気の流れを読む…今なら撃てる気がする
武術に関しては素人なのでご容赦ください。
ちょっとしか習ったことないので…
冒険者ギルドに戻り、スライム5匹の討伐証明をする。周りの冒険者達とギルド職員達の生温かい視線を受けまくる。絶対さっきの道端大胆告白の噂が流れてるせいだ。オルのせいだ。
飄々としているオルを睨みつけたら、そんな顔も可愛いと囁かれ撃沈する。
ずるい。バリトンボイスはチートすぎる。ちくしょう大好きだ。
「すまねぇが、訓練場を使わせてくれ」
「へ?ここの訓練場の使用許可ですか?」
ギルド職員さんがびっくりして声がひっくり返ってる。どうしたどうした??
ハッと何かに気づくオルは、恐る恐る周りを見回すと……
「最強の騎士が、ここの訓練場を?」
「オルフェウス様が?」
「伝説のSSランク冒険者、オルフェウスが?」
「これは……」
「もしや……」
「手合わせのチャンス!?」
オルってば以外と抜けてるんだから…。自分が有名人だとか、勇者の一人だとか、そういうの忘れてるんだよね。自覚がないみたい。なんでだろ?
「ほとんど田舎に引きこもっていたからな。忘れてた…」
「でもみんなオルの顔を知ってるみたいだよ?」
「クラウスが精密な絵姿をばら撒きやがった。あの野郎…今思い出してもムカつく!!」
あぁ…カメラ作っちゃったかクラウス君…これだから転生チートは…
それにしても、冒険者の皆さんの盛り上がりはスゴイな。ご褒美の訓練だから、二人っきりが良いのに…いや、訓練ですよ?あくまでも訓練ですよ?武術の!武術のね!
「訓練場は貸切にしてくれ。誰も来させないように結界も頼む」
「かしこまりました」
周りからはガッカリした声が上がったが、それでも早々に集まった人達は散っていった。
もっとしつこくされるかと思ったけど、アッサリしたもんだなぁ。
「冒険者は己の手の内を晒さない。それが広まった時に弱点となることもあるからな。だから訓練場を貸し切って結界を張ることもよくあるんだ」
「なるほど!」
「エンリも自分のステータスは隠しとけよ。俺以外には」
さり気なく自分は特別アピールが可愛すぎます。萌え殺す気ですね?
「いや、殺さねーし」
なんで心が読めるの?……ハッ!!まさか読心術!?
「エンリは顔に出るんだよ。さ、行くぞ」
ニヤリと笑うオルは、やっぱカッコイイ。……うう。なんか悔しいぞ。
足の長いオルに小走りでついていくと、ギルドの受付の裏にテニスコート二つ分くらいの闘技場みたいな建物があった。
中に入って、ギルド職員さんから渡された結界を作動させる。
「よし、じゃあエンリは何の武器を使う?」
「うーん。武器かぁ…私は魔法使い系だから…そういやクラウス君は武器とか使ってたっけ?本だと魔法ばっかだったけど」
「クラウスは杖術だな。魔法使いといえば杖だろって言ってたな。別に決まってねぇのに、アイツはたまに訳分かんねぇ事を言うんだ」
ああ、ラノベな厨二病ですね。分かります。
「私の武術っていったら合気道か太極拳だけど、いかんせん趣味の領域だから…」
「ちょっとやってみろ」
「ええ!?恥ずかしいなぁ…」
モジモジしてると、オルさんに早くやれって怒られた。なにも顔が赤くして怒らんでも…
とりあえず太極拳かな。丹田を意識し呼吸を整える。息を静かに鼻から吸いつつ両腕を伸ばして肩まで上げて、口からゆっくり息を吐きながら腰を落とす。これが基本の型の一つだ。
呼吸…気を丹田に送り、ゆっくり身体中に巡らせていく。腰を落とした状態からゆっくり息を吸い左手と右手をゆっくり回転させ、息を吐きながら右手を前に出し右足に体重をかけて前に送る。
習ってた時はよく分からなかった『気』みたいなのが、今は手に取るように分かる。掌から押し出した力はゆっくりと練られ、送り出される。型をなぞる内に、だんだん静かになっていく心。
その時私の周りを切り裂く何か。ひどくゆっくり向かってくるそれを、そっと受け取るとフワッと視界が広がった。
「……あれ?」
「よく取れたな。俺がエンリに投げた槍だ」
「ええ!?危ないじゃん!!」
持っていたのは刃が潰されている訓練用の槍だったけど、びっくりして地面に落としてしまう。
オルは笑って槍を拾い壁にたてかけた。
「当たらねぇように投げたら、手で受け止めたから驚いた。それって俺の剣技と少し似てるな」
「あ、うん。オルがやってる朝の鍛錬見てても思った。合気とかそっち系の感じがしたの」
「アイキ?アイキドーの事か?エンリは俺の師匠を知っているのか?」
「え?師匠?」
「ああ。なんかニホンって所から来たとか言ってたっけ」
おい。異世界トリップ多すぎない?
神マジ自重……。
お読みいただき、ありがとうございます!
かめはめはー




