50.遺跡大作戦(SDX)
準備を終え、建造物(というか…遺跡的なの?)の前に集合することになりました。
これまたでっかい遺跡ですなぁ~!アマゾンの奥地とかにありそうだ。こんなところを調査できるとなると心がオドルものです。
「全員整列!これより、『聡明の鏡筒』との合同調査を行う。遺跡内は一度聡明の鏡筒による下見が行われているが、依然として不明な箇所が多い。各員、異常を見逃さぬように」
「「「はっ!!」」」
いつやってもこのビシーッと決まる感じがテンション上がるのよな。
さて、聡明の鏡筒に皆さんによって入り口近辺は安全なことはわかっているんですが、そこから先は未探索。マップが空白なままです。今回の任務はそのマップを完全に埋めることとでも言っておきましょうか。
「まずは俺たちが先行する。騎士さん達は少し距離を取って後から付いてきてくれ」
「一応俺たちが隈なく調べるからトラップとかは見逃さないつもりだが万に一つを考えて距離を取ってくれよ」
「アタシ達も調査には自信を持ってるけど、トラブルが絶対に起きないとも言えないから」
ということで、 聡明の鏡筒(6人) ← 騎士団( 4、7、3、団長)
こんな感じの陣形で捜索していきます。5名ほど遺跡の入り口で待機してもらって、何かあれば騎士団の…え~と…なんていうんだっけ…本部でいいのかな?本部へ報告しに戻ってもらう兼見張り。
え?なんか一人だけのところあるって?ほら…うちの団長最強だから…殿任せとけば勝手に飛び出してやらかすとかないでしょ…?
それに団長にはその回復魔法の使える貴重な3人を守ってもらうっていう重要な任務が任されていますから。きっとおとなしいはず。…多分…きっと…maybe…
いや待て自分、その文書フラグにしか見えないが?こんな所でフラグを立ててもいいのか?
「なんか…静かすぎて逆に怖いな」
「あぁ、獣の声一つないのがな。それどころか生き物のいた痕跡が何一つ見当たらない」
あまりにも静かすぎて口を開く騎士が出てきました。喋ってはいけないという規則はありませんし、暗黙の了解というわけでもありませんが、私たち騎士団員はずっと黙っていました。黙っていたっていうのもおかしいな、正しくは喋ることを忘れるほど周囲を警戒していました。
この場で声を出していたのも前方で行先の道を調べながら互いに相談しあっている聡明の鏡筒のみなさんだけです。
この遺跡、明らかに何かやばいです。
さっきから嫌な予感がずーっとしてるんですよ。何かが起きる。絶対に何か起きるって
後ろをちらっと見るとあのカイ団長ですら真面目な顔つきで辺りを見渡しながら歩いているんです。それが何よりも怖い。多分勘的なやつで”何か”を感じ取っているんでしょうね。
私もね、正直めちゃくちゃ感じているのがある…
ずばりそれは不安。
だってこちとら剣を新調してから完全に手に馴染ませきれてないんですよ!?おまけにこういった絶対何か起こるってフラグでしかないダンジョンだって初めてですし…くそっ、装備だのマップだのなんだの考えるまえに進んでクリアする精神を持っていた幼きゲーマー時代の私が恋しいぜ!今じゃゲーム買っても下調べしてからじゃないと失敗が怖くて進めなくなっちまったよ…キャラストーリーフラグ折るのとかもう二度となるし
「全員止まれ」
うおっっとっとっとっと、何でしょうか?ゼナスさんが急に大きな声を上げました。急な停止に若干絡まりかけましたが、全員が停止。
「…転移罠だ。踏むとここではない別の所に転移させられる」
転移罠その言葉を聞くと思わず体がキュッとなる。転移罠といえば確か…なんだっけな…冒険者が気をつける物リストにのっていたはず…確か…確か…いやダメだ思い出せない。というか内容までは見てなかったはず…なんとなく危なそうだから気をつけておこうで終わったんだよね。
人の隙間から何とか覗くと、ゼナスさんの指の指す先の地面に奇妙な魔方陣らしき模様が描かれていました。外見的には踏んだらラスボスの前に落とされてゆっくり蹂躙されていってね的な事が起こりそうな禍々しいデザインだ。
「困ったな…転移罠ようの道具は持ってきてないぞ。一度戻るか?」
「でもそんな時間ないでしょ?今回だって領主様から急ぎでやってくれって言われてるのよ?」
「けどよォ。こいつをほったらかしにするのは色々と不味くねぇカ?」
転移罠を前に瞬間頭によぎるトラウマ。もし…もしも転移先で魔法が封じられるようなことがあったら?もしも転移先で大量の魔物に襲われ、尚且つその後も魔物をおびき寄せるような仕掛けがあれば?さらに襲ってくる魔物が2段階ほどレベルが違う魔物だったとしたら?…やっぱり転移トラップは危険だ…
石の中にいるとか謎の場所送りにされるとかだってあるかもしれない。それにもし騎士団員がそれに引っかかってしまったら?鬱になるぞ。絶対。
「ゼナス殿、しばらく時間は掛かるだろうか?」
「あぁ、ちっとばかしこいつは……いやまてよ…だがな…それだと…いやだめだな…なら…」
ゼナスさんには何か考えがあるんでしょうか。さすが熟練の冒険者、あれはこれはと頭の中でいろいろと方法を試しているそうです。正直めっちゃ怖いんですけどこの罠。だってカイ団長ですら真剣な顔であの罠のこと見てるからね?じゃあもうやばいやん。感覚型のこういう時の勘はWikipediaよりも当たるって。
10分ほど経つと、議論していた聡明の鏡筒の皆さんが立ち上がりました。
「部隊長さん、ちょっといいか」
「何か思いつきましたかな?」
するとゼナスさんは若干顔をしかめながら口を開きました。
「悪いんだが現状俺たちでこいつを安全に解除する方法はない。だからちょいと強引な手を使わせてもらう」
強引な手とは?と私たちがはてなマークしていると何やら魔法陣へ向かって仲間の方が手をかざしています。
「これからあの転移罠を十数秒だけ無力化する。その間に全員で走り抜ける」
はい?
とんだゴリ押しじゃねえか!!!
「は、走る?」
一人の騎士が思わずといった感じにしゃべりました。え?そうなるのが普通よね?これ正しい反応だよね?
「あぁ走り抜ける。あの転移罠は下手に解除しようと機構に触った時点で発動する仕掛けになっている。それを破るには一瞬で解除するか触らないという方法しかない。だが一瞬で解除する道具も転移罠用のは滅多に手に入らない。残っているのが触らないという方法だ」
「触らない…とはどういうことでしょうか?」
「この転移罠に一定時間仕組みを凍結させる魔法を使う。ただし持続するのは短い期間のみだ。そして転移罠の上に魔力で踏み場を作って走り抜けるということだ」
な、なるほど?わかるようなわからないような…
…だがしかし私たちにはこれだけはわかる
専門家がそうするのがいいって言ってるんだから黙って言う事きいて従うこと!予防注射とかワクチンと同じだよ!!ちょっと知ったぐらいで所詮私ら素人なんだから…
私たちはゼナスさんたちの指示に従い、この行く手を阻む罠の上を駆け抜ける用意をしました。




