むしろお願いします的な
またしても評価をいただき……
あ、あ、ありがとうございます!!
なぜか肌ツヤを良くしてるオルと、ぐったりお疲れな私。
そうだ。お仕置きを受けてる場合じゃなかった。渡りの神様ワタル君!カマーン!
《はいはーい。みんなのワタル君だよ!って、神にあだ名をつけるな!》
「ノリツッコミとは高等テクニックを…」
「なんか本当に神なのか疑わしいな…」
《ちょっとオルフェウス君、エンリさん連れてきたの僕なんだからね?》
「すまん!!!!」
《切り替え早っ!それはともかく、聞きたいのはメールの事?》
「そうです。会社とか家族に送ったのってワタル君?」
《送ったというか、こっちのシステムに干渉してデータを送ったっ感じ》
なんかハッカーみたいだな。
今回も部屋にいる全員に声が聞こえるようにしてくれている。サービス精神旺盛だね。
《なるべく怪しまれないようにしたけど、色々ごめんよ》
「なぁに突然」
珍しくワタル君が弱々しい声を出している。表情が見えないだけに心配だ。
《いや、ほらさ、ほぼ無理やり異世界に送っちゃったからさ。オルフェウス君の為とはいえ……実はね、加護を多く持ちすぎると、特定の相手が作りづらくなるんだよ》
「え、そうなの?私も加護少ないよ?」
《それは大丈夫。だって『銀の勇者』で、人気投票にオルフェウス君を入れた人の中で、僕の力が宿った外伝の『伝説の騎士』を手に取れたのは君だけなんだもん》
「はぁ?」
《嫁候補を探す方法がそれだったんだよ。本当に苦労したんだよ?》
「はぁ…」
いまいち苦労した感が伝わらない。
まぁ、メールの差出人が分かったからいいや。
《ちょ、軽く流され…「じゃーねー!」ええええ!?》
焦る神様との会話を強制的に切る。
玄関から音がしたから、誰か来たみたいだったし。
「エンリは容赦ないな。……気配からすると、壮年の男性のようだぞ」
「お父さんかも!」
部屋を出て、慌てて階段を下りようとすると、思いっきり足を滑らせる。
落ちる……と思った時には、お腹にオルの腕が回され、やんわり抱かれていた。ああ!さすが筋肉様!
しかも、今は室内なのでジャケットを脱ぎ、シャツを腕まくりしてるのですよ奥さん!
ちなみに私は半袖ワイシャツ邪道派です。
「おい、気をつけろって」
「ごめんなさい…」
「またお仕置きされてぇのか?」
「あぅ…次は気をつけるってば!」
抱えられたまま階段を下りると、赤くなってるお母さんとゆうり、唖然としたお父さんの姿……
「お父さん!」
久しぶりーと言おうとして気づく。私は今、オルにぴったりとくっついている……?
一気に顔に熱が集まる。
「ちょ、ちょっとオル!離して!」
「ん?ああ、お父様ですか。初めまして。オルフェウス・ガードナーと申します。名誉男爵ですが、爵位があります。一代限りではございますが子は子で活躍できるでしょう。何と言ってもお嬢様には才能がありますからね」
オルが普段の無骨さは何処へやら、流暢な話し方でお父さんを圧倒する。
しかも反則と名高い(?)バリトンボイスだ。
私なら三秒で腰砕けになるところを、お父さんは辛うじて意識を保っていた。
「あ、ああ、よろしく頼むよ…」
お父さんしっかり!気を確かに!
そしてオルはしっかりと片腕で私を抱きかかえたままだ。
お母さんとゆうりも、真っ赤でフニャフニャになってしまってる。
どうすりゃいいんだ、このカオス…あ、そうだ。
【結界】
小声で唱える。オルのだだ漏れ色気を閉じ込めるというイメージ付きだ。
案の定、皆正気に戻った。良かった。オルの色気は凶器だ凶器。
「エンリ…後で覚えてろよ…」
呟くオル様がいた。
何でだ!?良かれと思ってやったのに!!ひどい!!エロ!!イケメン!!
居間に戻って、改めて挨拶する私達。
今は婚約という形にして、結婚まではもう少し準備が整ってからという話をする。
ずっと黙って聞いているお父さん。
これはもしや…アレですか?そう簡単に娘はやれない的な…
「オルフェウスさんのお年は?」
「四十になります」
「そうですか…」
「私のような者に、若いエンリさんは似つかわしくないと思いますが…」
「いやいや!お若く見えます!むしろ婚期を逃したのではと心配していた娘に、こんな良縁があったとは……日本語もお上手ですし、妻から聞くとお国で公務員のような仕事をされてるとか!
爵位とは国から与えられるものですしね!むしろこちらからお願いしたいくらいです!
いやぁ、めでたいな!」
……………………へ?
「もう、お父さんったら『オタクな娘が喪女でツラタン』とか、ツイッスターで呟く毎日だったものね。長期の旅行はやっぱり良かったのね。オルさんと出会えたし」
「お母さん、今日は美味しいものにしよう!オルさん何が好き?やっぱり肉?焼肉とか?」
「そうだな!今日は祝いだ!」
途端に盛り上がる家族。笑顔のオル。無になる私。
何、私って可哀想な子認定されてたってこと?結構毎日楽しくやってたつもりですけど?
……まいっか。
家族が笑顔で、オルが笑顔で。
そんなん、私だって笑顔になっちゃうもんね
お読みいただき、ありがとうございます!
ブクマが…増えてる!(嬉




