第22話
シーリスの横を歩きながら街中を見る。
流石に獣人の国なだけあり、人が居ない訳では無いが、犬の耳や猫の耳がある人やフサフサの尻尾を気持ちよさそうに揺らしている人が多い。
子供達も元気に走り回り、昨日の事がなければ至って平和に見える。
そんな風に街中を見ているとシーリスが僕の横顔を見ていた。
「何を見ているの?」
不思議そうな顔をして聞いてくる。
「平和だなと、子供らも楽しそうに遊んでるし。」
と返すと
「そうね。国境に近い街とは言え、逆に言えば辺境よりは警備が厳しいからね。普通は盗賊とかも街の近くまでは居ても来ないわね。
あの連中は何処の人間かしら。」
シーリスは首を傾げながら話す。
「警備隊の人たちは当たりを付けてるけど証拠が無いから動けないみたいだね。
証拠があっても外交問題になるから単独では動けないだろうけどね。」
シーリスは驚いた顔をしながら聞いてくる
「よく分かるわね?」
僕は頷きながら、
「警備隊の人も僕らにわかるように、でも遠回しに言ってきてたからね。流石にあれだけヒントを匂わされるとね。」
微笑みながらシーリスは其れを聞いていた。
其れから少し歩き、
「着いたわよ。武具屋さん。此処で一通り揃えれるわよ。」
そう言うとシーリスはお店に入っていく。
僕もシーリスの後からお店に入る。
お店の中は所狭しと剣や槍、斧などが置かれている。
一部の武器はカウンターの後ろの壁に飾られて展示されている。
「いらっしゃい。何をお探しで?」
店員のお兄さんが僕たちに気づき声を掛けてくる。
僕はお兄さんに
「ナイフを一振りと丈夫な小手と靴。後は動きやすくて丈夫な服だけどお勧めはありますか?」
そう言うとお兄さんは僕の方をじっと見ると
「ふむ。予算は?」
と聞いて来るので
「金貨1枚で。」
と返す。
シーリスが目を向いて見てくる。
お兄さんも少し驚いているが直ぐに立ち直り、
「少し待ってな。」
と言うと店の奥に行き、五分程度で戻り
黒い鞘に収まったナイフが一振り、白銀の金属板が貼り付けられ布部分は何かの革で作られた小手と足首まですっぽりと覆う革製の靴、靴や小手に使われている革と同じ革なのだろうか革製の服がカウンターに置かれた。
お兄さんはまずナイフを取り鞘から抜くと小手と同じ白銀の刀身が姿を現わす。
両刃の刀身だが鋭く良く切れそうなのが見て取れる。
ナイフをカウンターに置くとお兄さんは
「ナイフと小手に使われているのはミスリルでドワーフが作った一品だ。
靴は外側はサーペントの革で覆っているが中にはミスリル銀を溶かして着けた糸で編みこんだ物で覆って靴の中もサーペントの革でサンドイッチにしてある。靴底もミスリルの板を弾力製のある樹脂で覆って着けているから、多少の物を踏んでもビクともしないだろ。
服はサーペントの革を舐めして縫い、内側は絹で覆っているから肌触りも良いし、なまくらの剣の斬撃程度なら切れないだろう。
合計で金貨1枚と銀貨50枚だが、まけて金貨1枚で良い。どうだ?」
僕もシーリスも驚いていたが、僕は想定していたより良い装備なのでポーチから金貨1枚をお兄さんに渡す。
一瞬お兄さんも驚くが
「毎度。メンテや修理が必要になれば持ってきな。有料だが修理も受け付けるからよ。」
お兄さんはそう言うと金貨を受け取る。
僕は素直に
「ありがとうございます。その時はお願いします。お兄さん」
とお礼を言うと
「ウォルだ。まちな、おまけだ。」
とナイフをベルトに着けるナイフホルダーを付けてくれた。
お兄さんは服と小手と靴を袋に入れてくれ、ナイフはそのまま腰のベルトに自分で着けた。
「まいどあり。」
とウォルさんが言うとお礼を言って店を出た。




