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(24)男四人の思い

クリーニング店の会合に出ている豊を除いた、さと兄、慎太郎、小窪ちゃん、花ちゃんが、商店街の若者の溜まり場・居酒屋「お春」で飲んでいた。


「オレ……」

いつもほとんど話さない小窪ちゃんが、言うと、3人は一斉に小窪ちゃんを見た。

「「「何何何~?」」」

何を言うのか、興味がある。


「オレ、思うんだけど……」

「何を思うんだ? 小窪ちゃん?」

さと兄がやさしく訊いた。


「豊……」

「豊がどうした!? 小窪ちゃん!」

慎太郎が急かす様に訊いた。


「……いいのかな……って…」

「何を!? 何をいいのかな? って思うの? 小窪ちゃん!」

花ちゃんが身を乗り出し訊いた。


いちいち小窪ちゃんの一言一言に相づちを打っていると時間が掛かる。


「豊、由美子ちゃんと、付き合ってて、いいのかな…?」

めったに話をしない小窪ちゃんが、その話を出してくるということは、余程心配しているのである。

「あぁ、それか…。俺も思ってる」

慎太郎が声を落として言ったが、さと兄も花ちゃんも思っていることは同じであった。


夏に海に行った時は、彼女の由美子と来ているにも関らず、楽しそうにするわけでもなく、「比奈子、今日、デートなんだって…」と言ったきり、一人パラソルの下で、ジーッと海を見ていた豊。

みんなで比奈子にお土産を買おうと言うことになった時は、みんなとは別に、小鳩家にと、サザエとはまぐりを買っていた豊。

海の家で昼食を食べている時、焼きそばを作っているおじさんをジッと見ていた豊…おじさんは、タオルでねじりハチマキをしていた。


たまに男女10人で集まって騒いでいる時も、豊は由美子より比奈子に対して、ふざけ絡まることが多い。

「あいつ、たまに比奈子ちゃんのこと、スンゲーやさしい目で見てんだよな」

「気持ちの裏返しってのか、比奈子ちゃんが豊に対して天パーとか言って、豊は怒るんだけど、楽しそうっていうか、メチャクチャ顔喜んでるし…」

「彼女の由美子ちゃんには、見せない顔なんだよ」


小窪ちゃんが言った。

「豊、比奈子ちゃんのこと絶対好きなはずなのに、どうして由美子ちゃんとつきあってるんだろう」

「「「…わかんない…」」」

四人で首を捻った。

「あいつ、比奈子ちゃんには彼氏がいるって言ってただろ? 絹子ちゃんに訊いても、絶対いないって言うんだ。絹子ちゃんが嘘ついてるようにも見えないし」

「じゃぁ、比奈子ちゃんが嘘ついてるのか?」

「そんな嘘、必要ねーだろ?」


小窪ちゃんが言った。

「比奈子ちゃんは、豊のこと好きなのかなぁ」

「「「…わかんない…」」」

四人は俯いた。

「由美子ちゃんもさぁ、豊と付き合ってるわりには、豊が比奈子ちゃんのこと見てたりしても、なんも表情変えないんだよ」

「むしろ、二人を見て、ニヤニヤしてることの方が多いんだよ…」

「余裕か?」


小窪ちゃんが言った。

「由美子ちゃんは、あの二人にどうにかなってほしいの…か?」

「「「わかんねー…」」」

四人は沈んだ。


賑わう店内で、俯き沈黙を続ける男四人は、なんの対策も見つけられないまま、今日も家路に着いた。






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