、憎しみに駆られ魔王の力に魅入られた二の姫は、その後幽閉されていたはずだった。
それが今、指揮をとる立場にいるのがおかしい。これは灰色が絡んでいる可能性が高いだろう。
国で最強の魔法使いと騎士の不在、銀髪の勇者と聖女は精霊の森にいる。
次席の実力を持つ王弟はアズマ帝国にいるし、先王は守る力に特化しているけど身内には甘い。
現国王もそれなりに強いけど一人じゃ無理だろう。たまたま家臣たちが国外にいたのも運が悪かった。
「運が悪かった?」
「どうしたエンリ」
「オル、おかしくない? 何でこんなに国の守りが薄くなっているの?」
「そりゃ……確かにおかしい。おいクラウス、ここまで国外に戦力を出すってどういう事だ」
クラウス君がハッと気づいたように顔を上げる。
そうだよ。竜族の事も、こんなにぞろぞろと行く必要はなくて、私とオルが様子見に行ってからでも良かったんじゃない?
私達は転移で王都に戻った。今の城は危険だから、ギュンターさんとマイコちゃんが探ってくれている。
いつもの宿屋で、私とオルはクラウス君を見守っている。彼は今、城にかかっている結界や内部の魔法を分析していた。
「悪意のない精神魔法……」
「悪意のない? ああ、あれか。パニック起こした人間を落ち着かせる精神安定とか」
「そうだよ。本当にオルはそういう器用な魔法が得意だよな。洗濯とかそういう家事の細かいやつとかさ」
「……うるせぇな」
独身生活が長かったし姪を育てたからだと、モゴモゴ言ってるの聞こえてますよ。長い間独りだったのは私と会うためでしょ? そんなオルが愛おしい! なんちゃって。
なんてフワフワ考えていたら、目元を赤くしたオルがめっちゃ熱い視線を送ってきた。え、あの、あ、そうか、加護の所為で気持ちが通じやすくなってるんだ。しまった……。
「はいそこやめー。俺のいない時にやってー。むしろ爆ぜてー」
「ごめんごめん。で、その悪意のない魔法ってどうにか出来ないの?」
「これは元来結界内にあった魔法なんだ。城にいる人を安心させるとか、悪意を持つ人間の心を沈静化させるとか。まぁ魔力の高い王族には効かないはずなんだけど……」
「隙を突かれたな」
「ああ、まさか魔王の力をこうやって使うなんて……しかも二の姫を使うとはね」
「クラウス君にもかかってた?」
「ああ、最近ステータス見てなかった。アレを見れば状態異常も分かるんだ。くそっ……」
つまり、魔法で城は安全だよ、国外でなんか起こっているね、調べよう皆で、城が手薄、灰色のウハウハってやつか。
薬も多過ぎれば毒になるってことだよね。良い魔法でも多すぎたらよろしくないか。
「分析は出来たけど、どうしようか」
「魔法とか無いのか?」
「そんな便利な魔法はないよ。特定の要素だけ取り出す魔法なんて」
「竜族に使った邪を吸い出すアレは?」
顔をしかめるクラウス君に、オルはなんでもないような顔でとんでも無い事を言い出す。
「お前アレは……そうか!アレか!」
アレとかソレとか熟年夫婦じゃあるまいしって思ったら、オルに嫌な顔された。相手がクラウス君なのが嫌みたい。
クラウス君はいそいそとアレを作る作業に入っていった。領地に色々と必要なものがあるらしい。
転移で出ていったクラウス君を見送り、私は窓から王都を眺める。
他国に救助要請を出したはずなのに、いつもと変わらない風景。
後ろからオルに抱きしめられる。
うん。大丈夫だよね。
オルの優しさにほっこりしていた私。
……一字違いは大違いなんだよ。オル。
進んでいます……よね?
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