ニュース中継
弟と一緒にテレビのニュース番組を見ていた。
国会に向かう総理大臣にマスコミが殺到する。
「総理、このたびの一連の不祥事についてどう思われますか?」
総理大臣は無言で歩を進める。
「総理には任命責任があるはずですが? 総理、何かおっしゃってください」
「……」
「自分が任命した大臣が収賄をやらかしたのに、ダンマリはないだろ。あんた、それでも総理か!」
遂に怒号が飛び出した。パフォーマンスなのかもしれないが、敬意の伴わない追求は、聞いていてあまり気持ちいいものではない。
だが、弟は何やら楽しそうにニヤニヤとしていた。
「『あんた、それでも総理か?』だってよ。俺なら『アイム、ソウリ』って答えるな」
「総理大臣がそんな下らないダジャレ言うわけないじゃない」
マスコミの追求は延々と続く。総理は歩きにくそうだ。
遂に総理の足が止まった。
「アイム、ソウリ」
総理の口から発せられたその一言にマスコミがどよめく。
「総理が謝罪したぞ」
「なんて珍しい」
よもやダジャレを言っているとは、さすがのマスコミも想像が及ばないようである。
一方で弟は「お、本当に言いやがったぞ」と笑い転げていた。まさかの展開だ。
総理大臣は続けてこう言った。
「事件につきましては捜査が進展しましてから、然るべき対応を取りたいと思います。こちらでも本人から事情を聴取いたしますので、結論はもうしばらくお待ちください。それはさておきまして、国民の皆様にはまことに申し訳ございませんと深くお詫びを申し上げる次第であります」
しおらしげな表情で総理が深々と頭を下げる。
弟は、
「なんてシュショウな態度なんだ」
と、総理をちょっと見直した様子だった。
「ところで、当の大臣の会見の予定はどうなってるんですか? 体調不良で入院とのことですが」
「体調が悪いのは事実です。会見は当面見送りということで、代わりに私が聴取の内容を包み隠さず発表いたします」
「会見を開かないなんて、おかしいですよ。当の大臣が自ら出てきて弁明すべきだ」
その声に対し、総理大臣はゆっくりと答えた。
「大臣の話では、『不整脈がひどく、会見は見送らせていただきたい』とのことです。私が責任を持って大臣の聴取をいたしますので、どうかお任せください」
弟はそれを聞いてニヤリと笑った。
「つまり、『会見は無理。シンゾウにコタえるから許して』ってことだな」
続く




