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手取り足取り腰は取るなっつの

評価が…増え…ぐはぁ。

「エンリは武器ではなく、無手で行った方が強いかもな」


「え、そう?」


「普段は魔法で遠距離攻撃、近接攻撃は俺がやるが弱い魔物にはエンリも一緒にやろうか。ただ魔物に素手というわけにはいかねぇから、籠手に刃を仕込む武器をクラウスが昔作ってたから、それが良いかもな」


「籠手に刃を…クラウス君は本当にこの世界を謳歌してるよね」


「まぁ、あいつの使命は勇者と魔王を倒すことだったからな。それが終わってからの方が苦労している気もするが……ま、それはともかく今はエンリの訓練だな。かかってこい」


「押忍!」


それから小一時間、かかっては絡め取られて、後ろを取られた時は罰として頭にキスされるという、ある意味スパルタな組手をやり続けた。

やめてよぅーセクハラ反対ぃー違う意味でハァハァしちゃうからぁー(…すみません。


何十回目かの組手で、やっとオルの後ろを取れた。

背の高いオルの首にえいやっと飛びついて、うなじに思いっきりチュウしてやった。恥ずかしいけど耐え抜いたぜ。精神年齢三十六歳をナメるなよ。

よし!仕返し完了!


「……っ!!」


首まで赤くしたオルが、慌てて私から飛び退いた。

自分からはガンガンしてきたくせに、私からだとダメって、何それ可愛い。


「おお!すげぇ!剣を持ってないとはいえオルフェウスの後ろを取った!」

「あの小さい子やるなぁ!」

「何者だ?勇者様達の関係者か?」

「あんな可愛い子からのキス…」

「組手でキスもらえるのか!?」


なんか周りが騒ついてますけど…って、あれ?結界張ってなかったっけ?


「おい。最後の奴ら、俺が()ってやる」


「オル落ち着いて!いのちをだいじに!それよりなんで結界が効いてないの!?」


「あ、悪ぃ。一時間毎に張り直さなきゃいけないんだったわ」


「ええ!?」


って事は、私のうなじチュウが見ら、見られ、見られちゃったって、あ、ああああああ!!


「ははは、悪かったって。でも嬉しかったぜ!」


「オルのバカー!!!!」


「ははは」


なんで嬉しそうなんだバカ!!エロ!!イケメン!!






色々な意味で疲労困憊の私。今日の訓練は終了にして、オルと二人で宿に帰る事にした。

宿の料理は美味しい。フランス料理っぽい味付けにバター多めにした感じだ。和食がかなり恋しくなってきてるけど……あ、そだ。


「ねぇオル、クラウス君に会えない?」


「……何でだ」


ん?冷気を感じる?

オルの綺麗な青い瞳が、絶対零度の視線となり私を射抜こうとしている。

ちょ、何で……


「一体アイツに何の用だ?もちろん俺も同席するんだよな?」


怖い、オルの冷気が半端なく怖い、そんで寒い。


「あ、あの、さっきの武器の話と、私の世界の調味料の話をしようと…。あのね、私料理作りたくてね、オルに食べて貰いたくて…」


後半は慌てて付け足した。料理はそんなに得意じゃないけど調味料さえあれば基本の和食程度なら作れる。とにかくオルが怖い!怖いのです!

オルは長いため息をついて額に手を置いた。冷気がおさまってホッとする私。


「すまねぇ。どうも俺は独占欲が強いみてぇだ」


「オルは…付き合った人とかいる…の?」


聞いておきながら、途中から不安になる私。

私だって人の事言えない。オルの過去に嫉妬するくらい、私はもうオルにのめり込んでいる。


「決まった女は居なかった。作ろうとも思わなかったな…」


でも女には苦労してなかったんだろうな。とんでもなく美形だし、強いし、有名人だし。

私だって付き合った事くらいある。でも長く続かなかった。社会人になってからは二次元に走っちゃったし、経験豊富とは言えないよね。


「それより、俺に料理作ってくれるとか、もうエンリは俺の嫁確定だな!」


「!!」


嬉しそうに笑うオルがもう…もうっ…!!くっ!!ヤラレタ!!……もう負けです。負けでいいです。

すっかり敗北にうちひしがれている私を、オルはひょいと抱き寄せる。


「クラウスと連絡をとっておく。調味料があるといいな、エンリの手作りを味わいたい」


そのまま耳元で、エンリも味わいたいとか言いやがったので、脳みそ沸騰状態となった今日の私は、閉店させていただきます。




…………きゅぅぅ…………





お読みいただき、ありがとうございます!

ブクマが増えたのを見て、電車の中でにやけてしまった不審人物は私です。

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