おじさまの本気…パネェっす
これくらいの甘みは序の口です。デス。
オル様の怖すぎるオーラ。
何で?どうして?アワアワする私のことを、じっと真剣に見るオル様の青い瞳に、やっぱカッコイイ…と思ってしまう。
…って、今はそれどころじゃないっつの私!
「エンリは独り立ちしたいのか?」
「だって…これ以上迷惑をかけられないし…」
「迷惑とか関係ねぇだろ」
怖いオーラは、さらに強まっていく。怖い怖い!落ち着いてオル様!
「エンリは俺と一緒にいるのは嫌なのか?」
「ええ!?」
急にしゅんとなるオル様。か、可愛い!何ですかそれ!可愛いとか反則です!
悶える私を見て何を勘違いしたか、オル様は悲しげに目を伏せる。
「そうだよな。俺みたいなオッサンよりも、クラウスとか若い男の方が良いだろうし、男なら誰でもエンリを放っとかないだろうな。くそっ…」
「え、ちょっと、オル様?」
「いや、クラウスは権力はあるがエンリにはもっと落ち着いた感じの奴が…」
「オル様ってば!」
「何だ。今からお前に似合うやつを探そうと…」
「私はオル様がいいです!」
思いきり叫んだら、オル様は惚けた顔で私を見た。
他の人となんて嫌だ!オル様と一緒にいたいに決まってるじゃないか!ずっと本で読んでて、追いかけて、憧れてて、やっと出会えたんだよ!?
神だかなんだか知らないけど、オル様に会わせてくれたこの幸運を感謝してる。
だから。
だから私は。
それ以上を望んじゃいけないんだ。
適正職業がオル様のパートナーだとか、そういうのは関係ない。
新刊の続きは読んでいないけど、オル様の物語に私という人間は存在しないはずなんだ。これ以上一緒にいたら、自分がどうなってしまうのか怖い。
甘えてしまう。
望んでしまう。
好きになってしまう。
「……エンリ?」
オル様は優しく呼ぶと、私の頬に手を当てた。
そこで、自分が泣いていることに気づいた。ただ静かに流す涙を、オル様は優しく拭ってくれる。
「ごめんなエンリ。お前の気持ちを考えねぇで、色々言っちまって」
「……」
もう、何も言えない。このままお世話になる事は心苦しい。でも独り立ちにはまだ早い。
「エンリ。冒険者のお前に依頼をする」
「え?」
「俺は今、やらなければいけない事がある。だが、俺の魔法は身体強化が主だ」
それは知っている。本でもオル様は強い魔力を持っているけど、前衛タイプだとあった。
「だが、エンリの魔法は後衛のみならず、召喚魔法で頼めば斥候などもしてくれるんじゃないか?」
確かに周囲の探索や、敵の情報とか魔法使えば出来そう。
日本の神様はたくさんいるから、もっと色々出来るかもしれない。
「俺一人じゃ辛い。レベルが低いとはいえ神の加護があるお前なら、きっと助けになってくれると思う。
…もし、嫌じゃなければ、俺と組んでくれないか?」
オル様の真剣な瞳には、怯える私が映っている。綺麗に整っているのに野生的に感じる日に焼けた顔。剣士としてもトップクラスの実力。均整のとれた逞しい身体。「美丈夫」という言葉は、きっとオル様の為にあると思う。
そんな男に誘われて、断れる女がいるだろうか。いやいない。いるわけがない。
どうしよう。どうしよう。
オル様の助けになるなら、もちろん手伝いたい。
足手まといになるだろうけど、それでも…
「エンリ。俺と組んで…」
俺の女になれ、と。
それを言われた瞬間の、私のふやけた笑顔をオル様は見ることもなく。
私は彼の鍛え抜かれた筋肉に抱きしめられ、その筋肉を存分に堪能するのであった。
そして安心した私は、そのまま意識を手放して……しまった。
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