54.止まっていられないから
怪我人の治療がある程度終わった私たちは少し息を整えてから進軍を再開します。こんなところで足を止めている場合ではないですからね。
今度は同じ轍は踏みません。私も含めここにいる全メンバーで最大限に警戒して進んでいきますよ。
同伴する者は全員剣を抜き、盾を持った方を前方と後方に数人配置してケガの大きな人と回復を使うことができる人を確実に守ることが出来るようにします。まじでこっからは被害ゼロで行きますってぐらいの覚悟です。
「みんなもうすでに私たちは狙われているかもしれない、絶対に気を抜かないで」
カイ団長が今までよりもピリピリとした雰囲気を纏って指示を出す。遺跡に入る前や普段の姿ではあまり見せない警戒した姿だ。顔なんかもシュッとしてまじめな感じです。
それに呼応するように他の騎士団員達からも威圧を感じる。はっきりと言いますがここまで殺気を放っている騎士団員を見るのは初めてです。普段の任務ではここまでの雰囲気を感じることにはなりませんし
その雰囲気に合わせるように私も最大限に警戒して薄暗い遺跡の中を進んでいく
かちゃかちゃと鎧が動く音だけが暗い通路の中を響く。
誰も一言もしゃべらないままただ黙々と進んでいきます。普段どちらかというとおしゃべりなカイ団長やウィルニキも喋りませんし、私だって今はお口にチャックして周囲に異常はないかに気を張り続けています。さすがにこういうところでべらべら喋りだすのはキモイって分かってますので。
それにしても大切な仲間が目の前で死んだっていうのに…こっちの世界の人たちは心が強いなぁって思わされます。私の居た世界だったら目の前で事故とかそういうこと起きたらすぐに気持ちを切り替えてやるべきことをやるって結構難しいことじゃないですか?う~ん…でもそうは言っても私自身はそういう経験は向こうではなかったからな…
いかんいかん、あんまり考えることばっかりに気を取られていたらいざって時に反応できないな。…私はこの世界に迷い込んできたとはいえ今は”仕事”でここに来てるんだからこうも考えることに意識を集中していると足元を掬われてしまいます。
「ぶげっ!?」
私の視界は気づけば上下が反転していた。あれ、なんでだろう。なぜか私の両足が視界のすぐ近くにあって他の人たちが逆さまに歩いているのが見えるんだろう。
「…アルバ?」
「ふー、してやられましたね。おのれ遺跡の主、まさかこれほど巧妙で効果的な罠を仕掛けているとは先ほどのことも考えるとやはりかなりのやり手と考えるのが妥当か…みなさん注意して進みましょうこの先何が仕掛けられているのかわかりません私でもまったく気づかないうちに敵の術中にはまってしまったのです」
その時には自分でもびっくりするほどに饒舌に磨きがかかったとおもう。何せ今のをノンストップで一回も噛まずに言い切ったんだから。
私の(明らかに勝手に床につまづいて派手にすっころんだのをあたかも敵の罠に引っかかったという風に)ごまかす姿に周囲からクスクスと笑う声が聞こえてくるが私にはそれがいっさい聞こえていないよう装う。べべべべべべべべべべつになにもおこってねーし?まさかこんな真面目ムードの中でつまづいてコケるなんてミスをおかすほどのギャグキャラじゃねーし?
「いやいやいや…さすがにそれはごまかしようがないだろアルバ」
「はい?何がです?私なんかに気は遣わずにまずはご自身の安全をお確かめください。きっと今にでもこの遺跡の主が私たちの首を切ってやろうとうずうずしているんです。身構えているときほど死神はこないものだなんて言われていますが今の私たちはその死神に首を差し出しているようなものなんです油断すればあっという間に死ぬかもしれないんです気を付けましょう」
何故ですかね、この体に汗が出るようなことはありえないはずなのに今私の頭の側面には汗が滝のように流れ落ちているような感覚に襲われます。ええもうそりゃあドバドバと滝のように
おちつけ?おちつけ私?こういうときこそ平常心でいるのが一番だよね?取り乱してばっかの私だけど今は落ち着こうな?
ええい!皆さん揃いもそろって私を見ながらくすくすと笑うんじゃあないよ!こっちは真面目にやってんですよ!必死に!その結果がこれなんです!謎に包まれた遺跡に入って、敵の罠に掛かって死にかけて、今はこうして身構えながら歩いてる!これ以上なにをどうしろって言うんです!誰を倒せって言うんですか!!
…と心の中で地団駄を踏んでおく。実際にやるのはアルバというキャラには似合わないのでね?いやーさすがにこれを実際にやってしまうと私のキャラが崩れてしまうのでやりませんとも。ええほんとキャラを大事にしてますのでね~ほんとうふふ。
チッハジカカセヤガッテ… (ドンドンゲシゲシ)
さて、何故だか(しれっと)はわかりませんがほんの少しだけ空気が緩んだみたいです。なんででしょうかね私にはさっぱりなのですが…。気も張りすぎるとかえって注意力が疎かになるともいいます。逆にこれくらいの方がベストコンディションで臨めるのかもしれません。リラックスするのは大事ヨー。
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そして時は十数分ほど歩きまして、我々騎士団の目にこれまた意味の分からないものが映ることに…
長い一本道を抜けた先には開けた部屋があったのですがその部屋の中がもう訳わからないカオスってる内装で、先ほど私たちを散々苦しめてくれた罠だらけの部屋にかなり酷似しているのですが、おかしい点はすでにその罠が起動していて虚空へと攻撃されているという絵面。
ええなんかもう既に勝手に動いていたんですよ。ただし罠の状態はなんか年季の入った骨董品のような…つまり何が言いたいかっていうと古くて劣化したような状態の罠部屋だったんですよ。うぅ、私が人間の頃だったらアレルギー起こして鼻水と涙で苦しみそうな埃の量です。ちゃんと掃除しといてくれませんかねぇ。
「酷い部屋だな…もう随分と人に使われていないようだ」
「目が…痒いぃ!」
何人かの騎士が目や鼻を擦りながら文句を漏らす。私たち騎士団だって掃除とかはするんで”多少”はきにならないんですが…ここまでなのは流石に辛いでしょうね。何日とか何カ月とかのレベルじゃないですね。
「…団長、どの罠も経年劣化がかなり酷い状態です。誤作動による想定外の動きを警戒しているので精密な調査は出来ておりませんが周囲の罠は無害と判断してもよろしいかと」
「うん、わかったよ。にしてもさっきからキーキー鳴って嫌だなぁ…」
それはひじょーに分かる。罠が錆びているからか分からないんですけどさっきっから耳障りな音が部屋中に響いていて鬱陶しいんだこれが!!ほんとそういうのやめてほしい…寒気してきた…体温なんてないけど。
むぅ…この遺跡の主は一体何が目的なんだ?私たちを殺しに来てるかと思えばこんな殺すつもりのない部屋まで用意してある…まるで矛盾…はしてないけど、いまいちどういった意図があるのかが読めないんですよね。
死にかけの私たちへ追い打ちを掛けてこなかったのも気になります。あれほど殺意の高いわなを用意しておいてここで取り逃がすような真似は正直似つかわしくないって思うんですよね。あれほどのものを用意するなら弱った我々を確実に仕留めにくるのが慎重派キャラの思考なんじゃないかと…テンプレのはずなんですがねぇ。
ほんとねぇ…浅はかだとは思うんですけど僕の作品の後に出て似たような話数で信じられないくらい評価されているような作品を見るじゃないですか、曇るんですよね。なぜだ!?僕のも多少なりとも面白い内容だとは思うんだが!?って。まぁもともと万人受けはしないものとはわかってはいても同じ人外ものでウケているのがあるって思うと…クヤシイデスッ!!(歯茎を出しながら悔しがる顔)




