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超危険生物『のじゃー』  作者: アトリーム人
第2章 帝国編
24/27

24話 のじゃー達の戦い

 のじゃー島には今、最大の危機が訪れようとしていた。

 あまりにも大きなプレッシャーを大量に感じた『のじゃー3』は、思わず隠れ家から勢いよく飛び出して、この島に近づこうとしているたくさんの群れを観察した。


「うわ……なんなんだ? あの薄気味悪いハゲのおっさん達の集団は!?」


 のじゃーアイから確認されたのは、大量のおっさん達が、次々とのじゃー島へと向かっている姿であった。

 その見た目に反して、恐ろしいほどの強さを感じ取った『のじゃー3』は、思わず冷や汗をかいていた。


「ふう……。のじゃー島の姿を隠すイリュージョンが開発済みで助かったぜ。あんな大量の相手との戦闘なんかしたら、のじゃー島が木端微塵に破壊されてしま所だったわ」


 幻影の魔術であるイリュージョン。

 それは、のじゃー島を中心として広範囲に姿を惑わす魔術であり、あの集団たちは、未だにのじゃー島を見つける事が出来きていない。

 その証拠に、広範囲に周囲を旋回しながら上空をおっさん達が飛んでいたのである。

 だが、いつまでもイリュージョンで惑わす事は不可能である。

 そして『のじゃー3』は決断をする。

 あの集団をこの手で殲滅を開始するのだ。


「のじゃー島は、なるべく発見されたいようにしなようにしないといけないな。……オレに注意をひきつけさせるしか方法がなさそうだ。……よし、飛ぶか!」


 『のじゃー3』は、バレナイように慎重に幻影で姿を隠したまま【フライ】を唱えて空を飛出し、ウロウロしている一体のおっさんに急接近をして、不意打ちを仕掛けた。


「どりゃあああああ!」

「ハ、ハゲーーーーェ!」


 のじゃー3が勢いよく全力の拳で顔面を殴られたハゲたおっさんは、そのまま海に落とされ、大きな水柱を浴び、海の底へと沈んで行った。


 だが、その衝撃によって、薄毛のおっさん達がいっせいに『のじゃー3』へと視線を向けた。


「ハゲ!?」

「ハゲハゲ!」

「ハゲー」

「ハゲ?」


「……のじゃーの親戚か何か?」


 ワカハゲ語でしか喋られなくなった、哀れな薄毛のおっさん達。

 ハゲハゲしか言わないその異様な存在に、只々唖然としていた。


「まあいい。例え異常な戦闘力を持つハゲが多人数で襲い掛かったとしても、この天才魔術師であるオレには、絶対に勝てない。のじゃーに授かった力を、思う存分に試させてやるぜ!」


 無数の薄毛のおっさんに怯みもせずに魔術を発動させた『のじゃー3』。

 彼女には、あの時のような恐怖はない。

 その大切な仲間のお願いされたのだ。

 島を守る事こそが、今の『のじゃー3』にとっては最重要の任務であり、仲間を裏切る真似なんてしたくはなかった。

 故に恐れなどない。


 そして、一斉に襲い掛かって来る、ワカハゲの群れ達に、『のじゃー3』は、一番の得意魔術を唱えた。


「食らえ! スーパジャッジメント!」

「ハ、ハゲーーーェ!」


 大量の光の柱を出現させても、尚も止まらないワカハゲ軍。

 多くのワカハゲ軍がこの光の柱に直撃を食らい、一部のおっさんは、その攻撃に耐えきれずに消滅してしまう。

 だが、決して『のじゃー3』に怯んではいない。

 それは、ワカハゲの命令を忠実にこなす、ただの傀儡に、恐れなど無いのである。


 高速で旋回しながら移動で攻撃を繰り返しているものの、数が多すぎて対応できない『のじゃー3』に一匹のハゲが近づく。


 「【ワカハゲフラッシュ】!!!!!」

 「うおっ! 眩しい!」


 至近距離で薄毛の額に大きく輝きだす【ワカハゲフラッシュ】を唱えた。

 これは本来、対悪魔用に開発された技でもあるが、目くらましの効果もあり、一時的に、相手の動きをけん制する事も出来るのである。

 驚異的な耐性により、失明する心配はないものの、まともにその光を浴びた『のじゃー3』は、目を開けるのが困難となってしまった。


「ハゲハゲー!」

「「「ハゲー!」」」


「くそっ! 数秒間だけは、目が使えなくなったか……流石に、この大人数とやり合うのはキツイぜ」


 複数のハゲが、目つぶしをした隙に、一斉に空中から突進をして、『のじゃー3』に襲い掛かる。

 その様は、実に連携を取れた戦いであり、対『のじゃー』戦を熟知した戦い方をしていた。

 目が見えなくなったとしても、のじゃー探知によって、ある程度は感覚を得る事でその突撃を回避するが、避けきれなかった、薄毛のおっさんの蹴りをモロに脇腹へと食らう。


「……ぐっ!」


 勢いよく海へと落下しそうになる『のじゃー3』。

 だが途中で停止して、相手の攻撃を備える。


「やっと目が見えるように……って、またかー!」

「「「「「「【ワカハゲフラッシュ】」」」」」」


 再び複数が発動させた【ワカハゲフラッシュ】。

 その眩しさは、さっきの倍以上の明るさが広がっていた。


 普通なら失明してしまうほどの強烈な光。

 だが、何度もその技を食らうわけには、いかない。

 『のじゃー3』は、黒く変色させた【のじゃーバリア】を展開させて、光を最小限に遮断させる。


「なんて輝きだ……光を遮断しきれてねえとか、厄介な相手だぜ」


 【のじゃーバリア】を展開させた隙に、何やら大規模な魔術を唱えようとするワカハゲ軍団。

 のじゃー3もその危機感を感じとり、急いで高速でその場へと近づき、できる限りのワカハゲ軍団の連携を阻止する。


「やれやれ……。かなりの長期戦となりそうだ」


 大勢のワカハゲ達を葬っても、続々と後方からワカハゲの集団が飛来するのを感じ取る。

 『のじゃー3』の戦いは、まだまだ続く。



 …………………


 …………………………………


 …………………………………………………………………



 ここは首都イスタルから距離が近い、見晴しのよい農地と平原が広がる大地。

 そこには、不気味なハゲのおっさん達とは場違いな少女が佇んでいた。

 たった一匹の少女が、襲い掛かって来るワカハゲ軍団の足止めをしていたのである。


「ハゲー」

「ハゲハゲー」

「「「「ハゲ!」」」」


「うわーん! きりがないのじゃー! 数が多すぎるのじゃー!」


 大量に襲い掛かって来る薄毛のおっさんの前に、『のじゃー2』は悲鳴を上げていた。

 殺しても殺しても、次々と現れる不気味なおっさん達。

 異常な程に強いおっさんに、『のじゃー2』は、苦戦を強いられていた。


「そろそろ休憩をしたいのじゃ! 気持ち悪いウスゲマン達は大嫌いなのじゃー!」


 突撃してくる薄毛のおっさんに、空間を切り裂くような次元斬の一撃を薄毛に繰り出すものの、数人はそれを避けて、のじゃー2へと接近する。


「ハゲー!」

「切っても切っても再生するのじゃー! 薄毛のおっさんだらけで怖いのじゃー! さっさと消えるのじゃー!」


 近づいてきた一体を殴り飛ばして、態勢を再び整えだす『のじゃー2』。

 そして切られて倒れた筈のおっさん達は、瞬時にその場から再生させて、のじゃー2へと襲い掛かる。 

 大多数の薄毛のおっさん達は、帝都イスタルを無視して、『のじゃー2』を標的にしている。

 それは、ワカハゲが『のじゃー』達を仕留める事の出来る唯一の機会でもあり、その任命には決して逆らう事は出来ない。

 そして適当に敵軍を釣ろうとしてた『のじゃー2』は、予想以上に大量のワカハゲ軍を釣ってしまったのである。


「こうなったら私も戦闘形態を変えるのじゃー! 斬撃が効かないのなら、全ての肉体を消滅させる術を使うのじゃー!」


 そんな『のじゃー2』が多人数のワカハゲ軍と戦っている時、アルテリスもまた、帝都イスタルを守る為に、軍団を率いて、帝都を守っている。




 帝都イスタルを守っている、『のじゃー2』とは反対側にも、大勢の敵軍が攻めようとしていた。

 そんな時、一筋の光線がワカハゲ軍に襲う。

 その光線は、敵軍に命中し、大きな大爆発を起こしたのである。




『皆の者! 妾に続けー!』


「「「うォォォォ!!!」」」


 『のじゃー号』の主砲で発射されて、大勢のワカハゲ軍と連合軍が損害を浴びた隙に、大勢の白い翼を広げた兵士達が叫びながら一斉にその跡地へと突撃を開始した。

 辺りは一気に乱戦へと持ち込んだのである。


 のじゃー2から頂いた強化魔術であるパワーブーストと悪魔の力。

その二つが合わさる事で、帝都に住まう兵士達は、驚異的なまでの戦力を発揮していたのである。

 新しく名づけられた部隊名は、天使部隊。


 制空権は天使部隊とのじゃー2の許可をもらって『のじゃー号』を操縦するアルテリス女帝が制す事で、この戦いを有利に進める事が出来るのだ。

 しかし、ワカハゲ軍と連合軍も無論、これを許すわけにはいかない。

 激しいぶつかり合いは、さらに激しさを増した。



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