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42/52

(42)それぞれのクリスマス1

クリスマス25日は、店の定休日と重なっていたが、年末の忙しさで、店は開けていた。

豊は、6時に由美子と約束をしているため、5時前、仕事を先に上がり、支度を始めたが、

ワイシャツを着ては溜息を一つ。

ワイシャツのボタンを一つ留めては溜息一つ。

ズボンに足を片方突っ込んでは溜息一つ。

もう片方に足を突っ込んでは溜息一つ。

ファスナーを上げては溜息一つ。

最後のスーツのジャケットを着るまでに、部屋中が溜息吐息に包まれた。


「兄ちゃんさぁ、鬱陶しいから、その溜息止めてくんない? ボクの運気まで下がるよ」

豊の部屋でエロ本を物色していた浩司に言われた。


「あれ? なんで浩司がここにいんの? おまえ、彼女とデートじゃなかったの?」

まったく気の入っていない声で訊いた。

「ボク、さっきからずっとここにいたぜ? っつーか、ボクは 後で、彼女迎えに行って、

 うちでおやじとおふくろと四人でクリスマスすんだ」

「はぁ? おやじたちと!?」

「うん、特別な彼女だから」

浩司は前に比奈子に恋の相談をし、彼女には「君は特別だ!」ということをアピールしろとアドバイスを受け、その後、何かにつけて、彼女を特別扱いしてきた。

よって、少し違うような気もするが、クリスマスは特別に彼女だけを前田家に招待したら、思いのほか、彼女は喜び、五郎太と恵子と四人で食事をすることになった。


「いいなぁ、おまえ…しあわせそうでな…」

「ぁあ? 兄ちゃんだってこれからデートだろ? 何言っちゃってんのぉ~?」

陽気に言う浩司を見て、豊はまた溜息を吐き、机の引き出しを開けた。

リボンの付いた箱が二つ並んでいる。

一つだけ手にとり、そのままポケットに入れ、残された箱をそっと指でなで、溜息を吐き、引き出しを閉めた。


待ち合わせの時間に間に合うように玄関を出ると、冷たい風が当たる顔を、バンバンと叩き、自分に気合を入れ、駅に向かった。




小鳩家では、志乃がクリスマスだから特別にと……本当は料理を作るのが面倒くさいからであるが、ホテルのケータリングサービスの食事をテーブルに並べ、親子三人の楽しい…特に、恒和が浮かれているのだが……、クリスマス会を開いていた。


「うっきょ~、すごいじゃん! お父さん、今年のプレゼント!」

比奈子の喜びに、サンタクロース姿の恒和は、ニンマリ微笑み、満足そうな顔でうなずいた。

「ほんと、大昔のゴム手袋とは大違いだわ。ねぇねぇ、似合う? 比奈子」

志乃はカシミヤコートに腕を通し、言った。


「見たか! 父の実力を!!」

天を向いて高笑いだ。

「でもぉ、働いたお金で買ったんじゃないんだよね? これ」

「ぇぇ?」

比奈子に言われた恒和は、少し首を横にした。


「このカシミヤコートにたどり着くまで、いったいいくらかかったのかしら、ね?」

「ぇぇ?」

志乃に言われ、恒和は首を九十度に倒した。


「随分高いカシミヤコートになってるよね、、家一軒買えてたりして…」

「うわぁ~、大切に着なきゃ」

「うん、私も大切に使お~っと、この腕時計! また来年はクマのヘアピンだったりしてね?

 この歳でクマのヘアピンはちょっと辛いわ…」

きゃっはは、と笑い合う母と娘を見ながら、複雑な心境の父・恒和であるが、笑顔の二人を見ながら、しあわせを感じている。




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