表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/71

ありがちな異世界トリップ

本日2話目です。

少し戦闘描写があります。

気がつくと、そこは森の中でした。




私の名前は、森野えんり。三十六歳。独身。

派遣社員で某メーカーの事務やってて、同じ毎日を繰り返す日々。

そんな中での癒しは、最近ブームの大人でも読みごたえのある児童書。

中でも『銀髪の勇者シリーズ』は、かなりの人気があり、私は本だけではなくスマホに電子書籍をダウンロードするくらい大好きだ。

そんな特に何かした訳でもなく、ごく平凡な三十路半ばの女が、一体どうして…。


名は体を表すって言うけど、実際森にいなくてもねぇ?

森の(中の)えんり。なんつって。




「…って!やだ!どういう事!?」


無事、我(現実)に帰りました。(つらい…

手には新しい小説、コンビニの袋に缶ビール二本と枝豆。カバンには財布とスマホと充電用のバッテリー。

そして私は…森の中。


「意味分からん!」


叫んだってしょうがない。もしかしたら拉致されたとか…いやいや三十路半ばのオバサンをどうするっていうのよ。

う…なんか自分でオバサン呼ばわりしたら、結構傷ついた。

自分、面倒臭い。


「とにかく、森を抜けなきゃ。助けを求めて…」


内心の恐怖を紛らわせる為、独り言が多くなるのはしょうがない。

スマホを見ると圏外、バッテリー節約のため電源を落とす。

急にサバイバルの様相を呈してきたな…やだな、私はインドア派なのに…。


「こういう状況って、よく聞くけどありえないよね。ん?よく聞く?違う、聞いたんじゃない。ライトノベルとかでよく見たんだよ、こういう設定。異世界トリップ的な…」


喋りながら、血の気が引いてくるのが分かる。


「まさか、嘘でしょ?こんな事があったら、次はお約束の…」


グアアルルル……


前の方から、獣のような唸り声が聞こえる。きこえちゃった。

まじかー。テンプレもここまで来ると、笑うしかないかもなー。


ガルルグルルル……


草をかき分けて出てきたのが、体長三メートル程の……熊?


「死んだふり…は、ダメか。しかももう襲いかかる気満々だし…」


頭のどこかで冷静な私がいる。

おかしいな、私ってそんなキャラじゃないんだけど…

手に持つのは缶ビール。勿体無いけど命には変えられない。

今日はスーツだったけど、歩きやすいちょっとヒールのあるスニーカーなのが功を奏してる…はず!


「行く!!」


プルトップを引いて、思いっきり熊に向けて発射、そしてそのまま投げつける!

驚いて混乱する熊の様子は確認せず、そのまま猛ダッシュ!


「はぁっ、はぁっ、はぁっ」


走る。走る。

ひたすら走る。

事務仕事で緩みきった筋肉を酷使して、さらに走る。


「はぁっ、はぁっ、あれっ、おかしいなっ」


おかしい。

思ったよりも息が切れない。

足も軽いし、何だか飛ぶように走るイメージだ。

それでも、熊は諦めずに追いかけてくるんですけどね!


「うえええぇぇぇん!誰かあああぁぁぁぁ!!」


体力よりも、恐怖で色々限界になってきた。

怖い。怖いよ。

涙と鼻水で、うまく呼吸が出来ない。

も……限界……


「おい!そこのお前!こいつの気をそらすから、木に登れ!」


よく通る男性の声。

とにかく無我夢中で、近くの木に登る。木登りなんてやったことないけど、やるしかない。

ある程度登って一息つくと、声をかけてくれた男性が気になり下を見る。


ガアアアアアア!!!!


凄まじい咆哮が聞こえ、何か重い物が倒れる音がした。


「助かった…?」


手足の震えが止まらない。

そのまま木から落ちそうになり慌てていると、温かい手が背中を支えてくれた。


「もう大丈夫。よく頑張ったな!」


振り向くと、黒髪の短髪に青い瞳の男性。目が合うとニカっと笑顔になる。

これは…この方は…


「オル…フェウス…ガードナー…?」


死ぬ前に幻覚でも見たのかな。

それにしても思い浮かべるのが、家族じゃなくて二次元のキャラっていうのが、私らしいよね。


私はにやけ顏のまま、暗闇に意識を沈めていった。







とうとう手をつけてしまった異世界トリップ。

反省するけど、後悔はないです。


…ごめんなさいm(_ _)m

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ