55.ビートルバスターズ
「前方から再び魔物接近!数は10体以上は見えますっ!」
「後方からも来てます!前衛もう少しくれ!」
ひー!突然忙しくなって温度差で風邪引きそうだよっ!今私たちはあのやる気のない罠部屋を抜けてさらに2つほど部屋を超えた先に出てきた大広間的な空間にて戦闘中でございます!そして相手はきっしょい虫型の奴らばかり!ええいお前らキモイ顔のタイプか凶悪な顔のタイプかどっちかに偏ってから来いよ!お前らの顔面で情報量が多いんじゃい!
「はぁっ!」
「おらっ!」
「せいっ!」
「シェアァッ!」
各々が手にした武器を振るい、ただひたすらまっすぐにこちらへ突き進もうとしてくる虫型の魔物たちを切り裂く。罠に掛かった際には逃げることしかできなかった彼らだが、彼らは源流騎士団の一員だ。そんじょそこらの一般兵士とは実力が大きく違うのだ。
「このっ!いい加減にっ!品切れになりやがれっていうんですよ!」
某地球を守護する戦士たちとか自由、平和、管理民主主義を胸に突撃する無謀な宇宙戦士達みたいに虫ばっか駆除させるんじゃないですよっ!こちとら”駆除チーム”じゃなくて騎士団だよ!こんなに虫出してくるなら家だの町だの橋だのビルだのぶっ壊してるあの会社でも呼んできてほしい!
ここほんとにやばいです。ローグライクっていうかサバイバルモードみたいな感じでひっきりなしに虫が襲い掛かってくるんですよ。おかげで我々の鎧に武具は虫どものきったねー虫汁にまみれて臭いわグロいわでテンションダダ下がりです。黄緑って時点で「うわっ…」ってなるのにちゃんと匂いが臭いってなるの終わってますマジで!私には臭いとか感じないが他の人の反応見て気持ち悪くなるんですよっ!
ただそんな中…やはり物語の最中には一人だけ別ゲーしだす人がいるもんで…
「変わるよ。みんな少し休んでて」
ちらりと進行方向とは逆の方を見ると近寄ってきた虫どもをスパッと切り裂いたり、どういった魔法なのかはわかりませんが水の弾丸やレーザー?水鉄砲LV100?を手から放って虐殺するカイ団長の姿が少し離れたところに見えます。
な ん そ れ やっぱりあの人だけ別ゲーしてるんですけど○○無双とかそういうタイプのやつ。
…団長ってちゃんと私たちのことしばく時って手加減してたんだなぁ…っと、この時の私は思い知らされました。ありゃ無理っすわ。あんなん逆立ちしても勝てそうにありませんわ。カイ団長の腕縛って目隠し付けて魔法禁止で私たちが20人くらい居たらようやくまともな”勝負”になりそうっすわ。
前までは10人でかかればあの人でもやれるか?って認識だったんですけどね。もうちぎっては投げられるのがオチになりますよあんなん。
カイの手に握った剣の先端には水で作られた玉がふよふよと浮いていた。玉からは一切の水滴が零れ落ちることなく、カイによって完全に制御されていることが一目見て分かる。
「…うん。これならしばらくは大丈夫そうかな」
「はあっ!」
横一線に薙ぐと剣の軌道にそって浮いていた玉から水が放射される。飛び出る水の細さからは想像もつかない威力で虫型の魔物を甲殻ごと切り裂く。その勢いは衰えることを知らずに一体、また一体と連なった魔物を
「なんだあれ…水の…レーザービーム?」
わ~…ゲームとかでさ、水魔法で強力な攻撃って言ったらどんなのがありますかって聞かれたら一つの候補に挙がるよね。ビームみたいな水。ああいうのって私大好きなんだよね…ファンタジーな世界で見るからこそに意味があるてきな。
でも実際にみたら死ぬほど怖いです。生命の危機ってーのは何かを教えられますね私生きてませんけど。あれはこの先一生喰らう側にはなりたくないですよ?私たちが剣で斬ることを意識して振らないといけないのにあっちはもうピューってやって(死体が)ぽいですよ?わかります?格が違うんですよ格が。
あんな(私たちにしても思うぐらい)硬い甲殻を持った蟲型の魔物を紙みたいにスパスパと切っていく姿は紛れもなく異世界お約束のチートキャラである。あーそういえば前にカイ団長が冗談のつもりだった分からないけど「私…最強だから」とか言ってたの思い出すなぁ…あながち間違ってはないのかもしれない。魔法込みだと全盛期師匠にも勝ててしまいそうな気がする。全部妄想の話なんだけどね~ほらオタク特有のあいつとあいつを戦わせたらどうなるんだろうってやつ
「前代わります。少し休んでください。」
そういいながら列の前方へスイッチ!ようやく新しい剣が手に馴染んできたのでね。こういうときぐらいはかっこつけさせていただきますので。ええ、私!そういうキャラになりたいもんで!
「すまない助かる」という言葉と共に完璧すぎる交代が決まりました。ゲームとかで戦闘中にキャラを切り替えるときなみに流れるような交代です。ここで交代前の人にそれっぽい声かけとかできたらなおのこと組織感が出てテンションあがるんですけど都合よく思いつかないんですよねバカなんで。…泣いてなんかいない
「アルバ!無理するなよ!」
「心配ご無用!疲労とは無縁ですので!みなさんは温存してください。ハッ!」
右手に握ったつるぎを…袈裟斬りに振るってなぎ倒す…ぶっちゃけこんな状況で私みたいな小者がこういうときに魅せる戦い方をすぐにできると思わんでください。肉体的には疲れなくても次どうしようとか考えすぎると心労になるんです。こ~んな知性のない虫けらなんぞ頭ちょんぎって終わりでいいんでさぁ!
「…なんかこう…うすうす感じてきたんだけど…一定のリズムで魔物を斬ってをくり返しているとなんかリズム天…いやこんな状況だと地獄か…」
「急にぶつぶつ言いだしたけどアルバ何かあったのか!?」
「ヴェッ!ナニモ!」
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え~と…とりあえず何十分か経過したんですけどピタッと虫の勢いが切れました。ジョジョにとかじゃなくてもうぶち切りです。
「…魔物が…来ない?」
「各員警戒は怠るなよ!消耗のある者は列の中に集まれ」
「すぐに治療します!」
一行は一列は崩さず、配置だけ変えて周囲を警戒、列の端にいた者が集団の内側に移動する。ここまでの行動に一切の迷いが無いのはさすが”騎士団”といえる。
「急に止みましたね。あまりにも突然すぎて安心じゃなくて怖くなってきたのですが…」
私の問いに何人かの騎士も賛同してくれます。ですよねやっぱそう思いますよね。不安ではありますが一息つく暇ができたと考えてもよろしいでしょうか。
「カイ団長、いかがしましょうか」
一人の騎士がこの状況に剣をいまだに構えたまま首をかしげているカイに声を掛ける。
「そう…だね、……ひとまずは少し休んだらまた先に進んでみようか。同じ場所に留まってたらまた襲い掛かってくるかもしれないし」
剣を納めて辺りを見渡す彼女には息一つ切れていないのが見える。他の騎士と比べるとまさに”大暴れ”とも言える戦いぶりを見せたが疲れはまったくと言っていいほど感じていないようだ。
「はっ」
そんなカイ団長を目にするとやはり化け物かと疑いたくなる私がいる。ちょっと息が上がってるくらいはなっててもええやん…なしてそないも消耗なんてありませんけど?って面してはりますの?
ドン引きする私はいったん置いておいて…この遺跡についてまた一つ謎が深まってしまいましたね。推理小説じゃないんだからあんま頭使わせないでくれと文句を言ってやりたいですが今の所その文句を言う相手がどこにいてどんなやつなのかもわかっていない状況なんですよね…性格が悪いだろうというのは確定ですが。
「よし、みんなそろそろいいかな?探索を再開しようか」
カイの言葉を合図に床に座っていたものも立ち上がり再び足を進める。聡明の鏡筒の面々もとくに目立った傷は受けておらず、騎士団の守護の元、この遺跡の奥地へと進むべく注意深く行く先を調べている。
源流騎士団が身の守りを徹底すればこの人たちも安心してトラップなどに集中できるでしょう。もうこれ以上目の前で人が死ぬなんてことはごめんですしね。ほんと申し訳ないがただの一般ピーポーな私にはシリアスなステーキ案件なんてできる限り避けたいのです。目の前で死なれると困るんです。結構心にキて。




