神の加護を受けるということ
タケミカヅチとフツヌシは「人間」のように丁寧に、兵士達の意識を刈り取っていく。
オルはまるで踊るように双剣を使い、彼の舞った後には倒れた兵士達が折り重なっていた。
そしてそれを空から見る私。
だって、あの後やっぱり気が変わったとか言って、ピンキーとイチャイチャされたらと思うと……って、オルがこっちを睨んでる。なんか言ってる。お、し、お、き、だ?
え、やだよ、何でお仕置きなのさ!!
「ほら言ったであろう、信じて宿で待ってろと」
「だって……オルかっこいいもん。エロテロリストだもん」
「何なんだそれは…」
呆れているシナトベを放っておき、私はオルの剣の動きを眺める。身体強化魔法を細かく使い、剣を振るう力をそのまま流れに乗せて次動作に入る、滑らかな動作は本当に綺麗だ。
うっとり見てると、時折こちらを見て甘く微笑むのは反則。イエローカード出ますよ。
「終わるな」
シナトベは呟き、地面に私を降ろす。
さっきの応接間みたいな部屋は、壁が吹っ飛ばされていて外から丸見えだ。すごいなシナトベ。
「さて。戦力はもうない。どうする?」
「……」
「姫様、もうやめましょう」
「嫌じゃ!加護持つ子を産むのじゃ!」
ピンクの髪を振り乱し、泣きじゃくるピンキー。何でそんなに?
「……おい、子供。俺とヤっても子供に加護はつかねーぞ」
「なぜそんな事が言える!?」
「お前がエンリじゃねーから。
加護は神に求められる人間につくだけだ。それ以上でもそれ以下でもねぇ。逆に言えば、加護が無ければ平和に生きていける」
「そ、そんな…」
そのまま泣きじゃくるピンキーは、もう何もしないだろうって思った。どうしてそんなに加護に執着してるんだろう。
「ここの帝って奴は加護が無いからって何か言ってたのか?爺さん」
「いえ、とても姫様を可愛がっておられます」
「だろうな、こんな屋敷を与えるくらいだ。ならそれで良いじゃねぇか。ちなみに、加護は後からつくこともある。加護を求める奴にはつかねぇけどな。そんなもんだ」
オルは私のそばに来て、そっと抱き寄せる。
そっか。私も求められてこの世界に来た。八百万の神様達も私を求めてくれてるのかもしれない。それが何か分からないけど、私に出来ることがあるなら頑張るよ。
「おい爺さん、こいつは何で加護を持ちたいって話になったんだ?」
「分かりませぬ。姫様はある日突然『加護を多く持つものを呼べ』と言い始めまして……」
「えぐ…灰色の…ひっく…ローブの魔法使い…うっく…」
「なんだと!?」
「オル、何か知っているの?」
厳しい顔をしているオル。「行くぞ」と声をかけられ、私は何とも言えない気持ちでその場から離れるのだった。
「クラウスの姉姫が、洗脳されてて心身共ボロボロになった話を聞いたか?」
それは何かの折にクラウス君から聞いた話。銀髪の勇者マルス君も、その時の事件で呪いを受けていた。その事はもう終わったと思ってたのに……
「その原因が、灰色のローブを着た魔法使いだという話だ」
「同一人物なのかな」
「それは分からねぇけど、そいつが魔王教の人間だって事は分かっている」
「国の中心に連なる人物に接触?エルトーデ王国、アズマ帝国」
「ああ、そうみてぇだな。これはもうちょい調べるか。まぁ、灰色野郎は逃げた後かもしれねぇが……」
ドアをノックする音。どうやら夕飯の時間らしい。何が出るのか楽しみ食堂に行くと、なぜかイタリアンな料理が出てくる出てくる……って。
「なんでやねーーーーーん!!」
「ど、どうしたエンリ!?」
アジアンな家や服や雑貨なのに、ニンニクたっぷりオリーブオイルたっぷり!!
赤といえばトマト!!
みたいな!?みたいな!?
……せめて……ベトナムあたりの料理が良かった……と、ひっそり溜息を落とす私は、パクチー大嫌い人間なのでした。げふん。
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