「食えればいい」は国家を壊す。――イランに学ぶ国家戦略 (。´・ω・)?
「とりあえず食えればいい」
この言葉ほど、国政として短期的には正しく、長期的には危険な考え方はない。
個人にとって、食べられることは生存そのものだ。
だが国家にとってそれは最低条件であって、国民の希望そのものではない。
国家とは、人を生かす装置ではなく、人に役割を与え、働かせ、未来を描かせる装置だからだ。
ある資源国がある。
豊富な地下資源を持ち、外貨を稼ぐ力もある。
だが政治的理由から、自由に金を受け取れない。
その国は地下資源を売り、代わりに大量の食料と生活必需品を輸入する。
空腹は防げる。
比較的暴動も起きにくい。
一見、国家は「安定」しているように見える。
……だがその裏で、静かに仕事が消えていく。
輸入された食料と製品は安く、確実で、量も多い。
だがそれは同時に、国内の農業、加工業、物流、関連産業を静かに殺していく。
新規に工場は建たず、技術は育たず、若者は働く場所を失う。
失業率は数字として発表されるが、本当の問題は数字ではない。
「自分はこの国に必要とされていない」
誇りを失うその感覚が、国民全体の心に染み込んでいくことなのだ。
仕事を失った人間は、未来ではなく、極めて近い今日を見るようになる。
国家の長期投資である教育は意味を失い、技能は積み上がらず、社会は消費するだけの集団になる。
国家は言う。
「最低限の生活は守っている」
だがそれは、失業という病に鎮痛剤を打っているだけだ。
痛みは消えても、病気は治らない。
さらに厄介なのは、その食料や物資を供給する国が、極めて合理的で、感情を持たない存在だという点だ。
その国は助けているように見える。
だが実際には、安く資源を手に入れ、自国の製品を売り、相手国を依存させているだけなのだ。
……友情でも優しさでもない、計算された依存関係。
依存が深まるほど、国家の選択肢は減る。
通貨は囲い込まれ、使い道は限定され、政策は常に「相手の意向」を前提に組み立てられていく。
その国は、食料は買えても、産業は買えない。
雇用は買えない。
つまり、国民の尊厳は輸入できないのだ。
そして失業は、静かに、しかし確実に社会を侵食していく。
失業者が増え続けると、国家は別の方法で求心力を保とうとする。
統制を強め、不満を抑え、外に「敵」を探し始める。
これは独裁だからという問題ではない。
成長を失った国家が必ず通る道なのだ。
……やがて、その国は気づく。
食料は買えても、未来は買えないことに。
失業した若者は、銃を持つ仕事なら与えられる。
工場はなくても、軍隊は雇用を生み、国民に誇りを感じさせることができる。
国家に残された手段は、経済ではなく、国際衝突と軍事動員になる。
……だから、戦争は突然始まるわけではない。
戦争は、
雇用が失われ、
産業が壊れ、
選択肢が消えた末に、
最後に残る政策として現れるのだ。
政治家が「食えればいい」と割り切った瞬間から、その国はいずれ戦争を選ばざるを得ない地点へ向かっていく。
国家にとって必要なのは、食料ではなく、働ける場所と、積み上がる未来だ。
それを失った国家は、銃と敵意でしか自分を保てなくなる。
戦争とは、突然の狂気では、決してない。
行き止まりに追い込まれた国家の、最も合理的で、最も悲惨な選択なのだ。
「――星間覇道 ―― すべてを失った少年貴族と、それを値踏みする女海賊が、帝国の内乱に関わる話」という宇宙モノを連載中です。よかったら読んでみてください (*- -)(*_ _)ペコリ
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