ボス敵の前にはレベル上げてから行くタイプ
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オルは私を見ると、ホッとしたような顔をして微笑む。
神様達はオルの怒気に驚いて帰ってしまったようだ。ごめんよタケミカヅチとフツヌシ…今度新作お菓子を作るから許してね。
「痛ぇぇ…痛ぇよう…」
「うるせぇな、骨は折ってねぇだろが」
「オル、ごめんね。私がしっかりしてなかったから…」
慌ててオルの側に行く。ヒョロ男はどうでもいいけど、オルが嫌な思いするのは私が嫌だ。
昨日の内にヒョロ男を片付けなかった私が悪い。
「良いんだエンリ。最近ギルドに顔出してなかったからな。そろそろ虫除け(牽制)しねぇとエンリに変な虫がつく。ギルドマスターに話してくるわ」
痛い痛いと大騒ぎするヒョロ男を手刀で黙らせたオルは、そのまま首根っこ掴んでギルドマスターの部屋に入って行った。
「あちゃー、これはギルマス怒られるなぁ」
「オルフェウスに入った指名依頼のせいで、しばらくエンリ姐さんに会えなかった挙句この騒ぎだ」
オルの知り合いで、冒険者のおじさん達が口々に私に囁く。てゆか姐さんって言うのヤメろ。
ちなみにオルは兄貴って呼ばれてる。似合いすぎてて笑える。
「兄貴もすげぇよな。一週間の依頼を五日にして帰ってきたぜ?」
「愛だよ、愛。それも溺愛だ」
「もうやめてよぅ。姐さんとか死の踊り子とか、もうお嫁に行けないよぅ…」
「だからそれは俺が貰うっつってんだろ?」
いきなり後ろから抱きしめられて、声が出ないほどびっくりした。もう!心臓止まるかと思ったわ!
あと耳元でバリトンボイスはダメって言ってるでしょ!足腰立たなくなるでしょ!
ヘロヘロになった私をお姫様抱っこで抱えると、オルはさっさとギルドを出て行く。周りの冒険者達から散々冷やかされた。だから恥ずかしいんだってば!!オルのバカ!!
宿に戻ると、作り置きしていた料理を錬成魔法で温め直す。本当は宿の厨房を借りたかったんだけど、お腹空かせているだろうオルの為に、スピード重視でいく。
錬金術士となった今の私に怖いモノはない。味付けに醤油も味噌も何でもござれだ。
そして私はこの味噌と醤油で、やりたい事があった。やらなきゃいけない事があった。
「オル、お願いがあるの」
「ん?なんだ?」
オルがお気に入りの、生姜焼きっぽい味付けにした肉料理を出しながら、私は少し緊張しつつ切り出した。
「忙しいのは分かってるんだけど…クラウス君に魔法を教えてもらいたいの。前とは違って魔力操作も出来るようになったし、今なら大丈夫だと思うの」
「……そうか。あいつはタダじゃ動かねぇぞ」
そう。前回教わる事が出来なかった空間魔法。私に足りなかったのはレベルと魔力操作と……「覚悟」だと思う。
この世界で生きる、オルと一緒にいる、他にも色々な覚悟。
「タダで教えてもらうなんて失礼だよ。この味噌と醤油が授業料なの」
「ん?エンリの作った調味料?確かにそれで作った料理は美味かったけどよ…アイツ動くかなぁ」
「大丈夫!!お願いね、オル!!」
あ、ついでに和食づくしで攻めてみよう。ふふふ…どれくらいで陥落するかのう…楽しみじゃのう…
「エンリ…悪い顔になってんぞ」
和菓子でも攻めてやる。これで奴も私(の錬成魔法)から、離れることは出来ないであろう!!
アーッハッハッハッハ!!
「落ち着けエンリ」
……はい。
とりあえず、クラウス君攻略作戦として大量に和食を作り置きしておく。
さらにここら辺では見ないふわふわスポンジを使ったケーキとかの洋菓子とか、餡子ときな粉を使った和菓子とかも。これでもかというくらい作ったった。
ウキウキで作っている私を、オルは複雑そうに見ている。私はクラウス君に対して何の感情も無いのに、オルはいつもヤキモチを妬く。いや、クラウス君だけじゃないな。他にも色々……
オルってやっぱり独占欲強すぎなのかも?
「ねぇ、オル?」
「なんだ」
「おかえりなさい」
私の「おかえり」はオルだけなんだよって言いたかったけど、その前に甘く微笑んで「ただいま」と言ったオルが素敵すぎて、ただ真っ赤になって俯くことしか出来ない私なのでした。
お読みいただき、ありがとうございます!
次回いよいよエンリさん空間魔法を会得できるか、乞うご期待であります。




