弟の立候補
ちょっとだけ昔の話をしよう。
俺はかつて生徒会長選挙に立候補したことがある。忘れもしない一年生の二学期のことだ。誕生日が四月一日という超早生まれの俺は、史上最年少生徒会長を誕生させようという面白がりの友人たちによってたかって説得され、強引に出馬させられた。
そこには学校生活を良くしようとか、行事を成功させようといったポリシーや目標は何一つない。あるのは、面白くさえあればそれでいいという無責任なスタンスだけだった。しかも、今振り返って考えてみると、「史上最年少生徒会長」のどこに面白い要素があるのか、さっぱりわからない。
いや、当時のあの連中にとっては面白かったのだろう。俺はついていけなかったが。
立会演説会での、親友の応援演説もひどいものだった。
「──若いわりには身体が大きく、柔道も小さい頃からやっているので、コワモテの人にも睨みを利かせられると思います」
無理である。あいにく俺は垂れ目のパンダ顔だ。いくら睨んだところで近所の野良猫さえ撃退できない。クラスの女子からは「いつもやさしい顏してるね」とよく言われる。
あれ? 「いつもやらしい顏」だったかな? まあ、一文字の違いくらい大した問題ではないだろう。
「──正直なところ、知識と知能の面では残念なところもあります。一学期の通知表は、なんと『1』『2』を並べる成績でした。『一、二を争う成績』じゃありませんよ。まあ、とにかく若いので将来性に期待しましょう。身長以外にもほんの少しは伸びしろがあるかもしれません。──あと、体力だけはあり余っていますから、副会長以下がしっかりしてさえいれば、いい使いっ走りになってくれることは保証いたします」
結局、俺を本気で当選させかったのか、さらし者にしたかったのか、選挙というイベントを面白がりたかっただけなのか、今となってはよくわからない。俺を選挙に駆り出した連中が、どいつもこいつもバカ過ぎて、当時の意図を完璧に忘れてしまったからだ。所詮は俺の友達。類友である。
あ、類友というのは類人猿の友達のことではない。あいつらの顔を見ていると、時々そっちが正しいような気もするのだが。
え、選挙の結果はどうだったかって?
そりゃやっぱ、「オチなかったらお話にならない」でしょ。
続く




