ご近所近況
最近、ご近所の山田さんの姿を朝によく見かけるようになった。再就職したのかな。会社をクビになってからというもの、平日日中からブラブラしている印象が強かったのだが。
近所の事情になぜか詳しい弟なら、何か知ってるかも。
善はいそべ焼き、っと。
「ねえ、ご近所の山田さん、再就職したって噂聞いてない?」
弟は、何を今さらという顔をした。実に憎たらしい。
「知らなかったのかよ。先月から隣町のコンピニでバイトしてるぜ」
「あんたが詳し過ぎるのよ。ほとんど学校と家の往復ばっかりの生活なのに、どうやったらそんな情報仕入れられるの?」
「ああ、クラスの女子にやたらと詳しい奴がいてね。俺はそいつから聞いてるんだ。遠藤といったらわかるか?」
「あ、あの遠藤さんとこの娘さん? あんたの同級生なの?」
「まあね。──そういや、今日聞いたばっかりの話なんだけど……」
「なぁに?」
「うちの斜向かいの井村さんの旦那、リストラされたんだってよ」
「え、どうして? 一流企業の営業職で、順風満帆だったはずなのに」
「あんまり成績が良くなかったみたいだな」
意外なことを弟が言った。
「え? なんで? あの人、切れ者でしょ?」
「いや、すぐキレる人なんだってよ」
「ヘッドハンターの最優先ターゲットだって噂も聞いたことあるわよ」
「『クビ切り』の最優先ターゲットだったらしいな」
「気の弱い部下も見捨てることなく押し上げたって……」
「気に食わない部下にミステイクをことごとく押しつけたってよ」
「安心して商談は任せておけるって、会社から信頼されまくり……」
「慢心して冗談や出まかせで逃げるって、会社に心配かけまくり」
「どんな部署でも業績を必ずアップさせたって話は?」
「とんだ不精で、業務をこなせずアップアップしてたって話だ」
「…………。──そりゃ、リストラされるわ」
「だろ」
「それにしても、うちの界隈、問題のある家ばっかりね。まあ、うちが言えた義理じゃないけど」
「そうだな」
あたしと弟は同時に溜息をついた。
「で、井村さんの旦那さん、今何してるの?」
「山田さんと一緒」
「え、ということは……」
「山田さんの務めてる隣町のコンビニでバイトしてるってさ。男二人でいい『コンビに』なってるらしい」
そう言ってから、弟はどういうわけかガックリと肩を落とした。
「また『コンビニ』から離れられなかった……」
続く




