当たり前ですが怪しまれますよね
評価をつけていただきました!
嬉しすぎたので更新です!
チュンチュン…チチチ…
爽やかな鳥の鳴き声。
窓から差し込む朝日。
石鹸の匂いのする真っ白なシーツ。
おかしい、昨日の記憶があやふやだ。
ま、まさか…隣には…!!
…誰もいなかった。
朝チュンかと思って焦ったわ。
とにかく、昨日の記憶を整理しよう。
仕事帰りに楽しみにしてた児童書の新刊を買って、コンビニでビールとつまみを買って、公園でちょっと本を読んじゃって、森で熊さんに出会って……?
……あれ?最後だけオカシイよ?
コンコン とノック音が聞こえる。
「はい?」
あ、つい反応しちゃった。
つか、ここ私の家じゃない!?
慌てて見回す。ベッドしかない小さな部屋だ。
慌てる私に気づかず女性が一人で入ってきた。五十代くらいの優しそうな女性だ。
「入りますよ、お客さん。体は大丈夫ですか?」
「え?あ、あの、大丈夫っていうか、私、なんでここに…」
慌てて起き上がる私を見て、女性は慌てる。
「まだ起きちゃダメですよお客さん!昨日はひどい顔色で冒険者さんが担ぎ込んで来たんですから!
朝は部屋でとるように言われて持ってきたんです。食べられますか?」
女性の持ってきた食事はベーコンのようなものと、目玉焼きにサラダ、黒いパンだった。
美味しそうな匂いに、グゥーっとお腹が反応する。
「あはは、お腹は元気になったみたいで良かったですよ。もう少ししたら冒険者さんを呼んできますね」
そう言って女性は部屋から出て行った。
「いただきます」と手を合わせてから、ベッドの上で朝食をありがたくいただく。
塩胡椒の味付けがシンプルで美味しい…そう言えば昨日の昼?から何も食べてなかった。
そして。
手足の細かい切り傷とすり傷、筋肉痛っぽい全身の痛みから、昨日の記憶が蘇る。
夢じゃないのか、熊さんに出会ってすたこらさっさは。
そして…最後に見たあの人は、うろ覚えだけど…。
新刊が楽しみすぎて妄想が暴走した、私の願望だろうか。
「最強の騎士、オルフェウス・ガードナー…」
「おい、なんでその名前を知ってる」
「ぴぇっ!」
耳元で突然響くバリトンボイスに、心臓が止まるくらいビックリしたよ!
変な声出ちゃったよ!ドアの開ける音とか全然聞こえなかったし!
声が聞こえた方へ恐る恐る顔を向けると、明らかに「不機嫌」と言わんばかりの黒髪と青い瞳を持つ、ガタイの良いおじさまがおわしました。ははーっ!!(なぜか土下座気分)
「あ…あの…どうやら助けて頂いたようで…」
「それはいい。なんでその名前を知ってるのかが聞きてぇんだ。答えろよ」
お…おぅふ…大層お怒りのようじゃ…
この様子じゃ、異世界からキター☆とか言ったら嘘つきとか言われてボコられそうだし、かといって嘘ついてもバレそうだ…
えっと、えっと…
「あの、黒髪って、救国の騎士様の特徴だし…?」
「…まぁ、黒髪になるくらいの魔力を持つ人間は多くはないけどな」
あ、危ないところだった…かな?
わざと誤魔化されてくれたのかも…。
まだ根本的に解決してない感はあるから、また何か聞かれるかもしれないな。ボロを出さないようにしないと…。
「そういやお前も髪も瞳も黒いな。魔力は高いのか?」
げっ、そんなん言われても分からないよ!
だって…だって…魔力なんて知らない…ここは本の世界かもしれないけど、だからって自分がどうなるのかなんて分からない…分からないことだらけだ…
「すみませ…分からな…う…ひっく…」
しまった。泣くつもりはなかった。
でも勝手に流れてくるんだもん!私のせいじゃないもん!
あ。オルフェウスさん(仮)が慌ててる。
「す、すまねぇ、困らせるつもりは無かったんだよ、ただちょっと今色々あるから疑ってて…」
「えぐ…ひっく…うえぇぇ」
「おい!本格的に泣かないでくれ!」
おかしいな、止めようとするとさらに出てくる。今なら合わせて倍出てきます的な感じになってるよ涙。
「ちくしょうーだああぁー!」と叫んだオルフェウスさん(仮)は、私を抱き寄せた。
「とにかく落ち着け!何かしら力になってやるから、一からゆっくり話してみろ!」
ぶっきらぼうな話し方なのに、抱き寄せる腕は優しくあたたかくて…私は顔を熱くさせながらコクコクうなづくのだった。
そして…高速で脳を回転させて、身の上話を作成させるのだった。(頑張れ私)