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超危険生物『のじゃー』  作者: アトリーム人
第1章 新大陸
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9話 フェリー総督の野望

 ワシは、上空の上で周辺地域に探知を行い。

 注意深く反応を窺う。

 そして今日もまた、ため息を吐いてしまったのじゃー


「むう……やはり無反応じゃのう」

「……肝心の遺跡が何処にあるかを知らないなんて、少しは覚えておけよ……」

「ぐぬぬ……そのような大昔の建造物の位置など、とうの昔に忘れてしまったのじゃー!」


 ワシらは今、本来の目的である、遺跡探しの旅へ出た。

 もう、ワシらが戦闘に参加しなくても、今は十分に反乱軍が強化されている。

 故にもう放置しても大丈夫なのじゃー。

 本来なら先住民の反撃に慌てた占領軍が、古代遺跡で発掘した兵器を使って制圧するかと思ったのじゃが……。

 随分とアテが外れてしまったわい。

 今は遺跡を本格的に探す、第二プランに移行した段階じゃのぅ。


「相手から情報を聞き出すにも……文字も言葉も理解出来なくなるとか……『のじゃー』のデリメットがデカすぎる」

「それは仕方ないじゃろう。強い力には、犠牲が付き物なのじゃー」


 のじゃー3は、未だに人と話せない事が不便と思っているようじゃ。

 ワシらは、のじゃー語を強制されてしまうので、他の言語で話す事が不可能。

 さらには、文字ものじゃー語でしか理解できなくなる。

 心身共に『のじゃー』となってしまうのじゃー。

 故に他の言語や文字を会得するのは不可能なのじゃ。

 ……まあ、オリジナルであるワシは、言葉だけなら理解ができるがのぅ

 フフフ。恨むなら、ワシの島に侵入した事を恨むのじゃな!


「そもそも、その古代遺跡には、何があるんだ? そんな、のじゃー島にとっては、危険な品物なのか?」

「そうじゃ。あれは大変に危険な兵器じゃ。大地が裂けるほどの一撃……周囲を更地へと変え、長年のも間、誰もその地へ住めなくなる毒で汚染されてしまう兵器も存在するなのじゃ」

「……それはまた大きく出たな」

「あれを撃ちこまれたら、流石に……ワシの島もひとたまりがないからのぅ。標的を先住民かワシらにしてくれればよかったのじゃが、どうやら敵も発掘しておらんようじゃな」


 古代兵器の恐ろしさを聞いたのじゃー3は、多少、驚いた表情を見せたておったが、すぐにワシと同じようにため息を吐いたのじゃ。


「はあ……敵を過大評価しすぎだったな」

「そうじゃのぅ……」


 がっくりと落ち込むワシ。

 先住民は、古代兵器の的として活躍する筈じゃったのにのぅ……。

 敵は予想を下回るほどの期待外れじゃった。

 今までの行いが、半分以上も無駄になってしまったのじゃー!



……


……………


…………………………




 ここは、占領軍の首都ワシール。

 現在は、大陸中が戦火に包まれてしまったが、この首都ワシールでは、厳重な警備で守られている為、今のところは耐え凌いでいた。

 だが、窮地に立たされているのは、変わりない。

 既に祖国へ逃げ帰る真似などできる筈がない。

 最悪の場合は、他国に亡命する手立てを考えるしかないのだ。

 だがそれは、今までに築き上げた金、地位、名誉の全てを失うのに等しく、なんとしてもそれだけはしたくはなかった。

 そしてフェリー総監は、その現状から打開する為に、祖国からの救援を求める。


「フェリー総監……ついに祖国からの魔通が届きました!」

「おおっ! ついに魔通が届いたが!」


 魔通とは、遠い地でも通信が出来るようになる通信機である。

 非常に貴重な品であり、未だに量産体制は整っていない。


 そして今、その魔通から発せられる、陛下の言葉を授かったのである。


『聞こえるかね? フェリー総監』

「聞こえますとも、エリーズ陛下。 突然の通信に、どうかお許しを……現在、我々は窮地に立たされております……どうか援軍をお願いいたします……!」

『……そちらの状況は、家臣から聞き及んでいる。随分と蛮族にてこずっているようだな』

「ええ………特に『大悪魔のじゃー』によって、我々は、甚大な被害をこうむりました。

ですから、どうか救援を……っ!」


 フェリー総監は必死だ。

 暴動が発生した当初は、そんな失態を報告する訳にもいかず、占領軍で早急に鎮圧させようとしていた。

 だが結局は、暴動が反乱へと拡大してしまい、多くの移住者が死亡する結果となり、もはや止めようがないほどに広がってしまったのである。

 そう……今まで開拓して広げた領地が、全て水の泡となったのだ。

 殆どの開拓都市が陥落され、多くの移住者が命を落とした。

 もはや、責任を逃れられないほどの大失態だ。

 そんな失態を知っているか知らずか、エリーズ陛下は、重い口を開き、フェリー提督に告げる。


『私は無能な部下が嫌いだ。その意味が分かるな?』

「……はい! 私の力が及ばずに、申し訳ありません……!」

『だが、名誉挽回の機会は、与えてやる。…………言っておくが、二度目はないぞ? 心して聞くがよい』


 その言葉を聞いたフェリー総監は、歓喜の表情を浮かべる。

 一度目の失敗は、見逃してくれる。

 つまりは、援軍が来る可能性が高いという事である。

 ダイクロス帝国の軍隊とS級ハンターさえ来航してくれれば、我々が勝てる可能性が高い。


「有り難うございます! エリーズ陛下のご慈悲に感謝を!」

『このパンゲア大陸で死ぬまで戦え! これは、私直々の命令だ!』

「………なっ!?」


 プルプルと震え、思わず愕然としてしまう。

 それは、つまり……援軍が送られてこない事を意味していた。


「えっ? あ、あの、恐れ入りますが……救援は、来てくださるのでしょうか……?」

『二度目は無いと言っただろ? 自分の責任ぐらいは、自分で支払え………それに私は知っているのだぞ? お前がこのパンゲア大陸で私の支配から逃れ……新たに独立宣言しようと企んでいた事を!』

「……なっ! なぜそのようなご冗談をいっておられるのですか! 今は、協力し合い、下等なる蛮族を倒すべきです!」


 その裏切り者と名指しされるような宣言を聞いたフェリー総監は、脂汗をかき、かなり動揺をしてしまった。

 その裏切り行為は、紛れもない事実であり、よりにもよって、エリーズ陛下に筒抜けだったのである。


 パンゲア大陸は、広大な広さを持つ土地である。

 大方の統治を完了させたフェリー総監には、密かな野望があった。

 自らが王となり、この大陸を支配して、いずれは世界へ進出しようと企んでいたのである。

 そのために、自らがパンゲア大陸の統治をするのに名乗り上げ、フェリー財閥の莫大な資金を使って、パンゲア大陸の全てを支配しようとした。

 もちろん、その野望に気づかされない為に、様々な工作を行い、上層の軍部の殆どがフェリー総督の味方となっている。

 そして対先住民の占領軍としては、過敏ともいえるほどの軍備を整え、クローネ人以外の移住者も労働者の不足を理由として大量に受け入れた。

 そう……軍事力さえあれば、この遥か遠い地である大陸にわざわざ攻めてくる事など不可能だからである。

 先住民の抵抗も無くなり、もはや列強国の侵略に抵抗出来るほどの戦力も手に入れた。

 後もう少しで、正式に独立宣言を行おうとしたのである。

 そしてその矢先に、先住民の反乱が大陸各地に発生してしまい。さらには、のじゃー島で引き籠っていたはずの『大悪魔のじゃー』が先住民の味方となり、占領軍に襲い掛かったのだ。

 たちまちと窮地に陥ったフェリー総督は、もはやパンゲア大陸を統治する機能が殆ど失われてしまったのである。


 フェリー総監の野望が完全に潰えた。

 今では生き残る事が先決であり、もはや建国をしようとするなどの野望は、既にフェリー総督の頭の中にでは、消えていた。


『今回の企みの事は、目を瞑ってやる。だがこれは、お前が招いた責任だ。それにバロンズ帝国と内通していた貴様なら知っているだろ? 我々はその大陸に援軍を送れるほどに、余力を残していないことを……』

「……っ!?」


 祖国であるダイクロス帝国には、今、戦乱が引き起こされていた。

 多くの植民地を手に入れ、列強国の軍隊が南の大陸へ向けて、植民地の奪い合いで、お互いに潰しあっていた隙に、クロス大陸の東の殆どを支配に収めている、バロンズ帝国と、その傘下に入った複数の王国が、列強国に宣戦布告をしたのだ。

 本来、バロンズ帝国とは不可侵条約を結んでいて、お互いに侵略する事が禁止にされていた。

 そして、有数の大国へと成長したダイクロス帝国や列強国に戦争を挑むとは、流石の列強国も、考えてすらいなかったのである。

 今まで長い間、バロンズ帝国が大人しかった理由は全て、この為の布石だったのだ。

 事前に準備をしていたバロンズ帝国は、電撃的な侵略を行い、既にダイクロス帝国の盾としての役割があった、同盟国であるミケール王国が滅ぼされてしまった。

 故に援軍を呼べる余裕などある筈もなく、本来ならフェリー総督がダイクロス帝国に援軍を送る筈だったのだ。

 だが、バロンズ帝国との内通や、この大陸で独立を企み、新たな国を建国しようとしていた時点で、ダイクロス帝国に援軍を送るつもりなど更々なかったのである。


 ……しかし、本当に援軍を送る余裕がなくなる事までは、フェリー総督も予想はしていなかった。

 むしろ、こちらの占領軍が存亡の危機にさらされてしまい、その最悪なタイミングで戦争を仕掛けたバロンズ帝国に、思わず怒りが込み上げてくる。


『……では、話は以上だ。後はお前達でなんとかするんだな』

「ま、待ってください! エリーズ陛下! どうかご慈悲を……!」

 

 このままでは、占領軍が壊滅する。

 その危機から逃れられるために、必死で祈願したのが効いたのか、通信が途切れようとした時、再びエリーズ陛下の声が響き渡る。


『ふん……つくづく足を引っ張る奴だな。……だが一つだけ良い情報を教えてやろう。首都ワシール街の地下を掘れ。その古代兵器を使えば、もしかしたら戦況をひっくり返すかもしれぬぞ?』

「そ、その古代兵器とはなんなのですか!?」

『私には知らぬ。……ある占い師が、その地下には、「国を滅ぼすほどの古代兵器が眠っている」と、証言されただけだ。私は只の戯言として、その話を流したがな。…………どうだ? 希望が持てたか? まあ精々、その戯言を信じて、穴を掘るのだな。……ふはははははは!!』


 その高笑いを最後に、エリーズ陛下との通信が途絶えた。

 辺りは、静まり返っていた……誰もが絶望してしまったのである。

 我々は、祖国から見捨てられたのだと……。

 もはや救いは、残されていない。

 死兵となり、最後まで抵抗するしか道が残されていなかったのだ。



 だが……一人だけは、絶望してはいなかった。

 それは唯一、反乱軍を殲滅し、あの『大悪魔のじゃー』を仕留める事が出来る古代兵器が、この首都ワズールに眠っている情報を授かったからである。

 その情報が偽りだったとしても、今は退路を断たれ、袋の鼠と化したフェリー総督にとっては、希望でもあり、その賭けを乗り出すしかなかった。


「……皆の者、よく聞け。今、我々は窮地に立たされている。これは、紛れもない事実だ! 故に私は、エリーズ陛下殿の助言から授かった、この街の地下に眠っている古代兵器を信じようと思う。皆に異存はないか……?」

「……はい! 我々も異存は、ありません! 全住民の力を借りて、この街の地下を掘り上げましょう!」

「オレも陛下の助言を信じます! 国を滅ぼすほどの兵器なら……あの『大悪魔のじゃー』も殺せる筈です!」


 フェリー総督は、揺るぎない程に、真剣な表情をしていた。

 そう……彼は、完全に占い師の情報を信じているのである。

 それを感じ取った家臣たちも、それに賛同する。

 今の彼らに残された最後の希望が、それしかないのだから…………。


 そして今、フェリー総督が率いる。

 占領軍の反撃が始まろうとしていた。



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