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(10)女子! いざ、コンパへ!

「比奈子? 今どこぉ?」

高校のときの友人・由美子から着信が入った。

「もう渋谷着いてる。駅のホーム歩いてる。今階段降り始めた。」

「……実況中継、もういいから。みんなもう来てるから早く改札においで」

比奈子は、由美子を含む高校の同級生4人との待ち合わせ場所の改札へ向かった。


「みんな~」

元気よく声をかけ、駆け寄った。

「「「「……」」」」

由美子たち女四人は無言だ。

「何? どうしたの?」

比奈子は怪訝な顔でみんなを見たが、それ以上に怪訝な顔というか、四人は怒った顔で比奈子を見ている。


「比奈子、あなたね! なんなのよ、その格好は!!」

一目もはばからず晶子が怒鳴った。


「今日は、コンパでしょ!?

 どうして、そんなテレンテレンのTシャツに穴のあいたジーンズなのよ!」

澄江が眉を寄せ、肩を落した。


「んもぉ! 今日のコンパは、超カッコイイ人で、気合入ってるんだから!

 私の立場も考えてよ」

絹子に嘆かれた。

この絹子とは、さと兄がナンパしたナイスバディの女である。


「……比奈子さぁ、いつもの比奈子でいいんだけどさぁ、コンパの時くらいお洒落してっ!」

腕組みをした由美子に言われた。

「由美子ちゃん、腕組みすると胸が余計に目立つよ? ぼよ~ん」

比奈子は、由美子の胸に視線を落とし、人差し指で突っついた。

「うるさい! そんなことはどーでもいいのよ!」

由美子の胸は、Fカップだ。


比奈子のファッションセンスは、イケイケ女子のみんなとはちょっと違っている。

みんなからはテレンテレンに見えるTシャツは、ビンテージで結構なお値段だ。

ジーンズの穴はファッションである。

それに今日は、タオルのハチマキも巻いていない。

専門学校で一緒だった友人たちは、比奈子スタイルをいつもカッコイイと言ってくれるのに、高校時代のこの四人には、いつもダメだしを喰らう。


なにがいけないのか、わからない。

このステキな格好のなにが悪いのか、私にはわからない…。

四人に囲まれ、比奈子は頬を膨らませた。


「もぉ、まったく比奈子は。みんな先行ってて。

 私、この子連れて家行って着替えさせてから居酒屋に行くから」

渋谷から一駅のところに住んでいる晶子はそう言うと、比奈子の手を引っ張ってタクシーで自分の家に向かった。

なぜ、コンパごときにお洒落をしなければならないのか、比奈子には不思議だった。

残された3人は、先にコンパ場所の居酒屋に行くことにした。


晶子の家に着き、比奈子はクローゼットの中を覗いた。

「着れるものがないよ、晶子の服…」

めちゃくちゃ乙女嗜好の晶子の服に比奈子の顔が、嫌そうに歪む。

「なに言ってんのよ。あっ、これこれ、これにしよう~先月買ったばかりなのよ」

かわいいでしょ? と、晶子が手に取った服は、花柄のフリフリのスカートで、裾からレースが少し覗いているラブリーなものだ。

晶子は無理やり着せようとしたが、比奈子は抵抗した。


「ちょっと待ってよ、似合うと思う? 私に!!」

「あー似合う似合う! だから早く着て! 時間ないんだから」

適当に言われた。

「やだ! こんなの!」

駄々をこねる比奈子に、次から次へと服を見せたが、比奈子は、首を縦に振らない。

しかたなく、仕事で着ている一番シックなアイボリーのスカートスーツを見せ、納得させた。

テキパキと晶子は、比奈子の化粧を直し、髪も軽くセットした。

「もう、ボーっとしてんじゃないわよ! 比奈子」

「自分の美しさに少し酔いしれていた…」

少し本気で言ってみた比奈子の頭を、晶子はひっぱたいた。

用意を整えると、来た時同様、比奈子の手を引っ張り、タクシーに乗り込み、居酒屋に向かった。




* 偶然というものは、いったい誰が、なぜ、その人に与えるのだろう *


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