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超危険生物『のじゃー』  作者: アトリーム人
第2章 帝国編
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13話 『のじゃー』の日常

 のじゃー島……。


 ここには、3匹の聖女のじゃー達が暮らし、今日も一室にある地下の研究室の中で、魔術の開発に励んでいるのじゃ。

 全ては、増えすぎた信者の来航者を減らす為に頑張っておるのじゃ!


 研究室に訪れたワシは、難しい顔で悪戦苦闘をしている『のじゃー2』にゆっくりと話かける。


「のじゃー2よ、島に来航できなくなる魔術の開発は、順調であるか?」

「ダメダメなのじゃー! 全く進展がないのじゃー!」


 のじゃー2は、未だに道を惑わす魔術が出来て居なかったようじゃ。

 ちょっとした霧を広範囲に発生する事は、出来たものの、これでは、そこにのじゃー島が近くにあると宣言しているようなモノだったのじゃー……。


「むぅ……。ならばのじゃー3よ、そっちは、どうじゃ?」


 次は、のじゃー3に、研究成果の話を聞く。

 彼女は、天才魔術師と唄われるほどに、新魔術を開発する事が出来るエキスパートじゃ!

 だが、そんな天才魔術師も苦悩した表情で『のじゃー』に返答した。


「駄目だ。幻を作る事は、成功できたものの、島を消せるほどの広範囲はまだ出来ないな」

「上出来なのじゃ! さらに研究を励むのじゃー!」


 ワシからすれば、一部の島を消すことが出来た時点で上出来なのじゃー。

 ステルス魔術は、生体しか姿を消すことが出来なかったからのぅ

 この大きな島の一部を消せた時点で大成功なのじゃ!

 のじゃー3ならば、もう少しで島を消せるじゃろう。

 そうでないと、ワシが困るのじゃ。


 ついでに言うとじゃ、ワシはその研究に参加をしていない。

 何故かというと、ワシは新しい魔術を開発するのが苦手なのじゃ……

 相手が一度でも唱えた魔術なら、簡単にトレース出来るのじゃが、オリジナルを作るのは無理なのじゃ。


 その後、今日の成果を聞いた後、ワシは研究室を後にし、地下の隠し家から日差しが照りつける外へと出かける。


「やれやれ、今日も島の警備をしないといけないのじゃー!」


 そして、今回も招かざる来航者が訪れてきおったのじゃー。

 最近は、本当に来航者が激増しおったのぅ。

 ここまで信仰されるとは予想外だったのじゃ……。


 侵入者が来航したと思われる場所へ向かったワシは、今日も、いつものような対応をしなくては、ならないのじゃ。


「おお……女神のじゃー様! どうか私にのじゃー様の加護を!」

「なんてすばらしい姿なの! ここに訪れた幸運に感謝します……」


 次々と「ははあ!」と頭を下げながら膝をついた、ワシの信者達。

 この一連の動作は、なんなのじゃろうか?

 そして、このポーズをとった途端、こやつらはいつものように叫ぶ


「「「のじゃー」」」


「…………何をいっているのかが、さっぱり分からないのじゃー!」


 ワシが、のじゃのじゃ言うせいで、のじゃーと言えば、ワシに伝わると思っているのじゃろうが、それは、大きな間違いである。

 適当にのじゃのじゃ言っても、分かる筈がないのじゃー。


 のじゃー語は、それほどに、並の人では自力で会得が困難な程に難しい言語である。

 これだから素人は困るのじゃ。


 ワシは、ウンザリしたような顔をして、フライの魔術を祈っている信者共を対象にして唱える。

 船諸共、海へ返す為なのじゃ。

 ある程度の距離ならば、相手を追い出す事も可能。

 まさに万能の魔術なのじゃ!


 じゃがしかし、本来は追い返されている筈なのじゃが、信者たちは毎回の如く喜んでいる。


「と、飛んでいる!? これが女神のじゃー様の奇跡……!?」

「凄いわ! まるで鳥になった気分よ!」

「おお……女神のじゃー様に感謝を……!」


 毎度のように感激しながら飛ばされていく信者達。

 もはや風物詩と化してしまったのじゃ……。

 ……やはり恐怖による威圧のほうがよかったかもしれぬのじゃ。


「しかし、ワシも随分と丸くなったものじゃな……」


 本来なら、あのような信者だろうが、侵入者は、情け容赦なく殺しておったのじゃが、今は、殺したい気分ではない。

 やはり、最近の環境が変化したからだろうか?

 いままでは、たった一人でこの島で暮らしていたのじゃが、今ではワシを慕ってくれる大切な仲間が二人もいるのじゃ。

 あの二人がワシを支えているお蔭で、ワシの精神は、過去と比べれば、大分穏やかになってしまったのじゃー。


「むぅ……これが友情パワーか……恐ろしい効力じゃ!」


 そして鳥の囀りを聞きながら、ワシはゆっくりと元の住み家へと帰るのじゃー。

 だが、帰っている途中で、ワシは歩みを止める。


「……む? 侵入者かのう?」


 緑が生い茂る森の中を歩いている時、のじゃー探知がビンビンと反応して、島の中に何者かが侵入したのじゃ。

 しかもワシが気づいたときには、島の中央付近におるではないか……

 あの山の上を瞬時に上る事は、人間には不可能な筈じゃし、そもそもワシの【のじゃー探知】を掻い潜って、島に潜入などできる筈がないのじゃ。

 だとすれば、ワシの島に転移した可能性が高い。

 そのような超遠距離転送装置は、とっくの昔にワシの島で破壊された筈なのじゃ。

 いったい、どうやってこの島に転移したのじゃろうか?


「まあ、どっちにしろ……久々に腕が鳴りそうな相手なのは確かじゃ!」


 ワシは、さっそうと空を飛び、周囲に異常がないかを確認した後、その転移した現場へと飛び降りた。


「むう……これはどういう事なのじゃろうか?」


 ワシは、現場へと駆けつけたものの、辺りが、円を描くように森が消え失せている。

 森が消失した中心には、豪華な青白いドレスを着ている少女が地面へと倒れていた。

 青髪の頭上には、ちょこんとティアラが乗ってるが、身長もワシとそこまで変わらぬようじゃし、どう考えても、只の子どもじゃ。

 では、なぜこの島へ訪れたのじゃろうか?

 見るからに、非力そうなこの少女だけでは、この島に転移する事など不可能なのじゃ。

 可能性があるとすれば、会得する事が困難な失われた魔術である、ハイテレポート。

 じゃあが……あれは、対象者を転移する事が可能ではあるものの、座標の位置を間違えば、地中や岩の中や遥か上空に転移してしまう可能性が高く、さらには自らの命を代償にしなければ唱える事が出来ない。

 そうなのじゃ、非常に使い勝手の悪い魔術なのじゃー。

 まあ、ここへ来た経緯は、後でじっくりと聞かせてもらうかのう……。

 ゆっくりと倒れた少女に近づいたワシは、ほほ笑みながら話しかける。


「さてさて、お主は、誰なのじゃ? ……と言っても意識を失っておるし、ワシ言葉なぞ、理解出来ないじゃろうな」



 その後、意識を失っている謎の少女を捕獲した『のじゃー』。

 後にこの少女に、どのような経緯で、この島に訪れたかは、また後の話しである。



更新を再開するのじゃー

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