第2話
翌日の酒場。
カウンター席には、まだ昼間だというのに若い男、シンが座って酒を飲んでいた。
「もう一杯…」
「シン、飲み過ぎだぞ」
シンはこれでウィスキーを四杯飲んでいる。
「ん?いつも通りだろ。」
「いつも通り飲み過ぎなんだよ!出す俺も悪いけど!」
ガツンとウィスキーを出した。
すると、普段はあまり鳴らないドアのベルがなった。
「あ、いらっしゃい。」
入ってきたのは、深めに帽子をかぶり、長めのコートを着た男。
「ウォッカとステーキをくれ。」
「あいよ」
そう注文し、シンの隣のイスにコートを掛けた。
そして帽子を取ると同時に思い出したように付け加える。
「そうそう、もちろん普通の肉でね?」
糸目で明るい茶髪、そしてニッコリとした笑顔。
彼はこの店によく来る情報屋、シルクだ。
「わーってらぁ」
おーい厨房!と大声を上げた。
「久しぶりだなシルク。」
シンもとても信用してる仲間のような存在だ。
「本当だね。あれ、」
因みに言うと
「少しはおっきくなった?」
「黙っとけ」
童顔の35歳のシルクは21歳のシンを子供扱いしている。
しばらくして、カイがステーキとウォッカを運んで来た。
「おらよ、サーロインステーキとウォッカ、3万5000バンだ。」
1バン1円といったところだろう。
「いやまた随分高いね。経営困難かi」
「金を出すか。情報を売るか。選べ。」
シーンと静まり、カイは正面から、シンは横目でキッと睨みつけた。
「…しょーがないなぁ。」
シルクは胸ポケットから紙切れをピッと出した。
「これは?」
「近々貴族が集まってそこの美術館でなんかするらしいよ」
はいこれメモ、と、紙切れをテーブルにおいた。続けて話す。
「その数、500名。」
「なっ…!!」
ガタッ。
立ち上がったのはシン。
「奴らを一掃出来るチャンスじゃないか…!!」
「シン!静かにしろ!外部に聞こえたら…」
慌ててカイが抑えた。
「僕の部下は内密にしてくれるだろうけど、他は知らないからね。」
シルクは他人事のようにいただきまーすと手を合わせた。
「…なぁシルクぅ、バビロン入ってよぅ」
無理だとわかっていても、藁にも縋る思いで言ってみた。
「僕は…敵とか味方とか関係なくお金積まれれば売ってるから危ないとおもうよ?」
衝撃なカミングアウト。
カイはわかっているようだが、シンは初耳だった。
「おまっ…ええええ…?!」
「うるせぇよシン、安心しろ、シルクにはちゃんと、言ってあるから。」
そんなこと聞いてないよみたいな顔をして、ごちそーさまーと終わりに手を合わせた。
「なら、いいんだ。今日はもう帰るよ、ありがと。」
「おう、きぃつけて…っておめぇ、代金は!?」
「えー、肉調達したんだからいいじゃーん」
シンはあまり金を持っていない。
「あ、そっか、ならいいや。」
「すごいねカイ。」
「なんだシルク。」
(三日後か…。美術館ならここの宿から見えるし…。)
「今回は爆弾だな。」
宿に帰ったシンは、椅子に座って窓の外をみながら呟いた。
「調達で一日、下見と配置で二日くらいかな。」
ふと、コウのことを思い出した。
(コウ…貴族滅亡まで、あと少しだよ…。)
「…ふふ、つかれたなぁ……。」
背もたれに寄りかかり、上を見上げた。
その頬にはーーー
「でも、あと少し。」
当日。
このお話は、自分のノートに描いたマンガのお話をそのまま写してます。
今回の場合、ノート見開き二ページです。
長くなるけれどちゃんと結末も決まっているので遅れたりおかしくなったりはしないはずです。
これからも宜しくお願いします。