Act.02
約半年ぶりの投稿です。
私生活の面で色々と多忙な毎日だったので
連載もプロットを見直しながらの執筆となりましたが
どうにか第二話を投稿できました。
大変お待たせいたしました。
「そうだ。ねぇ看護師さん。今度一緒にディナーでもどう?ごちそうするよ?」
「もし神村さんが検査に引っ掛かったら考えても良いですよ?」
「それは残念だ」
神村と呼ばれた青年は少しも残念そうな顔をしないでそう言った。
彼の名は神村静香。ちょっとした趣味で献血をする為に病院へと来ていたのだが、担当の看護師が若く美人であったため食事に誘っていた。しかし静香の誘いは看護師とは思えぬ物騒な言葉とともに断られた。
と言うのも静香自身、献血で引っ掛かるような病気を持っていない。それを知っている看護師は毎回のように誘ってくる静香をあしらう為の言葉として利用していた。
「それじゃあ後ほど検査結果を報告しますから、部屋の外で待っていてください」
献血を終えた静香は献血室のすぐ前にあったソファへと腰を下ろす。献血室は受付の近くに設置されていた。
目を閉じ、耳を澄ませると病院に訪れるあらゆる人の声が波のように押し寄せてくる。
受付の形式染みた会計。病室の場所を尋ねる患者の親戚。ソファに座って世間話に興じる年配の女性。病院の空気に慣れず泣き出してしまった子供。
それ以外も含めた喧騒が静香の体内に入り込み、身体の内側から重たく振動する。
深く静かに深呼吸するとゆっくりと目を開く。と同時に彼の目の前を一人の女性が通り過ぎた。
(おや?)
と静香は首を__心の中で__傾げた。
サラリとした長い髪から仄かに感じた甘い香りにではなく、一瞬だけ見えた彼女の表情に疑問を持った。
「やれやれ。折角の美人が台無しだ」
過ぎ去っていく女性の背中を見つめながら呟いた。
ロ型に建てられた三上市民病院はその中央に緑豊かな中庭が設けられている。
血液検査の結果を受けた静香は病院の中を散策したあと、この中庭へとやってきた。植物がアーチ状になった遊歩道をゆっくりと歩きながら、花壇に植えられた花を眺める。
ふと、側らに設置されたベンチを見るとそこに見知った顔が座っていた。
「おや?こんなところでどうしたんだい?慎一郎」
「おう。静香、久しぶりだな」
煙草を銜えながら鮫島は軽く手を上げた。
next:Act.03
半年のブランクがあるため
雑になっている箇所もあったと思いますが
またのご拝読とご意見を頂ければ幸いです。
それでは次回にてお会いしましょう。




