第28話
三人を連れて行って少し経つとラルフさんが修練場に戻ってきた。
「すまんな、講習に来たのにゴタゴタしてしまって。」
そう言うとラルフさんは軽く頭を下げる。
僕とシーリスは慌てて
「ラルフさんは悪くないですよ。彼らの非常識が原因なんですから。」
そう言うと
「そう言ってもらうと助かる。さてどうする?講習は中止にしても構わんが、続行するか?」
そう微笑みながら、聞いてくるので僕は
「お願いします。折角来たのだし、教えていただけると嬉しいです。」
ラルフさんは頷きながら壁に置いていた木剣二本の内一本を僕に渡してきた。
「まず筋を見るから、それでかかってくると良い。」
自分ももう一本を取るが構えは取らず、だらんと右側に剣を降ろした無業の位。
僕は正面に構える正眼の構え。
神様がくれたのだろう剣の使い方、振り方を木剣とはいえ構えると何処を攻める、どうすると言うのが頭に浮かんでは消える。
まるでこの場で専門書や辞書を引いているかの様に見えてくる。
そうしてラルフさんを見ると流石にCランクの冒険者だけあり、何処を攻めても切り返されるようにしか見えない。
そうして空想の剣が何度もラルフさんを攻める、撃墜されるを繰り返す。
そうしていると自分の頰から一滴汗が流れ落ちる。
「どうした、来ないのか?来ないなら此方から行くぞ。」
そう言った瞬間、ラルフさんが右下からの逆袈裟で切り上げてきた。
僕は辛うじて其れをバックステップで躱すと僕はバックステップの反動を利用してバネを貯めて前に出る。ラルフさんを右から左に薙に掛かるとラルフさんはは剣を立て受ける。
受けられた反動を利用して剣を上段に跳ね上げ唐竹割りに一刀両断に振り下ろす。
ただ読まれていたの、今度はラルフさんがバックステップで斬撃を躱す。
僕は剣に土がついた瞬間、左足を一歩踏み込み下からの切り上げて追撃を行うと、ラルフさんは上段から剣を振り下ろして、僕の斬撃を止める。
僕は右手の力を緩め、左手に力を入れて、柄が斜め上、刀身が斜め下を向くようにずらし、ラルフさんの斬撃を流すと、流しながら剣左上に持ち上げ勢いを増した袈裟斬りに持ち込む。
態勢が崩れていたラルフさんは受けれないと見たのか、態勢を崩した勢いを殺さずそのまま右に転がって距離を取ると素早く起きる。
僕も斬撃を躱されると、追撃はかけずにまた正眼に構える。
「そこまで。」
ラルフさんはそう言って構えを解く。
僕もそう言われると構えを解いて剣を下げる
「凄いな、これ以上すれば本気になりそうだよ。ただ剣が綺麗過ぎる。教科書みたいな剣筋だから、まだ対応出来た。さっき俺が転がった時も追撃してこなかったな?なんでだ?」
とラルフさんは聞いてくる。
「え?訓練ですから、其処までしなくていいかなと。」
と慌てて言うと
「猪突猛進は駄目だが、もし君が盗賊等と対人戦をしなきゃいけない時はさっきのような状況なら油断はしちゃいけないが、追撃して止めを刺せ。勝てる機会を逃すな。じゃないと次に泣くのは君かもしれんぞ?」
「そうですね。ありがとうございます」
と頭を下げる。
「正々堂々じゃないと嫌か?外に出れば死んだふりや不意打ちや汚い手を普通に使ってくる。
君は仲間を守れず死にたいか?死にたくないなら戦いになれば油断せず相手を殺せ、じゃないと君か君の仲間が死ぬぞ?」
そう言うとラルフさんは顎で後ろのシーリスを指す。
僕は今度はちゃんとしっかりと頭を下げ
「ありがとうございました。」
と言う。
「で、君もやるか?」
とシーリスに言うと
「じゃ、軽く」
と、腰のレイピアを抜いた。




