歴代転生者がやらかしたので俺だけ異世界で就職することになった
【第24作目】多発するテンプレートのチート転生者の末路を考えてみました。
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山崎ユウキは異世界に転生して三日で指名手配された。
能力は全属性の攻撃魔法、防御魔法、そして転移魔法。
どう考えても主人公向けのチートである。
転生した女神も言った。
「ご自由に異世界ライフをお楽しみください♪」
だからユウキも、お気楽に冒険者ギルドへ向かった。
ところが受付で手続きを行い、技能確認の水晶に手をかざした瞬間だった。
「転生者です!!」
受付嬢がユウキの顔を見て大声を上げた。
次の瞬間、別の職員がカランカランと警鐘を鳴らし始める。
屈強な冒険者たちが立ち上がった。
近くを巡回していた兵士まで駆け込んでくる。
「え?」
ユウキは固まった。
受付カウンターの上では、水晶が真っ赤に光っている。
「何これ」
「転生者アラートです」
「そんなものあるの!?」
受付嬢は真顔で頷いた。
「大魔導士ランドルフ様が発明されました」
「何のために?」
「転生者を見つけるためです」
「そのまんまだな!」
それだけ転生者は問題だった。
百年前までは救世主扱いだった。
異世界を救う勇者。
人類の希望。
神々から遣わされた英雄。
そんな存在として歓迎されていた。
しかし数十年の間に状況は大きく変わる。
歴代転生者たちが好き勝手やったのである。
例えば無限収納の転生者。
依頼を独占した。
ドラゴン素材も。
鉱山採取も。
運搬依頼も。
全部一人で受注した。
結果。
地方の冒険者が大量失業した。
高速成長系の転生者もいた。
レベルを上げまくり、一人で所有できるだけの希少素材を乱獲した。
霊薬になる銀月草。
不死鳥の羽。
七色茸。
高値で取引される素材が次々と姿を消した。
極めつけは狩猟特化型である。
希少魔獣を根絶やしにした。
毛皮が儲かるから。
角が高いから。
それだけの理由だった。
その結果。
絶滅危惧種が続出。
高級薬品は価格十倍。
生態系は崩壊寸前。
各国は激怒した。
そして作られたのが、
・転生者管理法。
・転生者アラート。
・転生者登録制度。
・転生者監視局。
・転生者税務課。
である。
「つまり先輩たちがやらかしたと」
「はい」
「俺、何もしてないんだけど」
「みんなそう言います」
受付嬢は遠い目をした。
包囲してる人たちの間から転生者監視局員が進みでた。
「転生者登録をしていただけますか」
「嫌です」
「そうですか」
担当官は冷静に書類へ何かを書き込む。
ちらりと見えた。
・危険思想あり。
・協調性なし。
・災害指定候補。
「待て!」
「はい?」
「何でそうなる!」
「前例がありますので」
「また前例!」
「前の転生者もそう言いました」
「その人は?」
「王都を半壊させました」
「参考にならねぇ!」
ユウキは逃げることにした。
転移魔法で百キロ離れる。
翌朝。
監視局員は現れた。
「どうやって来た!」
「秘密事項です」
「おかしいだろ!」
さらに逃げた。
二千キロ先。
翌朝。
また来た。
「追跡魔法?」
「秘密事項です」
「その能力、俺より強くない?」
そんなある日。
問題が起きた。
ユウキが逃げ込んだ森で巨大魔猪に襲われたのである。
仕方なく魔法を放った。
一撃で倒した。
すると直後、
慌てた村人たちが駆けてきた。
「何故討伐したんですか!」
「襲われたから!」
「この個体は繁殖計画対象動物です!」
「知らん!」
数日後。
保護指定魔獣管理違反。
という警告書がどこからともなく届いた。
「面倒くさい世界だな!」
さらに別の日。
ユウキは珍しい薬草を発見した。
何気なく採取する。
それを商会へ持ち込んだ。
「銀月草を二十本ですね」
「はい」
「許可証は?」
「ないです」
「保護植物です」
「またか!」
そこでユウキは理解した。
転生者が滅茶苦茶やった結果、
国家の規制が異様に厳しくなったのだ。
だが世間はそんな事情を知らない。
ただ転生者が危険だという事実だけが伝わっている。
ある日。
隣国軍三万人がユウキ捕獲を試みた。
「危険転生者を確保しろ!」
「だから何もしてないって!」
仕方なく風魔法を使った。
三万人全員を吹き飛ばす。
三キロ先まで。
怪我人ゼロ。
死者ゼロ。
しかし翌日の新聞はこう報じた。
『魔王出現』
『軍勢壊滅』
『世界滅亡の危機』
「壊滅してない!」
ユウキは抗議しに行った。
翌日の記事。
『魔王、自身の犯行を否認』
「もう駄目だこの世界!」
やがて冒険者ギルドに張り紙が出た。
・災害指定S級
・山崎ユウキ討伐依頼
・賞金五億ゴルド
「魔王がいるぞ~!」
誰も聞かない。
逃げても追われる。
説明しても疑われる。
何をしても前例扱いされる。
物を買うことができず、売る事もできず。
そしてユウキはついに疲れ果てた。
「どうすればいいんだ……」
森の切り株に座り込んでいると、
薪を背負った老人が通りかかった。
「働けば?」
「へ?」
「歴代転生者は皆、自分だけ得しようとした」
老人は穏やかに笑う。
「だから嫌われるんだ」
「……」
「お前さんは違うんだろ?」
その言葉は妙に胸へ刺さった。
翌日。
ユウキは転生者監視局へ出頭した。
「就職します」
職員が泣いた。
「自主就職だと……?」
「珍しいのか」
「十五年ぶりです!」
こうして山崎ユウキは国家災害対策局へ配属された。
ドラゴン討伐。
魔獣被害の対応。
違法転生者の説得。
どれも得意分野だった。
一年後。
災害指定解除。
二年後。
英雄認定。
三年後。
国家功労章受賞。
かつて世界中から追われた男は、
いつの間にか国家公認の英雄になっていた。
そしてある日。
冒険者ギルドで警鐘が鳴った。
カランカランカラン!
転生者アラートが真っ赤に光る。
黒コートの少年が不敵に笑っていた。
「俺は世界最強だ」
昔の自分そっくりだった。
ユウキはそっと肩を叩く。
「頑張れ」
「なんだお前」
「納税はしろ」
「は?」
「薬草採取許可も取れ」
「何言ってる」
「保護魔獣には手を出すな」
「意味が分からん」
「あと公務員試験の参考書やる」
「いらねぇ!」
一週間後。
その少年のもとへ監視局から書類が届いた。
・危険思想あり
・協調性なし
・災害指定候補
遠くから悲鳴が聞こえる。
「何で異世界に税金があるんだぁぁぁ!」
その声を聞きながら、
ユウキは少しだけ笑った。
どれほど最強の能力を持っていても。
どれほど強力な魔法を操れても。
この世界で一番強いのは、
魔王でもない。
勇者でもない。
百年かけて転生者対策を完成させた国家行政機関なのである。
ちゃんちゃん。
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転生者=外来生物の観点で固有種が被害を被るの発想で話を構成してみました。
監視局員に居場所がバレてる設定ですが、まあ水晶に触れた際に登録をしていると言うことで。
(じゃあ何故、登録するか否かを聞くシーンがあるのかですが、これはカマをかけているとしておきます。嘘、そこまで深く考えてないですww)
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【1~23作】5分前後で読めるお話を書いています。もしよければ、過去作も読んでみてください。




