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超危険生物『のじゃー』  作者: アトリーム人
第1章 新大陸
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8話 のじゃー無双

 占領軍が結成した討伐軍は侵略を開始してから、初めての危機に直面していた。

 それは、たった数百足らずの奴隷たちによる奇襲。

 司令官は、奇襲を受けてしまった現実に、受けられないほどに動揺をしていた。


「馬鹿な……家畜如きのどこに、背後から突つくような策などを思いつくのだ! こんな事は、あってはならない……! こんなのは、何かの間違いだ!」

「で、ですが……その家畜どもは、次々と崖から駆け下りています! このままでは、後方部隊が危険です!」


 その知らせが聞いた時には、すでに崖の上から突如として先住民達が一斉に駆け下りてた後であった。

 そして、その奇襲した敵軍の数は200人、または、以上の数で攻めてきた。

 下等生物の家畜でしかすぎなかった、奴隷の奇襲。

 行軍中だった為、殆どの兵士が戦闘準備を全くしておらず

 不意打ちを打たれた形となってしまった。

 そして……辺りは、一気に乱戦となり、同士討ちなどが発生するほどに大混乱に陥ったのである。

 『のじゃー』の奇襲は、成功したのだ。


「くそ、! 隊列を乱すなー! 相手をよく狙え! 複数に囲んで一気に仕留めるのだ!」


 数はこちらが上。

 だが、後方の魔術師部隊が殆ど殺されてしまったのが痛い。

 魔術師部隊には、傷を回復させる貴重な治療魔術師もいたのだ。

 相手の士気は、予想以上に高く、先住民の戦闘力が予想以上に強い。

 さらには、暴れている先住民よりも目立つ人物が存在していた。

 神秘的な白いワンピースを着ている銀髪の少女。

 可愛いい魔法少女の衣装を着ている金髪の少女。

 戦場には、場違いな可愛らしい少女の二人が戦っていた。

 誤報ではなく、実際に戦っていたのだ。

 それも……圧倒的なる力を持ちながら……


「に、逃げろー!」

「こ、こっちに来るなああああああ!」

「のじゃー」

「のじゃのじゃ!」


 敗走して逃げる兵士に『のじゃー』が手を触れてしまうだけで、いともたやすく爆散する。

 返り血すら浴びてすらいない程、鮮やかに命が奪われてしまう。


「一斉に槍を突き立てろー!」


 それでもあきらめる事もなく、複数の兵士で取り囲み、銀髪の少女に鋭い槍で一斉に突き刺さそうとする。

 だが……その兵士達が一斉に『のじゃー』に槍を突いた途端、その槍は砕かれた。


「のじゃー」

「ひいぃ! あ、熱い……誰か……! た…け…」


 さらには、槍を突き立てた兵士が突如として燃え始め、もがき苦しみながら兵士が倒れた。

 密かに唱えられた魔術を使って、周辺の兵士は、一斉に灰へと変わったのである。

 『のじゃー』に、接近戦で勝てる討伐軍はいない。

 彼女からしたら、小さな蟻を踏み潰すようなモノだからだ。


「くそっ……! 化け物め! これでも食らえー!」


 一人の兵士が遠距離から『のじゃー』に向けて、火縄銃で狙撃を開始する。

 彼は、狙撃手としては、高い腕前を持ち、彼の火縄銃は、狙撃専用の特注品として、改造を施した。

 威力は、普通の火縄銃よりも貫通力があり、一撃で仕留められる腕前を持っている。

 今、その狙撃手は、引き金を引いた。

 魔法少女の衣装を着ていた『のじゃー』の頭上に向けた弾丸を……。


 「のじゃ?」


 だが、『のじゃー』は、その銃弾を目に見えないほどに、素早く素手で受け止められ、さらには、その狙撃した人物に弾丸を投げ返えされてしまう。

 そして投げられた弾丸が、狙撃手の頭に命中し、何が起こったのかもわからずに地面に倒れ伏せ、そのまま息を引き取った。


 遠距離からの魔術や火縄銃の狙撃でも、『のじゃー』にはかすり傷すらつけることが出来ない。

 むしろ、その放った魔術や火縄銃の弾が跳ね返り、逆にこちらに襲い掛かって来る始末だ。

 そして……未だに2人の少女に傷つける事が出来ない討伐軍たちは気づき始める。

 一体どうやったら、あの少女を殺せるのだ?

 我々は、とんでもない化け物を敵に回してしまったのではないか……?


「のじゃ!」

「のじゃ? のじゃー!」

「皆の物! 女神のじゃー様の後に続けぇ! 女神の加護を授かった我らの力を……魔族に思い知らせるのだ!」


 『のじゃー』が先陣を切って無双してくれるおかげで、先住民の士気はさらに上がり、彼らもその後に続く。

 そして……先住民の奮闘も凄まじく、一騎当千の活躍をしていた。 

圧倒的な蹂躙。質も数も勝っていたはずの討伐軍は、奇襲の不運も重なり、一気に劣勢に追い込まれ、気が付けば、辺りの兵士は続々と敗走してしまった。


「本当に幼い少女が戦っているじゃないか……しかも、あんな化け物だったなんて、聞いてないぞ……!」


 半信半疑だった司令官も、その現場を見られては、認めるしかない。

 たった2匹の『のじゃー』が討伐軍を次々と虐殺していたのである。

 その小さな少女の身体には考えられない力。

 恐怖を感じるほとに巨大な魔力を感じる小さな少女。

 それではまるで……


「お、おい……まさかあいつは、あの……っ!」

「のじゃー!」


 司令官は、その言葉を発したのを最後に、永遠に意識を失った。


 『のじゃー』が仕留めた、最後の敵将を討ち取った事で、先住民達は一斉に歓声が広がる。

 グリモア鉱山の奴隷たちは、この時をもって、奴隷から解放されたのだ。

 そう……ついに、反撃する時が来たのだ。

 救いの女神がもたらすした奇跡によって……


………………


………………………………


……………………………………………………



 その後……奴隷として働かされた先住民は次々と開放され、この最初の暴動を契機に、パンゲア大陸各地で暴動が再び引き起こる。

 占領軍は直ちに鎮圧を試みるも、『のじゃー』のパワーブーストで強化された先住民の力は予想以上に強く、占領軍は苦戦を強いられるていた。


 そしてまた今日も、『のじゃー』と反乱軍が、とある駐屯基地に忍び寄っていた。

 指揮官は、仁王立ちをしている2匹の『のじゃー』にゆっくりと近づき、リーダ各の『のじゃー』である、銀髪の少女に話しかける。

 ついに、開戦が始まるのだ。

 

「のじゃー様……準備がと問いました。いつでも行けます!」

「のじゃ!」

「のじゃー!」

「オレ達には、のじゃー様が付いている! のじゃー様に続けぇー!」


 『のじゃー』もいつでも行けるという表情で、反乱軍の指揮官に、自信に満ちた表情で反応する。

 そして『のじゃー』は、自身と反乱軍にステルスの魔術を解き、一斉に占領軍の前から姿を表す。

 突如の敵襲に備えていた占領軍は、いち早く対応を試みようとするが、その2匹の『のじゃー』を見た時、辺りの兵士は顔面蒼白となり、一気に恐怖へと変わってしまった。


「お……おい、あれって、まさか!?」

「の、のじゃーだー!」

「い、嫌だ……オレはまだ死にたくない……オレは逃げさせてもらうぞ!」



 その可憐なる美少女である2匹の『のじゃー』を見ただけで、占領軍がたちまちと逃走を開始してしまう。

 彼らは、知っている。

 あの『のじゃー』は、のじゃー島で生息していた筈の……S級の化け物だと。

 どうやって先住民が、あの化け物を味方につけれたのかは、わからない。

 だがはっきりと分かる事がある。

 この『のじゃー』は、移住してきた我々を容赦なく皆殺しにするのだ。

 それは、可愛い外見とは裏腹に、殺戮を楽しむ悪魔だ。

 そして今日も『大悪魔のじゃー』は、ニヤニヤと笑いながら殺害を繰り返している……。


「こ、こっちに来るな! うわあああ!」

「のじゃー」


 逃走する兵士に容赦なくトドメを刺す。

 神々しいほどに美しい姿をした銀髪の『のじゃー』は、一切の返り血を浴びる事もなく、鮮やかな手さばきで、逃げ惑う兵士を次々と殺していく。


「ひいい! 許してください! 僕には家族がッハ!」

「のじゃ?」

 

 怯えて泣き、命乞いをしている兵士は、人の言葉が理解できなくなってしまった『のじゃー3』には無意味である。

 可愛らしい外見をした魔法少女の服を着ている『のじゃー3』も容赦なく占領軍の兵士を殺害した。


 そしてまた一人、また一人、『のじゃー』に殺された兵士が続き

 反乱軍もそれに乗じて一気に蹂躙を開始した。

 開戦が始まって、たった数分で、辺りは掃討作戦に移行してしまったのである。

 既に駐屯基地としての機能は、失われたのだ。


「のじゃのじゃ、のじゃー」

「のじゃー!」


………


………………


……………………………



 その後も、意図的に先住民の暴動を発生させた、二匹の『のじゃー』は大陸各地へと暴れる。

 標的はこのパンゲア大陸に訪れた異民族……

 たった二匹の『のじゃー』によって甚大なる被害を浴びた占領軍は次々と撤退していく。

 そのあまりにも人間離れをした力と、無慈悲なる殺害を繰り返す悪魔。

 占領軍は『大悪魔のじゃー』と恐れられ、只の少女の姿を見ただけで怯え、脱走する兵士が続出する始末である。


 だが先住民は、この少女を女神として祀った。

 彼らの守り神であった龍神を失い。

 失意のどん底であった先住民に新たな神が舞い降りたのだ。

 その名は……『女神のじゃー』

 侵略者にとっては、悪魔のような存在でも、先住民にとっては、その美しく、可愛らしい姿は、まさに神として等しい存在だ。


 故に先住民達も「のじゃー」と叫ぶ。

「どうか我々をお救いください……」そのような願いを込めて。


「のじゃのじゃ? のじゃー!」

「のじゃー」


 二匹の『のじゃー』は、そんな先住民に信仰され始めたのを知る筈もなく

 ただひたすらに、愚かな侵略者たちを血祭りにあげた。


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