猛暑すぎるから夏の新しい名前考えてみた
高校生の頃は小遣いで間に合ってたけど、大学生になったら、アルバイトは必須。でも、接客業なんて嫌だし、力仕事はかったるい。どうしようかなって思って探してたら、運よく伯母が経営するクラブのホームページの運営のバイトにありつけた。
ホームページ作成サービスの会社もあるから、最初は業者に頼んだらしい。でも、ホームページ作成ソフトなんかも普及して、僕のようなド素人でもラクにホームページが作れるようになった。定期的に、いくつかのファイルを更新するだけだったので、やり方さえ覚えれば簡単。週に一度、まだお客さんのいないうちに、クラブの奥の控え室で作業した。早めに出勤してきたキレイなお姉さんたちにも会えて、お姉さんたちから高級なお菓子をもらったりして、楽しい仕事だった。
中でも炎夏さんは、パソコンが好きみたいで、よく、僕のそばに座って、更新作業を見学する。僕に顔を近づけて画面を覗き込む。そして、たまに、質問したり、思い出話をしたりした。
「かなり前なんだけど、私、『ハル』っていう映画にハマってさあ」
「ああ、パソコン通信の映画ですよね。何年前だったっけなあ」
「歳がバレちゃうけど、私が専門学校に行ってた頃だから、平成8年かな」
「え、そうなんですか? 平成8年なら、僕まだ小学生ですよ。炎夏さんって、平成8年で専門学校生?」
「え〜、よくわかんな〜い」
炎夏さんは笑った。年をごまかしたつもりらしい。
「大丈夫ですよ。うちのホームページ、女の人の年齢載せてないし、炎夏さん、まだアラサーだし」
伯母と炎夏さんの両方に、左右から小突かれた。
8月に入って初めてのメンテの日。その日は伯母しかいなかった。
「炎夏さん、夏はプロフィールの閲覧数が落ちるよなあ。暑いのに炎夏だもん、無意識に避けられるよね」
伯母が画面をのぞき込んだ。
「炎夏ちゃんだけ落ちてるってこと? そんなことないでしょ。ニッパチって言葉があるくらいで、二月、八月は、水商売は、客が減るんだよ」
「へえ、そうなの? でも今は地球温暖化で、夏の暑さがハンパないから、名前くらいは暑苦しくないほうがいいじゃん。僕、直接本人に『穂花とかに変えたら?』って言ったことあるもん。炎夏さん、なんで本名なんだろうね?」
この疑問に対する伯母の解説は意外だった。
「本名を知ってる男に捜してほしいんだよ」
「えっ?」
僕が聞き返したので伯母が重ねた。
「あんたのお父さんが好きな、小林旭の『昔の名前で出ています』聴けばわかる」




