帝との謁見
宿に戻ってきたオルに、なぜか部屋から小一時間出してもらえず、お昼過ぎた頃にやっと解放された。一体なんなんだ。イラっとして沢山チューしてやったら、オルは一瞬で固まり、顔を赤くして動かなくなった。不意打ちに弱いヤツめ……私も人のこと言えないけどさ。
最初はHP(体力)一万の数値とか神ヤリスギって思ってたけど、オルの恋人やるんなら必要なものだったんだね。さすが神様だよ。
「遅い!!」
帝都の入り口近くでクラウス君が仁王立ちになっていた。
私のせいじゃない。固まってたオルが悪い。
「ごめんクラウス君、こちらの方が?」
「次兄のクリストハルト。こっちが家臣のアルトゥール。二人は兄さんの護衛として一緒に行動してほしい」
「……おう」
「よろしくお願いします」
ぺこりと頭を下げると、アルトゥールさんが私を凝視している。な、何かな?
オルがさり気なく私とアルトゥールさんの間に立ち、視界を塞いでくれた。クリストハルトさんがオルの肩を宥めるようにぽんぽん叩く。
「すまないねエンリさん。アルトゥールは黒髪の女性が珍しいんだと思う」
「ああ!すみません!つい見惚れてしまって……」
オルが一瞬身構えたように見えたけど、その空気は霧散した。帝国側の迎えが来たのだ。
大きなダチョウみたいな鳥に車を引かせていて、クルルークルルーって鳴いている。可愛いな鳥。
「四人乗りとなっておりますので、皆様一緒にお乗りください」
同じような鳥に乗った騎士っぽい人の勧めるとおりに乗り込む私達。一応警戒のために、私は五神召喚済みで、オルはベルトの収納石に双剣をしまっている。
クリストハルトさんとアルトゥールさんは大丈夫なのかな?
「あいつらは大丈夫だろう。異様に運が良いからな」
「そうなの?」
それでも不安だから、彼らにはこっそり高速が移動出来るクラミツハを召喚しておいた。いざとなれば王都へ送るようお願いしておいた。
さらにスクナビコナも召喚しておく。回復できる存在を出しておいたほうが良いだろう。
鳥の進みは早く、あまり揺れない。
小窓から外を見ると、みるみるうちに真っ赤な外壁に囲まれた『お城』が見えてきた。
「ここからは武器を携帯できませんが、オルフェウス様は大丈夫ですか?」
「俺は大丈夫だ。エンリは無手の方が強い」
「そ、そうですか、すごいですね」
「アルトゥールって言ったか、そういうお前はどうなんだ?クリストハルトの家臣なら強いんだろ?」
「私は中位の精霊使いです。魔力もありますが、最悪気を失ってても精霊の加護でどうにかなります」
「気を失っててもって…それは中位じゃねぇだろ」
「ま、アルトゥールは優秀だ。いざとなれば捨ててもいいよ」
「「……」」
クリストハルトさんの乱暴な言葉にも、アルトゥールさんはニコニコ笑っている。ドMか?
武器除けの札が貼ってあるせいか、身体検査はされずに正門を通っていく。大きな寺院のような造りになっていて、真っ赤な壁と柱と、真っ白な長い廊下がずっと続いている。
散々歩かされて、大きな扉の前に立つ四人。
ゴゴゴ…と中から扉が開き、奥に大きな玉座があり、背の低い男性が座っている。ん?男性じゃない。子供?
そのまま少し歩き、クリストハルトさんに習って膝をつく。下を向かなくても良いらしい。
「ご足労頂き感謝する。エルトーデ王国クリストハルト第二王子。そして姫が世話になったようだな。救国の騎士とその奥方」
その人はどう見ても中学生くらいの子供に見えた。
カールがかかったピンクの髪をふわりと揺らし立ち上がり、爽やかなテノールの声を響かせる。
「我が舜である。帝とも呼ばれておるな」
ピンキーの男の子バージョンの帝は固まる私達の前に立ち、満面の笑みで自己紹介をしたのだった。
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