あたしゃ神様…じゃねーし!
加護に私の名前?
何言ってるのかが分からない。オルが遠く見える。あはは、あはははは…
「おーい、エンリ帰ってこーい」
「……っ!!加護!?」
危うく遠い世界へ旅に出るところだった。
私の加護ってこと???
「そうだ。クラウスにも聞いたが、神以外からも加護を受ける事があるらしい。ドラゴンとかユニコーンとか、希少生物だ」
「ほへぇ…私は希少生物扱いでふかぁ…?」
あんまりな事態に、フガフガになってしまう。あたしゃ神様じゃぁないよ…希少生物だぁよ…
「加護の内容は、エンリの考えてる事が分かったり、エンリに危険があれば感知出来るってやつだった。前にギルドでエンリが絡まれてる時にすぐ分かったしな」
「え、だからあの時すぐ来たんだ……それって加護なの?呪いじゃないの?」
「ちなみに夫婦になれば、さらに加護が強くなるそうだ。楽しみだなぁ」
いや、なんか怖いよ!そしてオルがすごく嬉しそうだよ!
私のステータスの適性職業といい、加護といい、おかしくない?神様遊んでない?
クラウス君と公園で待ち合わせをしている。
うちの家族には「友達と遊んでそのまま行くから」と言って見送りは断った。
また絶対来てねと、お母さんとゆうりが目を潤ませてオルに言ってるのを見て、筋肉スキーの遺伝子をヒシヒシと感じた。お父さんはヒョロッとしてるのにね…
ついでに錬成魔法で作った結界石を玄関に置いてもらった。これでご近所周辺に悪意のある人は弾かれるようになったぜ!
「お待たせ、オル、エンリさん」
「クラウス…宮田くん」
「あはは、クラウスで良いよ」
呼び直したのはクラウス君の家族が見えたからだ。笑顔のお母さんと妹さんが一緒にいる。おお、美形家族だ。
「俺の方は全部話したんだ。まぁこんな姿だしね」
確かに、前世もイケメンだったけど、今はキラキライケメンだからね。
オル曰く「アイツの狙った笑顔は死傷者が出るレベル」らしい。どんなだよ。
「これが最後じゃねぇぞクラウス。今度はミラも連れてくる予定だし、俺たちはこっちで結婚式をする予定だ。時間が合えばエンリが連れて行くってよ」
「いいの!?エンリさん!」
「当たり前だよ!オルの戦友で私の同級生じゃん!」
「やった!ありがとうエンリさん!結婚して!」
「テメこの野郎、エンリは俺と結婚するっつってんだろが、ぁあ?」
「冗談だよオル。つかマジで殺気飛ばすなって、おい、落ち着けって!」
男同士のやり取りに笑っていると、クラウス君のお母さんと妹さんも笑っていた。
「ええと、森野さん?」
「あ、はい」
「あの子の事、よろしくお願いします」
「はい!また連れてきます!色々と!」
「ふふ、そうですね」
うん。なんかクラウス君には色々とあるっぽい。そこら辺も聞きたいけど、あまり関わるとオルが焼きもち妬くからなぁ…もうすでに妬いてるしなぁ…
「なんだ?」
「何でもないっす。さ、行きますか!」
オルの後でお仕置きだ目線を無視し、明るく出発の合図をする。
クラウス君の家族が手を振る中、私は錬成魔法で扉を作ってノブを回して、いつもの宿屋に戻ったのでした。
宿の部屋に置いておいた服を着替える私達。オルはスーツでいてくれても良いのに、あっという間に脱いでしまったから悲しかった。でも目の前で脱いだから眼福だった。
「さて、今日はどうしようか、私はギルド行こうかな」
「俺もギルドだな。情報集めてぇし」
「城に戻る前に、ギルド長に用があるからついて行くよ」
「……チッ」
「本当にブレないね、オルは」
何だかお約束になってきたやり取りをしつつ、ギルドに向かおうと宿を出た時……
「オルフェウス様あああああああああああ!!!!」
私の目の前を、紫の何かが横切る。
オルが思わず「それ」を受け止めていた。
「オルフェウス様!!会いたかったですわ!!なぜ、なぜこんなにも長く王都にいらっしゃらなかったの!?ああ!!わたくしの胸は張り裂けんばかりでしたわああああああ!!」
呆然とする私。
薄紫色の髪は長く綺麗に何本かの縦ロールを作っていて、紫のドレスにはたくさんのフリルがついている。
スタイルは良い方だろう、オルに抱きついて胸あたりに顔をうずめている女性は、強い香水の香りがした。
「うわ、ご令嬢…」
「クラウス君、知ってる人?」
「ああ、えーと…学園に通ってた時の同級生で…」
「あら!そちらの方々はオルフェウス様のお知り合いかしら?」
カツカツと歩いてくると、バサッと縦ロールの髪を後ろに払い、私の目の前に立ちはだかった。
「え?わたくしですか?ご存知とは思いますけど名乗りましょう!
ヘンリエッタ・ブルーム!公爵令嬢ですわ!」
…………誰?
お読みいただき、ありがとうございます!
……あれ?ブクマが300件?なんか急に増えたような?
ありがとうございます!!




