表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
26/55

評価しましょう

 戸棚に賞味期限切れ直後のお茶菓子があったので、弟の部屋に「おやつ」として持っていく。大丈夫。弟ならばたとえ賞味期限を一週間過ぎていたとしても、お腹をこわすことなどない。


「ヤツよ」

 あたしはわざと嫌そうにそう言うと、おやつの皿をお盆ごと手渡した。

 弟が「おやつのことはヤツと呼べ」としつこいもんで、まあ、そのくらいならいいかと思いながらも、言いなりになるのも癪に障るんで、ついこんな感じに。


「サンキュ。ヤツも随分と丸くなったもんだな」

 ただのまんじゅうである。


「しかし、ヤツめ。けっこう甘いな」

 まんじゅうが甘いのは当たり前だ。

「歯ごたえのないヤツめ」

 まんじゅうだからね。


「文句はっかりなら食べなくてもいいわよ」

「いや、普通にうまいよ。この皮のパサパサ感がなんとも」

 褒めどころが全然普通じゃない。干からびかけているだけなのに。


「ところで、あんた、珍しく勉強してるかと思ったら、ノートに何書いてるのよ?」

「ああ、これか」


 弟は大学ノートに書きなぐられた、グチャグチャの模様をあたしに見せた。

「ちょっとジョークを考えててね。よかったら評価を頼む」

「何よ、それって文字だったの? 全く読めないから、自分で読んでくれる?」

「仕方ねえな」


 弟が不承不承を装いつつ、その実ちょっと得意気な感じで喋り出す。

「ハイドンと言えば、ハイ、どんな曲で有名でしょう」

「ハイドンは何も知らぬでごわす」

「鹿児島県民かよ!」


 弟はどうだと言わんばかりの顏で、あたしを見つめる。──え、評価しなきゃなんないの、これを? あたしがクスリともしなかった時点で、結果なんてわかってるはずなのに。


 どうやら言わなきゃわからないようである。

「五十点ね。『無口な借金取り』ってとこかな」

「何だよ。その譬え」

「あら、そのくらいわからないの? やっぱりまだまだね」


 あたしはニコリと笑ってこう言ってやった。

「『取り立てて、何も言うことはない』」


続く



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ