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星が綺麗ですね

 弟が喜び勇んで、あたしにアイデア帳を見せに来た。

「やっとコンビニから脱出できたぜ。イエーイ」

などとわけのわからないことを言っている。

 まあ、ネタができてよほど嬉しかったのだろう。自分から進んで見せに来るなんて初めてのことだ。

 さっそくその場で読んでみることにした。


 『星の降る夜』


 月の美しい夜だった。

 母と子が家の前で月を見上げていた。

 ふと子供が寂しげに母親を見つめて言った。


「ねえお母さん、もう随分長い間、お父さん、帰って来ないね」

 母親は、と胸を衝かれたような表情をした。

(言えない。お父さんがもう二度と帰らないなんて、とても言えない)

「お父さんはとっても遠いところに行ってしまったの。だからなかなか帰れないのよ」

 母親が切なそうな声で答える。

「病院にいるんじゃなかったの?」

(言えない。扁桃腺の手術が失敗して死んでしまったなんて……)

「お父さんは神様に呼ばれて、お空のお星さまになったの。今はまだ帰してもらえないけど、お空の高いところからお母さんとあなたを見守ってくれているわ」

「でも、ゆうべ僕の夢に出てきて、『もうじき帰る』って言ってたよ」

 子供が真顔で反論する。


(言えない。所詮はただの夢だ、なんて)

「そう? よかったわね。だけどそれはきっと、寂しがってるあなたを勇気づけようとして言った言葉だと思うわ」

 母親は困惑しつつ苦し紛れにそう言った。

 すると、子供はニコリと微笑み、母親の手を取った。


「僕、寂しくなんてないよ。だって晴れた夜に空を見上げれば、いつだってお父さんに会えるもん。──ところでお父さんの星はどこ?」

「ああ、あの明るい星よ。──あ! おっととと、何でもないわ」

(言えない。うっかり指差しちゃったけど、あれ木星だったわ。今さら間違ってましたなんて言えやしない)


「あれ?」

 突然、子供が首をかしげた。

「どうしたの?」

「お父さんの星が二つに割れた。なんか光がこっちに来る! お父さんかも!」

(言えない。たまたま木星の方角から流れ星が飛んできただけだなんて。──にしても、マジにこっち目掛けて光が向かってきてるわね。これ、もしかして流れ星じゃないんじゃ? まさか、まさかっ! 隕……)

 思わず母親が子供を抱きしめる。矢の如く迫り来るは光の姿をした「恐怖」。

「きゃあああああ!」

「お父さんだあああ!」

 母と子の前に眩い光が広がる。

 ドガガガガーン!


 ガス爆発でも起きたかのような凄まじい衝撃と轟音。母と子は一瞬にして弾き飛ばされ、意識を失った。何が起きたのか全く理解できないまま。


 やがて目覚めた母親の前には信じがたいまでに荒れ果てた光景が広がっていた。

 母親が呆然とした面持ちで力なく呟く。

「家、ない……」


おしまい



 うん。なかなか面白かった。いつもとちょっと毛色が変わってて、新鮮だったし。

 あたしがそんなふうに感想を言うと、弟はガッツポーズをしてこう叫んだ。

「Yeah! Nice!」


続く

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