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(26)かえで学園2

「真由、ちゃんと、おりこうさんにしてる?」 

比奈子は、女の子を抱きかかると、軽く頬っぺたにキスをした。

振り向いた比奈子は、すぐ後ろで、半分体が斜めになり、倒れかけの豊を見ながら笑った。


「ほらほら、このおじちゃんにもキスしてあげなさい~」

お、おじ、おじさん?

頭が混乱する中、真由を渡され、抱きかかえると、真由がチュッと、豊の頬にキスをした。


や、やわらけ~~子供の唇って…って、俺はロリコンの趣味はないぞ!

「おじちゃん、ママのダーリン?」

えっ、だ、だ、ダーリンって、今の子はませすぎている…

それにまだ、おじちゃんじゃないし、俺。

子供の攻撃にたじろぐ大人の豊。


「ママのダーリン?」と、聞かれ、「比奈子が、この子のママなら、この子のパパは、比奈子のダーリンで、だけど、この子は、比奈子のダーリンは俺なのかと訊いた…。あれ? えーと? んーと? わからねーーーー」

頭がこんがらがりすぎた豊は、比奈子を探したが、いつの間にか消えている。


ちびっ子をオレに預けて、俺を一人にしないでくれぇぇええ!

真由を抱きながら、ひとまず玄関に向かおうとしたが、玄関入り口から、小さいのがわらわらと飛び出してきて、豊の周りに纏わり付いてきた。

「お兄ちゃん、かわいい顔してんね?」

最近のくそガキは生意気だ。

なぜ大人に向かってタメ口なんだ。


「頭、天パー?」

「天パー」「天パー」「天パー」

一人の子が言い出すと、もっと小さい子たちがマネをし、「天パー」コールが起こる。

「天パーじゃなくて、天然パーマ! と言いなさい! 天然パーマ!」

一応教育上、正しい日本語を教える。


「ほらほら~みんな、お部屋に入りなさ~い」

窓から女性が召集をかけると、みんな素直に玄関に吸い込まれるように入っていく。

玄関をみると比奈子が「こっちに来い」と手を振っている。

すでに豊は疲れていた。


比奈子のところまで行くと、この学園の園長先生という、やさしい顔をした65歳くらいの女性と、20歳位の若い女性を紹介された。

二人でこの学園を仕切っていて、他に数人、子供の面倒を見ている女性がいる。

部屋の中は広いフローリングの部屋を中心にいくつもの部屋が連なり、ちびっ子たちは日中、一番大きな部屋で過ごしている。

小学生・中学生もいるが今日は平日なので学校に行っていた。

親のいない子や家庭の事情で預けられている子たちが共同生活しているこの学園に比奈子は、たびたび訪れ、子供たちに洋服やおもちゃを運んでいる。

今日、もって来たダンボール5箱にも、おもちゃとお菓子が入っていた。



昼ごはんの時間も近いので一緒に食べることになった豊は、長テーブルにみんなと行儀良く座り、ちゃんと「いただきます」をして食べ始めた。

豊は、なぜか女の子たちではなく、小僧たちに囲まれ、いそいそと小僧たちがお世話をしてくれていた。

たまに天パーをいじくられる。


食後の運動ということで、豊は小僧たちをぽんぽんと放り投げたりして構っていたが、ほんとうは豊が遊ばれていたのかもしれない。

疲れきった子供たちを寝かしつけ、ミニバンに積んであるダンボールを中に持ち運び、やっと一息つけた。


「ねぇねぇ、豊、ちょっと土手まで散歩に行かない?」

比奈子が、近くの川へ行こうと、豊を誘った。




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