神も人も色々とおかしい気がする
……
……リ
…エ……ンリ……
ん?オル様の声?
あの渡りの神のやつ、保護者とか言うなんて失礼な。
オル様は保護者じゃなくて、私の、えと、なんてゆーか、私の、その…
「私の!!…………あれ?」
叫んで目が覚めた。
なんか今、ものすごく恥ずかしいことを言いそうだった気がする。
あ、あぶなかった…。
周りを見回す。
外だ。
夜だ。
草むらだ。
時間はそんなに経ってないのかな?
「エンリ!!」
切羽詰まったような、泣きそうな声で名前を呼ばれる。
オル様?オル様なの?
私を…心配してくれたの?
あんなに叫んで、冒険者さん達びっくりしてるんじゃないかな?
「オルオル!!」
嬉しくなって叫び返したら「こんのっ…変な呼び方するな!」と言いながら、草むらをかき分けてオル様が現れた。
ガバッと力強く抱き寄せられる。オル様の厚い胸板に思いっきり鼻が当たった。痛い…
オル様はスピード重視の軽装備だから良かったものの、鉄鎧とかなら低い鼻が顔にめり込むところだったぞー。もぉー。
「エンリ…この馬鹿…転移魔法みてぇな感じだったから…最悪もう会えねぇと思った…」
オル様の泣きそうな声。鼻が痛いのと嬉しいのと混ざって、涙が出そうになっちゃう。
いかんいかん。ちゃんと言わなきゃ。
「心配してくれてありがとう。私、渡りの神様に会ってたの」
「何だって!?」
オル様は抱きしめていた私を一度離し、顔を真っ赤にすると毛布を体に巻かれた。
うわぁ…私ったら下着姿だったわーい…
恥辱(自爆)に悶える私をオル様はひょいと抱き上げると、そのままテントの場所まで歩いて行く。力持ちさんですね。ははは。
「神と話せたのか?」
「ステータスの事とか聞いたけど、ザックリとした魔法の説明くらいしかしてくれなかった」
あの神、なんか適当なTシャツとか着てたしな。『神ktkr』ってプリントされてたし。
オル様の嫁候補とかは…言えない。なんか言いたくない。
「だから、王都で魔法使いさんから色々教えてもらえたらいいなぁと思ったの」
「…そうか」
テントに着くと、オルさんは私を抱いたまま入っていく。
どかっと胡座をかくと、横抱きにされた。
「あの、オル殿?」
「なんだ」
「えっと、下ろしていただいても?」
「ダメだ。今日はこのまま寝ろ」
ど、どうしたんですかオル様!こんなんしたら…したら……私が嬉しがるだけですよ!?
オル様の顔を見ると、真面目な顔。眉間にシワが寄ってます。カッコ良いです。
「私重いし、疲れちゃうでしょ?」
「別に疲れねぇし。これならまた何かあっても対処しやすいからな」
一体どんな理屈だよ!と言ってやろうかと思ったけど、なんだかすごく疲れたので今日はこれくらいにしといてやる。うう…照れる…オル様が近い…にやけちゃう…
えいやと目をつむると、毛布からオル様の匂いがした。ひなたの良い匂い。くんかくんか。
よし、明日は当たり障り無さそうな魔法を試してみよう。
召喚魔法とかどうでしょう。
八百万の神が召喚できるって言ってたな。
やおよろず。
うむうむ。
……ぐぅ。
こんなんでも、オル様はデレていません。