偉大なるは日本のアニメなりけり
ご都合主義…
クラウス君は私達の泊まっている宿に到着するなり、声もなく固まっていた。
だし巻き卵から、肉じゃが、冷奴、豚(っぽい肉)の生姜焼き、シーザーサラダ、お味噌汁はワカメと油揚げを入れた。
米はあったから、それを石釜で炊いて塩おにぎりを作る。海苔はお好みでね。
米もあればぬか漬けも作れる。梅みたいな果実で梅干しも作れた。
ショウドとかいう小豆っぽいので作った和菓子。羊羹、おはぎ、きな粉をからめた餅、大福。
柔らかいスポンジを使ったショートケーキ、パイ、タルト、自信があるのはチーズケーキだ。
ああ、カカオが見つからない…あれがあればもっと…
「ねぇ、エンリさん」
チョコは正義だよね…
「ねぇってば」
フォンダンショコラとかさ…
「エンリさん!!」
「うああぁぁ!はい!何でしょう!」
「これって何?なんで俺もてなされてるの?」
「お前に魔法を教えてもらいたいんだと。頼めるか?」
「お願いします!師匠!」
ポカンとした顔をしてたけど、次の瞬間クラウス君は爆笑した。イケメンはどんなでもイケメンだね。
笑いすぎて涙を拭きながら「ありがとう」って言われた。鼻をすすったのは見なかったことにした。
「じゃあ、せっかくだからこの料理を収納してみよう」
「へ?教えてくれるの?」
「空間魔法でしょ?俺のを見せるから魔力の流れを見てみて」
そう言うとクラウス君は右手で料理を持ち。左手を縦に切るようにすると黒い裂け目が出来て、そこに右手を押し込む。
「イメージは未来の水色ロボットのポケット。慣れないうちはバックとかの収納が広くなるイメージでやってみて」
いつも使っているポーチにイメージしてみる。広くなる広くなる……。
「あ、出来た」
「ああ、やっぱりね。エンリさんのは付与に特化しているんだ」
「付与?エンチャントか?」
「そう。結界なら適当な石に付与して『結界石』を作ったり出来るんじゃない?職業が錬金術士になってるから、作る感じで空間魔法を使うといいと思う」
「なるほど…さすが万能の魔法使いですね!」
「その二つ名やめてよ!俺の黒歴史!」
「ん?っていう事は、移動するやつは…」
クラウス君の黒歴史はスルーして部屋のドアの前に立つ。オルとクラウス君が不思議そうに私を見ている。
「ほら、ドアを開けたら王都の外ってイメージしたらさ」
開けると草原が広がっていた。
「ほらね」
出来た自分にびっくりだ。
「ねぇ、俺って必要だった?」
「もちろんだよ!クラウス君のアドバイスがなかったら、出来なかったよ!」
これは本当。何度やっても失敗して、もうダメだって思っても、次こそは次のこそはと、空間魔法を発動させ続けた。
クラウス君があの時、突き離してくれたからだと思う。
「やっぱり必要なかったかな。エンリさんは努力家みたいだしね、時間かかるけど出来るようにはなったと思うよ」
「時間かけられないのよ。だってみんなで地球に一度里帰りするんだから」
……。
…………。
……………………。
「「はぁっ!?!?」」
驚き過ぎですよ二人とも。
だって、レベルが上がったら元の世界に行けるって言ってたし、加護とか色々取れなくなるって言ってたし。
「いや、それはないでしょ?」
「俺もそう思う。エンリだけならともかく、俺らは無理だろ」
もう、頑固だな。ならば奥の手、一日一回の限定ガty…神子姫の力で、渡り神様に教えてもらいましょう!
ヘイ!神様!カマーン!
《ちょっと、エンリ以外に聞かせるのは反則なんだけど…やっと呼んでくれたと思ったらまったく…》
「そうなんですか?なら次回から気をつけます。私の空間魔法の移動について教えてください」
《おや、使えるようになったみたいだね。おめでとう。日本に帰れるよ》
「日本に行っても、こっちに帰って来れますよね」
《当たり前じゃん。オルフェウスの嫁なんだから。嫁は里帰りも必要でしょ?行ったり来たり出来なきゃ意味ないじゃん》
「やっぱりね……ちなみにオルとかクラウス君も連れて行けます?」
《もちろん。地球征服とか破壊とかしなければ基本大丈夫だよ。エンリが選んだ人なら大丈夫でしょ》
「マジか……俺も日本に行けるのか……」
クラウス君が静かに涙を流していた。オルがクラウス君の肩を叩く。
「良かったな。家族の様子を見てやれ」
「……おう」
「感動してるところ悪いけど、オルは私の家族に挨拶してもらうからね?」
「え……あ……そうか……」
オルは首まで真っ赤にして、カチカチに固まってしまう。可愛いぞ。
《じゃ、もういいかな?他に聞きたいことはない?》
「また聞きたいことが出来たら呼ぶね。ありがとう渡りの神様」
《うん。結婚式には呼んでね〜》
「ちょ、それ、バカーーー!!」
真っ赤になった私とオルを見たクラウス君が「俺やっぱりいらないよね」って呟いていたけど、とりあえず放置なのです。
よし!里帰りするぞー!
お読みいただき、ありがとうございます!
騎士と魔法使いと三十路女が日本に行きます!




