3話 カミングアウト 前
今日の投稿はこれかこの次で終わりたいと思います。次回は明日か明後日
某所 撮影現場
「「お疲れ様でしたー」」
監督「はるちゃん良かったよーはいこれ着てー」
バスローブ一枚を渡され、控室へと戻る。下着を身につけて、バスローブを羽織り、給湯室へ行く。何分もかけてうがいをした。口の中は違和感しか残っておらず、彼女にとっては薬用うがい薬は必需品になった。
メイク担当「あれ内山さん? 今日はもう帰るんですか?」
はる「はい、すみません~用事があるので~」
メイク担当「いつもそれねぇ……まぁいいわ、時間があるときにでもゆっくりお食事しましょ」
はる「はぁーい」
はる「(早く帰らないと……)」
自宅
卓也が帰り、夜が更けても落ち着いて眠ることができなかった。
涼「はぁ……」
涼は明日大学に行くのが億劫だった。早い段階で真実が露わになり、卓也も良かったのではないかと、若干前向きに考えるようにしていた。それでも、気が気ではなかった。香奈の性格は最悪で、卓也にとってなんの良い影響もないはずだと涼は思った。
大学北玄関
卓也「おはよう、涼」
涼「おはよう」
卓也「なんで僕より元気なさそうなんだよ、そんな顔するなって」
涼「え? あぁ、いややっぱりショックだったのかなぁと思ってね」
卓也「そりゃまぁそうだけどさ、でも好きになった人だし、立派な仕事をしてるって割り切ろうと思う。」
涼「はぁ? でももしかしたら、お前の財産目的かもしれないじゃないか! それでもいいのか!?」
卓也「だからさ、好きになったんだよ、仕方ないさ」
それでも彼には私だった。いい? 彼には、私だったのよ。
香奈の言葉をふと思い出した。彼には、私だった。卓也は、一目惚れだろうがなんだろうが、彼女に恋に落ちたんだ。どんな職業でも、どんな性格でも受け入れようと努力をしているんだ、あるいはこれからも努力するはずだ。
涼は、卓也の寛大な心にまた胸が痛んだ。
卓也「僕の初めての彼女なんだ、初めて好きになった女性……、わかるでしょう? それで香奈は僕と付き合ってくれているんだよ、僕なんかにね」
涼「そんな卑下するなよ、そこまで言うなら、俺は止めないよ。なんか、昨日はごめんな……あんなの見せちゃって」
卓也「いや、いいんだ、逆に昨日見せてくれなければ僕は受け入れられなかったかもしれないし」
涼「そうか……」
卓也「ま、涼にもいい彼女ができるといいねー」
涼「う、余計なお世話だよ」
卓也「さて、講義が始まるよ、移動しないと」
涼「(本当に彼女が好きなんだろうなぁ、しかし香奈の性格を知ってしまった以上応援するにもなかなか……いや、俺はなんて嫌なやつなんだ! 素直に喜ぼうじゃないか)」
食堂
涼「ふぅー疲れたな」
卓也「あの教授マジ黒板消すの早いし声も聞きづらいんだよね」
涼「ほんとなー、でも試験は割と楽勝だから許そう」
香奈「あ、二人とも待ってましたよー」
卓也「香奈! やっと会えたね~ふふ」
涼「どうも、おはようございます、香奈さん」
香奈「ふふ、おはよう青木さん」
卓也「お、香奈は弁当なんだ~? いいねー」
香奈「そうなのー、いいでしょ、からあげあげるね」
卓也「わーい」
涼「(本当に仲良さそうに見えるけど、俺よ、騙されちゃいかんぞ!)」
卓也「おいしい!」
香奈「ありがとう~」
涼「(ん? なんだろう、香奈からの目配せが多いな……)」
涼「あの、おれ、お邪魔でしたら退散しますよ」
香奈「チッ、違いますよーなんだかあまりお話なさらないなーと思って」
卓也「そうだよ、僕たちに気を遣わなくてもいいんだよ?」
涼「んー、でもまぁ、こうしてゆっくり二人を眺めるのも楽しいよ」
卓也「変なやつ」
香奈「……」
香奈「あの、青木さん、食べ終わったら二人で廊下で離せませんか?」
涼「ええ、いいですけど、どうしたんですか?」
卓也「え、ちょ、怪しいんですけどー」
香奈「卓也さんの誕生日プレゼントとか考えてほしいんですよ~」
香奈の目が鋭く光り、顔はひきつった笑いをしていた。
涼「そういうことなら、いいですよ。卓也いい彼女持ったなぁ」
卓也「でへへ」
香奈「チッ」
小さく舌打ちし、三人でどこかぎこちない会話が続けられた。
食堂前廊下
卓也「じゃあ僕は空き教室探して本でも読んでるよ」
涼「おーけー、空き講なのに申し訳ないな」
卓也「いいんだ、それじゃあ」
香奈「ごめんなさいね、じゃあまた」
卓也が歩きだして去って行った。
香奈「どういうこと? ばらしたんじゃないの?」
涼「ちゃんと伝えた、君の公式ブログを見せてあげたんだ」
香奈「いじわるな事するのね」
涼「俺だって悩んだよ」
香奈「そうには見えないね、ふん」
涼「いいから、話ってなに? 卓也の誕プレなんてどうせ、どうでもいいと思ってるだろう?」
香奈「当然よ、興味あるのは彼のお金だけ。今言ったけど、ブログを見せてそのあとどうなったの? 彼はなぜ今日の昼休みには普通に私に接してくれたの?」
涼「見せた後あいつはひどくショックを受けてた。顔は真っ青だし、俺も別れるだろうと思った。だけど今日の朝、あいつは香奈の事が好きだから、受け入れるって言ったんだ。職業関係なく、働いてお金を稼ぐのは立派な事だ、みたいな事も言ってたな……、だから割り切るってさ。彼女は僕なんかと付き合ってくれたんだって凄く嬉しそうな顔してたよ」
香奈「……」
涼はありのままの事を話した。今朝言われた事だ。涼もその話には同意できなかったが、なぜか香奈に話す時にはすらすらと淀みなく卓也の言葉で、伝えられたような気がした。
香奈「ばっかじゃないの……。いい!? 私はね、昨日も撮影があったの! 複数の男に出し入れされ、飲まされもした! そんな女よ!? 金のためにはそんなこともやるような女なの! わかる? どうしてなの? あいつは馬鹿だわ、正真正銘のね。純粋な男ってどうして考えがまともじゃないわ……ほんっと……」
涼「……。俺にそんなこと言われても困るんだがな。でも、卓也は本当に香奈の事大切だと思っているはずだよ」
香奈「もういいわ、わかったから、あいつには私から言うしかなさそうね。経験ゼロの男は考えが全くわからないわ、これでお金も見込めなさそうだったら彼とはおしまい。残念だけどね」
涼「素直に受け入れられてくる奴なんて珍しいぞ、いいのかよ」
香奈「私を裏切らないのは、お金だけなの、わかる? いくらそうやって寛大な自分アピールしても、信用ならないわ」
涼「……そうかよ、好きにするといいさ」
香奈は携帯を取り出し、卓也に電話をかけた。
『もしもし、卓也? うん、大事な話があるの? どこにいるの? うん、じゃあそっち向かうね』
香奈「あんたも来なさいよ」
涼「えっ?」
香奈「いいから!」
プロットもなく書いているのでぐちゃぐちゃです。申し訳ありません。