第3話
ノック音の後、扉が開きカイが入ってきた。
「ん?親父さんじゃん。どしたの?」
驚いたようにシンは尋ねた。
「ああ、差し入れだよ…って、なんだ?その仮面。」
シンは左目を隠すような画面をしていた。
「これか。この前殺った奴が持ってたんだ。どう?」
「へぇ。いいんじゃね?ま、頑張れよー。」
差し入れのサンドイッチが入ったカゴを近くのテーブルに置き、早くも去ろうとする。それをシンが呼び止めた。
「親父さん。」
「あ?」
「__________________ 。いいよね。」
シンの目は虚ろだった。その言葉を聞いて、とても悲しい顔をし、うつむいた後すぐにドアを開け、シンを見ずに、
「駄目だ。帰って来い。」
と言って扉を閉めてしまった。
「…ははっ……なんだよ…。」
『これが成功したら、俺、』
「俺に「殺し」以外…」
『生きるの』
「なにがあるっていうんだよ…!!」
『辞めるよ。』
男のくせに、泣き虫だ。
しかし、感傷に浸ることなくイベント開催合図の花火が打ち上げられた。
「…しまった!…来てる…!!」
窓の外をそっと覗いた。美術館の前には馬車がたくさん並び、それに比例して貴族も腐るほど居た。
「…ん、若い奴がいる。」
観察をしているうちに見つけた若い奴。本当なら目に止めることはないが、
「目が合った…!?」
その少年はこちらをじっと見ていた。
危機感を感じ窓のカーテンを閉めた。
(なんだあいつ…。他とは違うあの目は……生気が、あふれている!?)
他の貴族のトチ狂った目とは違い、少年の目はキラキラと輝いていて、まともな人間の目をしていた。
しかも何百mも離れているシンの目を見ていた。
…気がする。
「あんな若い奴、いたっけな…」
シンのデータにはいないはずの若い貴族であった。
そんな中、ふとコウの死に際の言葉を思い出した。
『弟が産まれたらしいぞ。』
いや、突然のことで混乱しているのだろう。
「まさか、な。」
くそ、こんなときに。
大人数が階段をドカドカと登る音の後、扉が壊された。
「警察だ!!!!バビロン団長、貴様を逮捕する!!!!!!!」
くそ、今日はついてないな。
シンは外を眺めていた窓から勢いよく外に飛び出した。
地上四階。死ななくとも大怪我をしてしまう。
しかしそこはプロの殺し屋。華麗に着地し、人混みをすり抜けるように駆け抜けた。
小さい頃、仲間たちに『瞬足のシン』と呼ばれていたのを思い出した。
少し走ると、小さな小さな路地裏を見つけた。
(そうだ、あの路地裏に…!)
急ブレーキをかけ、路地裏に2.3歩入ったときだ。
「っ、お前…!!」
あの時、目が合ったと思われる少年がこちらを向いて立っていたのだ。
手には銃。
シンは撃つかどうか迷った。
迷ったのだ。
その迷いの結論は出ず、警察共が表を走っている。
「こっちだ!いたぞ!!」
見つかってしまった。距離はとても近い。かといってポケットから銃を出して撃っても、まずどちらに撃つかで迷ってしまうだろう。
シンは諦めた。
貴族抹殺目前にして、団長死す。
って思うでしょ?
やっぱり主人公。死ぬことはありえない。
少年が銃をこちらに向け、撃った。
しかしそれはシンが目的ではなく、シンの後ろの警察共だった。
二発の弾丸は警察に当たったかはよく分からない。
少年はシンの手を取った。
「お兄さんこっち!」
「……は?」
いろいろ聞きたいのはあったが、そんな暇はない。
二人は路地裏の奥深く、暗闇へと走った。
後ろから警察の負け惜しみのようなものが聞こえる。
「な、なにをする!奴の応援か!?っ、待てっ!!バビロンに入った者は全員処刑だぞ!!待てええええ!!!!!」
これは一体、どういうことだ?
シンは思う。
「お兄さん…『バビロン』の団長ですよね。」
なんか暴露てる。
シンは素早くポケットから銃を出し少年の額に当てた。
狭い路地だから少年は身動きが取れないが、取ろうともしない。
「おい坊主。誰から教えてもらったから知らねェが、貴族殺しと分かってなぜ助けた。」
冷静に聞いた。
すると少年は、突拍子もないことを言った。
「僕を!!僕をバビロンに入れてください!!」
「…………は?」
少年続ける。
「僕、僕はっ…貴族が大っ嫌いです…!だから…っ!!」
突然近くの扉があいた。
出てきたのは、カイだった。
「…シン?!」
「あれ?ここ…」
「ウチの裏だよ!なぁんだビビったぁ〜!」
緊迫していた空気が、この三十路のおっさんによって掻き消された。
シンは少しやる気を削がれ、さっきよりぬるく少年に声をかける。
「おい貴族もどき。」
「は…はいっ」
シンは仮面を外しながら話す。
「込み入った話なら店で聞こう。不穏分子なら即刻殺す。」
「は…、はいっ!」
少年は嬉しそうに返事をしたが、意味が分からない上、勝手に店を使われる流れになったカイは強張った笑顔で硬直した。
今回はちょっと長いんじゃないかな⁉︎
あと、アンダーバーのところは最初空白にしていたのですが、詰められてしまったのでアンダー バーを入れました。
これを書いた後、元ネタのノートをなくしました。
あるはずなのですが…探します。