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はじまりの森

狛犬の阿ちゃんと吽ちゃんに、馬車(?)を引いてもらう。

神馬も早いけど、狛犬達は鼻が利く。灰色野郎の僅かな匂いを辿ってもらっているのだ。どうやら街道を通って逃げているらしい。


「エンリ、もう少しでナツキ村に着く」


「ナツキ村って、オルと初めてあった森の近くの?」


「おう。あんときのエンリは泥だらけ傷だらけで、それでも俺のだって思った」


「へ?なんで?」


「姪のミラに認めたくねぇが恋人が出来るし、俺の周りが結婚ラッシュでな。ずっとこのままなのかって思ってた矢先の事だった。だから『俺の為に来たんじゃないか』とか思っちまってな」


「オル……そうだよ。だって私はその為に来たんだから……」


「エンリ……」


オルは青い瞳を潤ませ、甘く微笑んで私にそっと被さり……


「人の子エンリ、見つけた」


……コケた。


「おい、何の恨みが……」


「何を見つけたの?」


巫女服幼女のシナトベが姿を現わす。その肩にはリスザルのような姿のコウシンもいる。

二人には索敵をしてもらっていたんだけど……。


「人の子エンリの匂いのするものが、あの森にあるとコウシンが言う」


「え!?」


私の匂いって、もしかして……この世界に来た時に、失くした荷物?

あれには買った本が入っていて……ああ!!本の内容が知りたいなら日本に帰った時に本屋に行けばよかったんじゃないの!!私の馬鹿ーーー!!


「それ、持ってこれそうならお願い。馬車は停められないの」


「良いぞ」

「おやすいごようだよー」


二神は姿を消し、森へ飛んでいく気配がした。


「大事なものだったのか?」


「うん!!本!!」


「本?」


「あの本『銀髪の勇者シリーズ外伝・伝説の騎士』だよ!!救国の騎士が如何にして伝説となるのか、魔王との戦いから十年後って……あれ?」


「エンリ、それって今のことか?」


「わ、分かんない。前書きしか読んでなかったし……」


「読めば何か分かるのか?いやしかし、渡りの神が作ったとか言ってなかったか……?」


オルは独り言みたいに呟いている。

分かるって何が?何のこと?











二神が戻ったのは、それから数時間ほど経ってからだった。


「人の子エンリよ、これはお主の物か」


シナトベの手にはスマホがあった。


「こ、これ、私のだ!!ありがとう!!」


ヒャッハーとばかりにテンションの上がる私。オルが不思議そうに見る。


「本は見つからなかったようだぞ?」


「いいの、これさえあれば本も読めるの!」


「この小さいのでか?」


電源を入れてみる。このスマホは防水加工されてるし、これを落とした時に電源を落としたはず……。

ぽうっと画面が光り、初期画面が表示された。


「やった!使える!」


「これがエンリの世界の本なのか?」


「違うよ。元はクラウス君が作った通信機能がある魔道具『ケータイ』みたいなものだったんだけど、辞書とか小説とかをデータ化して……とにかくここの画面に文字が表示されるの」


試しにブックアプリを開いて、ダウンロード済みのデータを表示させる。


「おお!すごいな!」


「通話機能だけでも魔道具で再現させたクラウス君もすごいけどね……」


転生チートめ……。

それはともかく、確か新刊もダウンロード済みだったと思ってアプリ内を探す私。

あったぞ。『外伝・伝説の騎士』だ。早速開くとオルとミラさんの話から、ナツキ村に潜んでいた魔王教の組織を壊滅させるところが描かれている。


で。


『まるで女神かと思うほどの、美しく清らかな女性と出会ったオルフェウス・ガードナーは、自分と同じ黒髪を持つ意味を探す。まるでそれは予め決められたかのような、運命的な出会い……』




んーーー。誰?



お読みいただき、ありがとうございます!

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