第0話
とある、小さな小さな貧民街。
野良犬が走り回り、薄い板でできた小屋のような家が立ち並び、埃の舞うような街の夫婦に子が生まれた。
父が仕事から走って帰ると母と助産婦が赤ん坊を抱いて喜んでいる。
父もそばにより、名前を呼んだ。
「シン、シン。」
と。
彼の名は、Sin。
それは日の照る日の事だった。
家に街には似つかわしくない男が数人侵入し、母親と父親を連れ去る。
赤ん坊は奥の部屋でぐっすりと眠っている。
母親は赤ん坊と離れたくない一心で金切り声を上げた。
「シン!シン!!」
と。
数時間後、大泣きしている赤ん坊の家に街の男が一人入ってきた。
赤ん坊は少年となり、男、コウと仲間たちに育てられた。
コウは団長であった。
コウは少年を呼び、本部となる時計塔のベランダに連れ出し、こう聞いた。
「荒れ果てた国…。貧民さえも去り酔ったギャンブラー共の市民を買う声が大きく響く。だがいつしか街は、高い壁に囲まれた国になり、繁華街となり、市民の暮らせる場所は消え、生きるには金持ちに買われるかギャンブルで勝つしかなくなった。
さて、俺等の幸せはどこだ?」
大人びた少年はこう答えた。
「嘆いても何も起こらない。」
「そう、何も起こらない。だからーー
俺たち『バビロン』は、暗殺団は存在する。」
暗殺団は最盛期を迎えついに国王殺しの直前までやってきた。
しかしコウの作戦は失敗し、国王の護衛にただ一人囲まれた。
少年はコウの名前を呼ぼうとしたが、仲間に止められる。
ただコウは、騒然としているなか空を見て言った。
「シン、おめでとう。これからはお前が団長だ。それと、
弟が産まれたらしいぞ。」
護衛が持っていた銃が放たれ、男は息絶えた。
バビロン暗殺団はそれから、どっと意気消沈し、少年を残して全員死んだ。
少年は一人で生き延び、立派に育った。
少年はたった一人の暗殺団となって青年となった。
青年、シンは、その日、酒場の前で酔いつぶれて寝ていた。