王立モニタリング学園〜平穏に暮らしたいので無口キャラ、貫きます!
いつか連載を目指したい!
地獄の学園生活、開幕
全国各地から集められた王侯貴族たちの学び舎、モニタリング学園。
校門をくぐった瞬間、私たち新入生の目の前に広がったのは 街ひとつ飲み込めるほどの広大な校庭だった。
……でかい。
そして、ここには恐ろしいシステムが存在する。
自室・トイレ・更衣室以外のすべてに映像魔法が発動されており、国民全員が生徒の学園生活を監視できる。
当然、在籍生徒は監視映像を見られないし、学園から出ることも許されない。
そして卒業式の日、国民投票によって 王族や高位貴族の婚約者、次期当主が決定する。
身分の多少影響あるが、実力とカリスマ性がすべてを決めるのだ。
つまり、ここは
目指せ玉の輿!下克上!
……な学園。
でも、私は そんなの全然興味ない。
好きな人もいないし、将来やりたいことも特にない。
親が決めたことに従って適当に生きるのがいちばん楽だ。
だから、できれば目立たずひっそりと学園生活を終えたい。
……が、私の生まれは侯爵家。
黙っていても、取り入ろうとする人間は絶対に出てくる。
「はぁ、めんどくさい……」
せめて、クラス分けで 最高位貴族の立場にならないことを願うばかりだ。
もし 最高位貴族になってしまえば、当然のように委員長や生徒会役員を押しつけられる未来が見えている。
まずは幼なじみの レイに釘を刺しておかないと。
下手に関わると、私の平穏計画が崩壊する。
***
『ねえ、私無口キャラで行くから、レイは私に話しかけてこないで』
『……本当にやるの? 無理だって、俺、ミラがいないと絶対ボロ出しちゃうよ!』
レイは焦ったように私の袖を引っ張る。
『女子のあしらい方も分からないし、大勢の人に囲まれたらパニックになる自信しかないんだけど!?』
『大丈夫よ。何度も練習したじゃない。にっこり微笑んで、間を開けてゆっくり話せばいいの。』
『……そんなの、ミラだからできるんじゃん。』
『だからこそ、私たちは テレパシー を習得したのよ? これで離れていても連携は取れるから大丈夫。』
『……分かったよ。でも、どんな些細なことでもテレパシーで報告してね。じゃないと話しかけに行くからね』
***
パッパカパーン!!
トランペットが鳴り響き、校門が開かれる。
同時に、拍手と花吹雪が私たち新入生を歓迎した。
名前を呼ばれた生徒は、一人ずつ優雅な所作で門をくぐる。
私は4番目。
最初の方だけどトップバッターでもなければラストでもない。
まあ、悪くないポジション。
『レイ、頑張ってね』
『……もう帰りたい』
ウィリアム・レイル・アルデニア王太子の名前が呼ばれると、場の空気が引き締まる。
さすが王族、ボウ・アンド・スクレープが完璧 だ。
……まあ、喋ると残念なところが目立つけど、動きは本物。
「では、第135回生、入学を認めます!」
こうして、地獄の学園生活が始まった。
***
あっという間に過ぎた3年間。
正直、無口キャラを貫くのは思ったより大変だった。
レイの世話を焼かずに済んだのはよかったけれど、何故か いつもチラチラと目線が刺さる
「ミランダさんは聡明で物静かで、まるで聖女のようだわ!」
「静かに微笑む姿が気品に満ちている……!」
いつも何かしら噂を立てられる。わたしが一体何をしたと言うんだ!ただ、ひたすら図書館で本を読んでいるだけじゃん!
そんな状況のまま迎えた卒業式。
「では、第135回生の学園名誉賞の授与を行います。」
学園名誉賞とは、学園の発展に大きく貢献した者に与えられる最高の栄誉 であり、女性が受賞した場合、王太子の婚約者として認められることになる。
その受賞者として呼ばれたのは――
「ミランダ・フォルティス嬢、前へ」
……は?
なぜ??? どうしてこうなった!
慌てる私の耳元で、隣の生徒が囁く。
「ミランダ様、呼ばれてますわよ?」
……逃げられない。
とりあえず、訳も分からず前に進む。
「貴殿は学園全体の学力向上に貢献し、学園始まって以来の高得点を出した成果として、ここに学園名誉賞を授与し、王太子ウィリアム殿下の婚約者として認めます。」
……ちょっと待って。
「おめでとう、ミランダ嬢。そして、約束通り僕の婚約者になってくれてありがとう」
「……は?」
ウィリアム殿下は優雅に手を差し出す。
場内が拍手と歓声で包まれる。
――いやいや、ちょっと待て。
「婚約者になれたこと、至極恐悦にございます。私の人生全てを持って、殿下ひいては国民の皆様を支えることを誓います。」
……と言いつつも、頭の中は混乱している。
そんな!!3年間の努力が...
「……ねえ、何で私が婚約者になってるわけ?」
「うん、約束したじゃない。3年間一度も話しかけなかったら、卒業後は僕を支えてくれるって 」
――そんな約束したっけ!?
私は平穏に過ごしたかっただけなのに、いつの間にか王太子の婚約者になってしまった。
――こうして、私の人生の方向性は 強制的に決定された。
**(完)**
ノリと勢いですが、後悔はない!