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超危険生物『のじゃー』  作者: アトリーム人
第2章 帝国編
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26話 終戦

「ふう……。やっと粗方は片付け……って、あれ?」


 のじゃー島で死闘を繰り広げていた『のじゃー3』。

 侵入者であるワカハゲ軍がその場で停止した。

 突然の出来事に思わず驚く。

 

「ハ、ハゲー……」

「ハゲ! ハゲェ……」

「ハゲー!」


 次々ともがき苦しみながらハゲと鳴いて、ワカハゲの軍団が消滅したのえある。

 『のじゃー3』は、消滅させるような魔術を使ってはいない。

 だが少女は、ニヤリとほほ笑む。


「……やれやれだぜ。やっと敵の親玉を倒したか。今日は本当に疲れた……」



 戦いの余波で、複数の船が沈んでしまったが、『のじゃー3』は、特に気にしてはいない。

 今は戦いで疲れた身体を休み、ゆっくりと眠りたい。


「ふわぁ……あー眠い」


 眠たそうにふらふらとのじゃー島へと帰る『のじゃー3』。

 彼女の戦いは、突如として終わりを告げたのである。


 ……………………


 ……………………………………


 ……………………………………………………



「【のじゃービーム】なのじゃー!」

「ハ、ハゲー!」


 両手から放たれた光線は、不意を突かれた周辺のワカハゲ軍は、真面に直撃する。


「あれ? おかしいのじゃー? この程度では蒸発しなかった筈なのじゃが」


 異常な耐久力を持っていたワカハゲ軍団は、この程度ではまだ倒せない筈である。

 それなのに瞬殺されてしまった事に疑問に思っていた。

 そして次々と謎の悲鳴を言いながら消滅してしまうワカハゲ軍達。

 不思議に思った『のじゃー2』ではあるが、すぐにそんな疑問などを考えずに、彼女は位置も通りに対応をする。



「まあ、倒したのじゃから、結果オーライなのじゃ! 邪魔者も片づけた事じゃし、そろそろ皇女様の護衛に戻るのじゃー!」


 のじゃー2は、アルテリス女帝の元へと向かう。

 それこそが、『のじゃー』に命令された任務であり。

 彼女は、今日もウキウキしながら『のじゃー号』へと帰って行った。



「陛下様! やりましたぞ! 敵軍のが次々と撤退していきます! 我々は、勝ったのです!」


 『のじゃー号』から、その消滅するワカハゲ軍の様子を眺めていたアルテリスは、只々その様子を見つめていた。

 少女の長い戦いが終わりを告げた瞬間でもあったのである。


「そうじゃ。 父上の暴走から始まった今回の戦争がやっと終戦するのじゃ……」


 アルテリスは、そう確信しながら言い放った。

 ダイクロス帝国と連合軍は、切り札のワカハゲ軍を失い、既に撤退を開始している。

 お互いに自国内は荒れてしまい、戦争を続けられる戦力は残ってはいなかった。

 だが、今の彼女には、切り札が存在している。

 それがある限り、交渉は有利に進める。


『のじゃ!』


 急に空から『のじゃー号』の近くに飛来したのじゃー2.

 その表情は、何かを伝えているように感じていた。


「あれは、なんと言っておるのじゃ?」

「多分、入口を開けろとおっしゃっているのでしょうな」

「そうか。ならば歓迎させねばならぬ。彼女こそが、妾の国を救って下さった……救いの女神様なのじゃ」


 

 ……………………


 ………………………………


 …………………………………………


 一筋の魔石がパリンと割れた。

 それは、ワカハゲに授かったモノであり、もしもの事態になった時に知らせるアイテムである。


「……逝ったか。ワカハゲの予言は、最後の最後で外れてしまったようだ」


 ワカハゲは、もしも敗北した時の道までも用意していた。

 今のアルテリス女帝は、クロス大陸の全てを支配する野心は持っておらず、停戦協定を結べば、ダイクロス帝国の存亡は守れると予言していた。


「これで自国に寄生していた膿は全て吐き出した。まあどちらにせよ、私にとっては都合の良い運命であった」


 極度な選民思考を持ちながら、自身は怠けモノが多かった貴族達。

 腐敗していた軍部や貴族達は、今回の戦乱に乗じてワカハゲ化による粛清をおこなった。

 これは、長い間、自国を疲弊させた人物達であり、後は、皇帝に忠義を誓う配下だけが残ったのである。

無能な家臣は、要らない。

 実力主義こそが繁栄の道だと信じていた皇帝はそれに突き進む。

 それこそがエーリス皇帝の思想であり、憂鬱となる存在を排除した事で、今まさにその政権が始まろうとしていた。


「暗部達よ! 居るか!」

「ハッ! 只今駆けつけて参りました」


 天井の黒い穴から、突如と現れた複数の護衛達。

 彼らは、古くから皇帝を守護する一族の末裔であり、様々な任務をこなすスペシャリストである。

 そんな護衛に、皇帝は指示を与える。


「停戦の使者を送れ。今のバロンズ帝国ならば、戦争を終結させられる筈だ」



 こうしてダイクロス帝国とバロンズ帝国側の思惑と利害が一致した。

 数日後には、停戦の交渉の為にには各国の主要な人物が集まり、戦争の終結が宣言されたのである。

 殆ど利益を得られる事もなく、多くの犠牲者を出してしまった今回の戦争。

 侵略を開始した戦犯であるバロンズ帝国には、悪魔に乗っ取られた言い訳と『女神のじゃー』を護衛に付けて威圧した事により、今回の交渉で大きく有利に進める事が出来たのである。

 列強国は今回の戦争により、大きく衰退してしまい、もはやかつての全盛期の面影はない。

 今は、国力を再び回復させる事が重要であり、多くを植民地にしていた南の大陸を維持する力が残されていなかった。



 そして、無事に停戦協定を結び、帰路へと帰っていく使者の一団。

 老魔術師は、今回の交渉で一段落した後、アルテリス女帝に話しかけた。


「終わりましたな」

「そうじゃ。」


 新しく即位した女帝アルテリスは、そう頷いた。


「妾は、今回の出来事で、多くの事を学ばせて貰ったのじゃ。そうじゃろう? 女神様」

「のじゃ!」


 やさしく微笑えみながら振り向いたアルテリス女帝に、護衛をしていた『のじゃー2』は、そう言って、元気よく返答をした。


 これほどに心強いは味方は居ない。

 『のじゃー』が居てくれたおかげで悪魔は滅び、亡国の危機からも救われた。

 その恩はどうやって返せばいいのかが分からないほどの、活躍をしたのである。


 バロンズ帝国の復興はこれからである。

 アルテリス女帝の政権は、まだ始まったばかりなのだ。







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