第1話 お姉ちゃん。大好き。
桃と檸檬 ももとれもん
お姉ちゃん。大好き。
双子の天使と悪魔の美しい姉妹
お姫様みたいだって小さなころからずっとみんなに言われていた。
そんな綺麗で可愛らしい双子の女の子の姉妹の桃と檸檬は、顔や体はそっくりだったけど心はあんまりそっくりじゃなかった。
お姉ちゃんの桃と妹の檸檬。
天使と悪魔。
桃が天使で、檸檬が悪魔。
いつごろからだったかはわからないけど、いつのまにかみんなにそんなふうに思われていたのだ。(まあ、そうかなって思うけど、悪魔はひどいと思う。桃が天使すぎるだけなんだ)
そのことを檸檬はずっと気にしていた。
そして、ちょっとだけひねくれてしまったのだった。(本当にちょっとだけね)
そして檸檬は小悪魔になった。(悪魔にはなりたくなかったけど、ちょっとだけいじわるになろうと思った。頭に小さなつのがはえるくらい)
桃と檸檬は同じお嬢様学園に通っている。年齢は十五歳で中等部の三年生だった。
二人とも成績は優秀で、運動もできた。なによりもそのお人形さんのような可愛さで、学園中でとっても有名だった。(いつも後輩の妹、この妹は学園の制度であるシスターとしての妹だけど、たちからきゃーきゃー言われてた)
ずっと双子で鏡をみているみたいにそっくりな姉妹だったけど、今は少しだけ違いがわかるようになった。
そのわけは檸檬にあって、檸檬はその小悪魔な心がちゃんと顔に出るようになった。(もしかしたら小さなつのだってちゃんとあるかもしれない)そのせいで、ずっと天使のままでいるお姉ちゃんの桃(きっと天使のままだったら檸檬も今もまだ桃みたいな顔だったのだと思う)と見分けがつくようになった。
でも、それもほんの少しで、二人はやっぱりそっくりだから、お友達や先生たちのように桃と檸檬のちかくにいるみんなには違いがわかる、くらいの変化だった。
ただ心は随分と違うので、お話をしたり、お友達になればその表情や雰囲気や声の印象や話しかたや近くで見るときの顔の少しの違いとかがわかるので、きっと桃と檸檬はどちらがどちらなのか判断できると思う。
一番わかりやすいのは大きな瞳で、桃は丸い目をしていて、檸檬も丸い目をしているだけど、ひねくれているぶんだけつり上がっているように見えた。(猫みたいな目で、ちょっと攻撃的だった)
桃と檸檬は同じ教室の生徒で、(なぜか一年生のときからずっと二人は同じ教室だった。なんでだろう?)その同じ教室の生徒の中に蜜柑というお名前の生徒がいた。
蜜柑は桃の大好きな女の子で、檸檬は蜜柑のことをなんとも思っていなかったのだけど桃がすごく蜜柑のことが大好きだから、だんだん檸檬は蜜柑のことを自分のものにしたいって思うようになってきた。(お姉ちゃんの大好きなものが欲しいって思うことは、小さなころからよくある檸檬の悪い癖だった)