7話 香奈のヒミツ 前
卓也の部屋
涼『香奈はもうお前の事、多分好きだよ』
卓也「何言ってんだよ、そんなわけ」
涼『だったら、確かめてみよう』
卓也『でもさ、あんな元気ないんだし』
涼『俺だって、香奈の元気ないところは見たくはない……けどさ、お前なら、なんとかできるって思ってるんだよ』
卓也「僕が? いやいや、冗談はやめてくれよ、いつも涼がいてくれたからこうやって」
涼『いいか、俺が香奈の事を好きなんじゃくて、卓也が好きな人だろ? だから正しいこととかは言えないかもしれないけど、やっぱ香奈は卓也の事もう好きだ。だから、俺にはどうしようもないことなんだよ』
卓也「どうしようもなくなんか……」
涼『進展が望めなくても、ちゃんと話せよ、後悔するぞ?』
卓也「わかったよ」
涼『それじゃあ切るな』
卓也「おーけー、ありがとう」
卓也「さて……友達があまり少ないって言ってたけど、さすがに香奈の事くらいは知ってるやつはいるだろう」
卓也、続けて電話をかける。
卓也「もしもし? ああ、久しぶり! そういえば庄野香奈って人のことなんだけどさ……」
………
……
…
香奈の部屋
???「お姉ちゃん、インターホン鳴ってるー」
香奈「え? あぁ、ありがとう」
玄関
香奈「はいー今出ますー」
ドアが開かれる。
卓也「やあ、ちょっと、その、お話がしたいと思ってさ」
香奈「……」
卓也「今時間大丈夫?」
香奈「……帰って」
卓也「ちょっとちょっと、ほんとにどうしたの? 僕なにかしたかな……」
香奈「どうして私の家がわかったの? ストーカーのつもり!? 今私はあなたに会いたくないの!」
卓也「だから、どうしてなのさ……」
香奈「言えるわけないでしょう……ヒック……グスン」
卓也「ああほら、これ使って、返さなくていいから」
卓也は泣き出してしまった香奈にハンカチを渡す。
香奈「ありがと……」
卓也「それで、どうしたの? どうして僕に会いたくないの?」
香奈「ちょっと、外歩こう」
香奈の家の近く・道路
香奈「私、あなたや涼と一緒にいる時、幸せだったの。それで、本当に楽しかったわ。でも、私、仕事中に支障が出てしまったの」
卓也「どんな?」
香奈「その、泣いちゃって……」
卓也「そっか……それは僕たちが原因?」
香奈「多分……今までそういうことなかったから、きっとそうだと思った」
卓也「迷惑かけたなら、ごめん、本当に……」
香奈「違うの、私の心が弱いだけ。あなたのせいじゃないわ、本当は。私は最低……心も体も汚れてる……グスッ……うぅ」
卓也「香奈……」
香奈の頭に触れようとする。
香奈「触らないで!!」
卓也「!」
香奈「私があなたに触れられる権利はない……私はこうして体を売って生きるしかないの。幸せになんて、一瞬でも思っちゃいけなかったの」
卓也「誰にだって幸せに思っていい権利があるはずだよ、どうしてそう思うの?」
香奈「…………それは」
自宅
美紀「ただいまー」
涼「ああ、美紀か、おかえり」
美紀「その風俗がどうたらって結局解決した?」
涼「え、別に解決とか問題になってるわけじゃ……」
美紀「またそうやって抱え込んで、どうせくだらない問題だろうけど、悩んでるならいつでも聞いてあげるよ」
涼「あ、ありがとう」
美紀「それで? どうなの?」
涼「え?」
美紀「だーかーらー、解決した?」
涼「いや、まだだよ」
美紀「ふぅーん、どんな感じなの? 私にも話してよ」
涼は美紀にこれまでのいきさつを話した。ただ香奈の職業はAV女優ではなく、風俗業だという風に若干偽った。
美紀は笑わずに聞いた。
美紀「ふぅーん……その人は涼と同じ学年なの?」
涼「そうだよ」
美紀「なんだ……」
涼「どうして?」
美紀「実はね、その話香奈って人に似たような人を知っているんだよ」
涼「え? どんな?」
美紀「いや、似てるっていうかね、なんていうんだろ……私の友達の姉がね、そういう業界入ったかもって言って相談で聞いたからさ。その人の苗字って?」
涼「庄野、庄野香奈だよ」
美紀「え? 庄野? 本当に? だったら多分その人かも! ちょっと待ってて!」