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王都から旅立ちまーす

旅の支度は手馴れたもので、隣国のアズマ帝国の情勢も安定しているから、食料などは移動期間の分だけでいい……とはいえ、オルの美筋肉をキープさせるのも、この世界で生きる私の使命だ。

食べ物はしっかりとバランスよく持っていかねばならぬ。

そこで、これの出番です。


異次元ポ…リュック!!


クラウス君直伝の、水色ロボット魔法からインスパイア(?)したリュック。

これには空間魔法で領域拡張を付与してあって、五トンくらいは入るようになっている。頑張った。

中に入れたものは時間が止まっているため、生鮮食品が腐らない。出来立ての料理も温かいまま持っていける。

そんなわけで、今の私は絶賛お料理万歳だ。オルがよく通っていたお店の秘伝ミルク煮を教えてもらったり、和食三昧してみたり、とにかく料理しまくっている。


隣国の首都へは一ヶ月かかるらしい。

魔法で移動も考えたけれど、街道の警備も兼ねての依頼だから、馬車での移動となった。


「クラウスが馬車を作ってくれたぞ。尻がシックスバックになるって、エンリが泣いてたと言ったら爆笑していたが、シックスバックって何だ?」


「クラウス君に何を言ってんのよ!!」


ぷりぷり怒りながらも、クラウス君のいる王城に向かって柏手を打つ。悪霊退散!という気分だ。悪霊云々は特に意味はない。

それにしても馬車の揺れからくる尻問題が解決して良かった。


オルには国から指名依頼が入るという形になっていた。

一般的に「魔王の残党」と言われる者達は、魔王を神と崇める人間達なんだって。


「あんなの神じゃねーよ」


「おお、さすが!英雄が魔王を語る!かっこいい!」


「かっ……そ、それはともかく、準備はできたかエンリ」


オルは目元を赤くしながら話をそらす。照れちゃって可愛いなぁ。


「食料、生活用品は大丈夫。三ヶ月くらいリュックに入れた」


「ありがとな。エンリがいてくれて助かった」


いいこいいこと撫でられる私。えへへ、やれば出来る子なんだよ。

馬車は一見普通の幌馬車に見えるけど、内部はクラウス君の転生技術無双で作った住み心地の良い空間になっている。

さらに、私たち以外は入れないように結界を張ってやった。えへへ。ほめて。



見送りにはクラウス君や、オルの知り合いの冒険者のオッサン達が来てくれた。


「マイコちゃんは?」


「今日は吟遊詩人の仕事だな。しばらく隠密として動くなと言っているよ」


「過保護だね〜、よろしく言っといてね!」


「分かったよ。オルも気をつけて」


「おう」


「「「兄貴、姐さん、いってらっしゃい!」」」


「姐さんはヤメテ」


げんなりする私を見て爆笑するクラウス君をチョップして、私達は王都を発つのだった。







「オル様、オルチョフ、オルヌンスキー、移動は一ヶ月くらいなんだよね」


「ああ、エンリが神馬を出してくれたから、早く着くかもな」


「そうだといいな、オルデレラ」


「何だそのデレラってのは」


「オルデレラは義姉ヘンリエッタに虐められて舞踏会に行けなくされて、でも魔法使いが舞踏会に参加させてくれるの」


「ほう」


「そこで出会うエンリ王子と良い雰囲気になるんだけど、魔法が解ける前に帰らなきゃって走ったらガラスの靴が片方脱げて、忘れて行っちゃうわけ」


「なぁ、なんで俺が女役なんだよ」


「まぁいいじゃん。それでエンリ王子がガラスの靴を持って国中の娘に靴を履かせるのね。それで最後にオルデレラのところに来るんだけど、ヘンリエッタは意地でも履こうとして、サイズの合わないガラスの靴を履くために散々足切ったり指落としたりするのよ」


「怖いな女の執念!」


「それを散々見届けた挙句、オルデレラは言うの。『王子様、もう片方は私が持っています』って…」


「怖い!!そいつが一番怖いじゃねーか!!」


「大丈夫。これ日本の童話じゃないから」


「童話!?それ童話!?」


すいません。馬車って暇なんですよ。

乗り心地が良くなって、シナトベのエアクッションのお世話のならなくて良くなったけど、ひたすら草原をカッポカッポするだけで、本当に暇なんですよ。

そんな中でも、一応シナトベとコウシンにお願いして、怪しいのが居ないか探してもらってるんだけど…


「人の子エンリ、怪しい集団を発見したぞ」



早速ですね。

いっちょ頑張りますか。







お読みいただき、ありがとうございます!

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