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超危険生物『のじゃー』  作者: アトリーム人
第2章 帝国編
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14話 のじゃーと少女

「……で、その捕獲した少女は、どうする気なんだ?」


 謎の少女をワシの地下室の空き部屋に保護をした後、ワシは仲間達を集め、この少女をどうすかの議論を始めたのじゃ。

 まるでワシがこの少女を誘拐したかのようにジド目になっている『のじゃー3』と、ウキウキとワシを見つめる『のじゃー2』。

 ワシは、この少女の処遇をいち早く伝える事にしたのじゃ。


「侵入者には、のじゃーウイルスを注入するのじゃ。慈悲はないのじゃー!」

「やったのじゃー! また仲間が増えるのじゃー!」


 どうやってこの島に転移したのかが気になるのじゃが、ワシは、情報を聞き出すのが面倒になったのじゃー。

 なので、さっさとのじゃー化にさせる事を選択したのじゃ。

 じゃが、のじゃー3は、ワシを疑いをかけるような目つきで睨みつけておった。


「……で、その『のじゃーウイルス』の生存率は?」

「………な、内緒なのじゃ!」

「つまりそれは、生存率が低いと自白していると言っても言い訳だな?」

「そうなのじゃー! 私とのじゃー3は特別だったって事なのじゃー!」


 いかん、どうやら生存率が限りなく低い事が、のじゃー3にはバレバレじゃったようなのじゃ……。

 むぅ……まあ、ワシ以外で生存者が2人しか居ない時点で、確信しておったのじゃろぅ。

 ワシは、その問題点を切り出し、新たにのじゃー3を問いかける。


「では、どうするのじゃ? この少女の面倒を見るとかぬかしおるのではないじゃろうな?」

「せめて情報を聞き出すまでは、我慢しろよ。何か事情がある筈だ」

「じゃからと言って……」

「子どもの面倒を見るのじゃー! 嬉しいのじゃー!」

「……はあ、もう勝手にするがよい!」


 のじゃー2までもが、話に流れるまま、この少女の面倒を見る事に喜んでいるようじゃ。

 2対1になってしまったのじゃ……ぐぬぬ! 主に刃向うとは、なんたる事態なのじゃ!

 まあ、イエスマンしか言わない人形のような部下よりは、こうして議論を出来る分は、合格点じゃな。

 ワシは、ため息をつきながら、すたすたと、未だにベッドに眠っている少女の姿を確かめた。

 その青白く描かれたドレスの模様は、非常にきらびやかであり、可愛い少女の姿も合わさって、まさに可憐な姿をしていたのじゃー。


「うむ! 実に豪華な衣装じゃわい。ワシが着ている『のじゃーワンピース』に負けておらん出来じゃのぅ」

「あっ! そうだ、一つ気になる事があったぞ」


 のじゃー3は、何かを思い出したかのように、ワシに話しかけてきた。

 何やら重要そうな情報でも得られた様子なのじゃ。


「このドレスの右腕に描かれている白い翼みたいな模様……これって、バロンズ帝国の家紋じゃないか?

しかもこれって、皇族が着るようなドレスだぞ……」

「つまりお主は、この少女が皇女様だと言いたいのかのう?」


 のじゃー3は、ワシの問いに、素早く頷いたのじゃ。

 何てことなのじゃー……。


「ああ。その可能性が高い」

「凄いのじゃー! 皇族なのじゃー!」

「はあ……。また厄介な事件が発生したのじゃろうか?」


 ため息を吐いたワシは、そう愚痴をこぼしたのじゃ。

 バロンズ帝国と言えば、クロス大陸で最大の領土を持つ大国じゃったな。

 その国の最高権力者である皇帝の娘が、このワシの島に転移するほどの事件が発生したという事じゃ。

 実に面倒な事になったわい……。


「では、のじゃー2とのじゃー3よ。お主たちは、引き続き、魔術の研究を再開するのじゃー! 今日はワシが小娘の面倒を見るのじゃ」

「むー! 私も世話をしたかったのじゃー!」

「はいはい、のじゃー2も我慢しろよ。それとお前も変な実験とかするなよ?」


 何やらワシが悪巧みでもしているかのように、疑いの目をかけておる。

 …………あれほどに、このワシを好いていた筈じゃった『のじゃー3』が、このような仕打ちをするとなどとは、非常に不理屈なのじゃー!


 じゃが、そんな不満を表に出すことはなく、ワシはその返答をするのじゃ。


「安心するが良い。今回は、情報を聞き出すだけじゃ」

「そ、そうか」

「お主らも、さっさと幻影の魔術を完成させるのじゃぞ!」

「のじゃー様の為に頑張るのじゃー!」

「ああ。任せとけ!」


 そう言って、のじゃー2は、にこやかに手を振りながら、立ち去り、のじゃー3もスタスタと立ち去った。

 あの鬱々しい信者共をここに立ち寄らんようにする事が、今のワシにとっては重大である。

 この皇女の事件など、この島に訪れるのが激増した事件と比べれば安いモノなのじゃ!


 ……じゃがしかし、全然、目覚める様子が無いのう。

 どういう事じゃろうか?

 何か特別な呪いでもあるのじゃろうか?

 どれどれ……ちょっと少女の意識の中を探ってみるのじゃー。

 ワシは少女の額に手を優しく当てて、深層部分がどうなっているのかを探った。


「むっ! これは……!? …………特に何もないようじゃ。 ワシの気のせいじゃったか」


 只の気絶のようじゃ。

 いらぬ心配をしてしまったのじゃー。

 てっきり、呪いか何かで蝕まれておるかと思ったのじゃ。


「うーん……ん?」

「おや? やっと目を覚ましたようじゃ!」


 眠っていた少女はそのまま目を開き、何やら目をゴシゴシと拭いた後、そのまま、ワシを警戒しながら睨みつけておった。

 しかし、こんな可愛い少女に見つめられてると、ワシが照れてしまうのじゃー。


「き、貴様! 妾をこのような場所に拉致してどうするつもりじゃ! あ奴らの仲間なのか!?」

「仲間とはなんじゃ?」


 何やら、いろいろと誤解をしているようじゃ。

 あ奴らの仲間とは、なんじゃろうか?

 ワシは、のじゃー島の頂点に立つ『のじゃー』じゃぞ?


「のじゃーと言わずに、ハッキリ言わぬか!」


 ふむふむ……かなり厄介な事件に巻き込まれてしまったかもしれぬのじゃー。

 ワシは、やれやれとため息を吐いて、ただひたすらに「のじゃー」と鳴いた。



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