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竜族に会いに北の山へ

最近糖分が足りない気がします。

翌朝。

私とオル、クラウス君とマイコちゃんは、予定通り馬車で北の山に向かっている。

クラウス君の転移で竜族の住む集落まで飛べるらしいけど、連絡が取れない今、何か起こるとも限らないので、安全のために転移なしで向かうことになった。

久しぶりのガタゴト揺れに身をまかせる私達。


「オル様、オル君、オル赤ずきん。暇だよーう」


「このやり取り懐かしいな。んで、最後のは何だ?」


「童話だよ。赤ずきんっていう。ね、マイコちゃん」


クラウス君の影からマイコちゃんが出てくる。


「はい、パンとワインを持って森のお婆さんの家に見舞いに行った赤ずきんは、寄り道したらダメだという母親の言葉を忘れ、花畑で寄り道して……」


「その間に狼はお婆さん食べて、赤ずきんはお婆さんのふりした狼に食べられて、その場で寝てた狼を見た猟師が狼を殺して、赤ずきんとお婆さんを助けるって、あれだろ?」


後半はクラウス君が引き継く。オルは童話にしては血生臭いなと興味津々だ。


「まぁ、親の言うことを聞かないと怖い目みるよっていう、教訓の入った童話なんだよね」


うんうんと頷く三人に、私はそのまま続ける。


「でもね。これは童話じゃないんだよ。元は民話らしいのよ」


「民話?」


「元になった話はいくつかあるらしいんだけどね……ただ一つ言えるのは、お婆さんも赤ずきんも狼に食べられて、それでおしまいだって事……」


「え?猟師は?」


「出てこないのよ。そう、彼女達は食べられたままなの。お母さんの言う事を聞いて寄り道をしなければ……後悔しても……いいえ、後悔なんてする暇もないだろうね。赤ずきんは頭だけでなく全身を赤く染めて、狼の糧となるの……」


「「「怖いよ!!」」」


「他にもね、赤ずきんは初潮を迎えた女性だとか、お婆さんの家で狼にワインとパンを出されたけど、それはお婆さ……」


「「「もういいよ!!」」」


オルの手で口を塞がれ、「次は口で塞ぐぞ」と耳元で熱い吐息とともに囁かれたので、私はやむなく戦略的撤退(マイコちゃんの隣に座る)を余儀なくされたのだった。

童話って、色々あるよね!











そんなバカ話をしつつ、私達は何事もなく北の山の麓に到着した。


「何も無かったな」


「うん、おかしい」


「何でおかしいの?」


「魔獣とか魔物の襲撃が一回も無かったからですよ」


オルとクラウス君の言葉に、私は首を傾げる。そんな私にクラウス君の影から、マイコちゃんがコソッと教えてくれる。

そんなにおかしい事なの?


「竜族の魔力は強大だ。その力が山から流れ、獣が凶暴化しやすい。魔獣が一匹も出ないのは不自然だ」


オルは厳しい顔で言い切る。眉間にしわを寄せてる顔も渋くて格好良いけど、今はそんな事言ってる場合じゃない。私は空気が読める女だ。


「エンリさん、顔が緩んでます」


マイコちゃんに囁かれた。すまぬ。




馬車から降りて山道を行く。馬車は空間魔法で。神馬にはお菓子を供えてお帰り願った。

所々で水晶が輝いていて綺麗だ。竜の山って感じだね。


「おかしいな、オルは何か感じる?」


「いや、エンリはどうだ?」


「シナトベからは何も……ただこの先たくさんの水晶があるって」


「何? 水晶?」


マイコちゃんが斥候として音もなく走り、すぐに戻ってきて、無言で首を横に振る。

先に見えるのはたくさんの水晶で、その一つ一つに人のような影が見える。まるで氷漬けにされたかのように……。


「まさか……竜族が全滅?」


クラウス君が震えながら呟く。オルは険しい顔でそのまま進んでいくから、私も早歩きでついて行った。

こういう時のオルは一人にしちゃいけない。


「オル……」


殺気立つ背中に、そっと声をかける。その殺気が少しでも和らぐように声に魔力を乗せて呼びかける。私にできることはこれくらいだ。これしかないんだ。不甲斐ない。

オルはハッと気づいたように振り向き、私の側に戻ってきてふわりと抱きしめた。


「悪りぃ、そうだよなエンリ。今じゃねぇよな」


「うん。そうだよオル。今はその時じゃない」


オルの匂いをすんすん嗅いで、その胸筋に頭をぐりぐり押し付ける。

くくっと笑ったオルは、いつものオルだった。


「今ここに灰色野郎はいないな」


「……」


クラウス君は黙ったままだ。

その時、真っ白な靄みたいなものが、私たちの前に集まる。薄い靄がどんどん集まって、真っ白な塊がだんだん人のような形になっていった。


『久方ぶりじゃのう、主よ』


それ《・・》から聞こえたのは女性の声だった。誰だ?


「先見の巫女……」


巫女?








お読みいただき、ありがとうございます!

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