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伸びーる伸びるのです

「クラウスと連絡をとろうと思う。今回の件の報告も必要だ」


翌朝、食堂ではピザのような食べ物が焼きたてで出され、チーズを伸び伸びさせている私を微笑ましく眺めるオルは、不意に重要な言葉を放った。


「むぐ、それって王家が関わって調べるってこと?」


「そうだ。エンリの召喚で調べるのも手だが、ことは国同士の諍いに繋がる恐れがある」


「むぐぐ、どうして?」


「あの灰色野郎は、一時的とはいえ王国の魔道具研究所に在籍していた。アズマ帝国で問題を起こした場合、エルトーデ王国が糾弾させる恐れがある」


伸びたチーズは私のほっぺに張り付き、オル私のほっぺからチーズをつまむとパクリと食べて、自分の指を舐めてみせた。いちいちエロいぞ。あと腕の筋肉隠してよ。腕まくりとか卑怯だよ。

おっと、いけないいけない。真面目な話だった。


「でも。灰色はもう在籍してないんでしょう?責任は無いって言えないの?」


「それはそうだが、今は安定してる両国の仲が壊れてしまったら?帝とやらは、あの子供体型を可愛がっているようだから、心象が良くないだろう」


「……あのさ、昨日のオルってさ」


「……言うな。俺もやり過ぎたと思っている」


眉間にシワを寄せて唸るオル。最強の騎士とはいえ、身分の差から言ってオルのやった事はよろしくない。「だから貴族とかそういうのは嫌なんだ」とブツブツ呟いているけど、はて、どうしようか……。


「オルフェウスさん、エンリさん、そこはクラウス様にお任せください」


「ええええ!?マイコちゃん!?」

「やっぱり居たか、なんとな気づいていたが」


「さすがです。私の隠密を感じ取れるのは貴方くらいです」


「クラウスとギュンターもいるだろう?」


腰まである栗色の髪を後ろに流し、吟遊詩人の白の服装で同じテーブルに座っているマイコちゃん。ずっと座ってたの?……てゆか、いつから?


「昨日、お二人が屋敷に連れて行かれる時に合流しました。別ルートで情報を集めながら来たので…。お二人の馬車について行くと、エンリさんの神様に気づかれますし」


「隠密って大変だね。あ、マイコちゃんピザみたいなの食べなよー。美味しいよ。伸びるし」


「ふふ、ありがとうございます」


「今回は王都から出さないみたいな事をクラウス君は言ってたけど…」


「クラウス様は過保護なんです。今は情報が必要な時ですから、私が休んでるわけにはいかないのです!」


こりゃ、クラウス君が苦労してるわけだ……主に恋愛面で。

三人分追加の飲み物を頼んだところで、オルが口を開く。


「で、クラウスに任せるってのは、具体的にどうするんだ?」


「こちらに視察ということで、クリストハルト第二王子殿下を送るそうです。そこのお付きという事で、お二人にも正面から城に入ってもらいます」


「クラウスじゃないのか?」


「公式ではクラウス様は公爵として領地で過ごしていることとなっています。まぁ空間魔法で行き来して執務もされていますが……そういうわけで、次期宰相として仕事をされているクリストハルト様が妥当かと、あの方も協力的ですし」


「……そうか。分かった」


「昼過ぎにクリストハルト様とクラウス様も来られますので、帝都入り口に来てください。よろしくお願いします」


マイコちゃんはぺこりと頭を下げる。なぜかオルが微妙な顔をしていたけど、第二王子となんかあったのかしら?

私は相変わらず伸びるチーズと格闘しながら、オルの眉間のシワを眺めていたのだった。








お読みいただき、ありがとうございます。

次回も伸びるかもしれません。伸び伸び。

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